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日本は輸出の拡大をあきらめるな[日経新聞社説]
かつては「輸出立国」と呼ばれた日本だが、最近は様子がおかしい。為替が円安基調に転じて1年以上経過するのに、輸出ドライブが効かない。2013年度の輸出総額は70兆8千億円にとどまり、過去最大だった07年度の実績(85兆1千億円)より17%低い水準で足踏みしたままだ。
背景には3つの要因がある。1つ目は08年のリーマン・ショック以降の円高で、国内から海外に生産拠点を移す企業が増え、いわゆる「空洞化」が進んだことだ。
足踏みに3つの要因
2つ目は日本企業の国際競争力の喪失である。代表例はスマートフォンなどのデジタル機器だ。以前は電話用の交換機などを盛んに輸出した日本の通信機産業は、今では海外に売り込める品目や技術が大幅に減ってしまった。
そして3つ目が企業行動の変化だ。自動車産業では、円安を機に値下げして輸出攻勢をかけるシェア重視の発想が影を潜めた。販売価格を据え置き、利益を伸ばそうという利益重視の経営が浸透し、輸出量の増大を抑えている。
だが、こうした理由があったとしても、日本は輸出の拡大をあきらめるべきではない。
人口減で日本の内需の大幅な伸びが期待しにくい中で、付加価値の高い産業で比較優位を確保し、日本でつくって海外に売れる優れた技術や商品を数多くそろえる。それが持続的な成長や繁栄に欠かせない要件である。
では、どんな手立てがあるのか。自動車や電機など産業ピラミッドの頂点に立つ一握りの大企業が輸出をけん引する構図はもう限界だ。今後はより多様なプレーヤーが個々の強みを生かして、海外市場の開拓に挑戦するときだ。
たとえば印刷機大手の小森コーポレーションは、国内だけで販売してきた紙幣印刷機の輸出を最近始めた。偽造防止の多色刷り技術が評価され、フィリピンやタイなどで相次ぎ採用が決まった。
同社の墳本優取締役は「紙幣印刷機の世界市場はドイツ企業がほぼ独占してきたが、我々の機械も十分競争力があることが分かった。年間100億円規模の輸出をめざしたい」と意欲を示す。
工業品だけではない。果樹栽培のフルーツガーデンやまがた(徳島県鳴門市)は高級ナシ、水産物養殖の友榮水産(熊本県天草市)は車エビの通信販売をいずれも香港の富裕層向けに近く始める。
両社はネット上に店舗を構え、ヤマト運輸の「国際宅急便」を利用して、とったばかりの新鮮な食材を翌日には海外の食卓に届けるという。IT(情報技術)やLT(物流技術)により、資本力のない小規模企業にとっても、輸出のハードルは低くなった。
日本の輸出はこれまで少数の企業に集中する傾向があった。経済産業省によると、日本全体の輸出のうち、上位10%の企業が占める割合は92%に達する。欧州諸国はこの比率がドイツで69%、イタリアで78%にとどまる。中堅・中小企業を含めて、より幅広い企業群が輸出競争力を発揮する多層的な産業構造をめざす必要がある。
もう一つの課題はブランド力の強化だ。自動車は今でも日本の輸出のけん引役だが、日独間の12年の貿易実績を見ると、自動車が中心の「輸送用機械」の日本からドイツへの輸出が33億ドルだったのに対し、ドイツからの輸入額は68億ドルと倍以上に達した。
ブランド力に磨きを
ブランド力が強く、単価の高いドイツ車に日本車は防戦を強いられている。自動車に限った話ではないが、アジア勢との競争が激化する中で、日本企業は「良いモノを安く」売る路線から卒業し、「良いモノを高く」売れるようブランド価値に磨きをかけたい。
業界の構造転換も必要だ。かつて横並び体質が指摘された化学産業は汎用品への依存を低め、各社が他社にはマネのできないオンリーワンの機能性化学品を強化することで、国際競争力を高めた。
三井化学のメガネレンズ用の材料やクラレの液晶テレビに使う光学用フィルムは、いまでも日本で全量生産し、世界に輸出する。1990年には2兆円前後だった化学製品の輸出が13年に7.5兆円と大幅に伸びたのは、一連の構造改革の成果といえる。
「日本の輸出はもう伸びない」という悲観論も多いが、私たちはそれにくみしない。企業が自らの強みを再構築し、政府が貿易自由化の加速などで環境を整えれば、輸出を伸ばす余地はまだまだ広がる。拡大する世界経済やアジア経済の勢いを日本がしっかり取り込むためにも輸出は重要である。
http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140506&ng=DGKDZO70797940W4A500C1PE8000
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