http://www.asyura2.com/14/hasan87/msg/513.html
Tweet |
欧州危機 出口は見えたか
資金戻り国債再発行 利回り差縮小に危うさ
「ギリシャは危機からの脱却に向けた重要なステップを踏んだ」。サマラス首相は4月10日、4年ぶりの国債発行に成功したことをテレビを通じて国民に伝えた。国債募集には、ブラックロックやインベスコなど大手を含む600を超える欧米の機関投資家が殺到。欧州危機の震源地ギリシャに見向きもしなかった層がこぞって購入に動いた。
ギリシャは当初、6月までの発行を想定した。だが、長期金利は年始の8%台後半から一時5%台に低下。市場に促される形で一気に国債発行を決めた。5年債で発行額30億ユーロ(約4200億円)と少額だったこともあり、7倍近い応募があり、9割前後が海外投資家だった。
「2011年末に誰がギリシャの市場復帰を予測しただろう」。BNPパリバのエコノミスト、ティボー・メルシエ氏は振り返る。史上最大級の債務再編で、投資家が多額の損失を被ったのが12年3月。当時はギリシャのユーロ離脱論が現実味を帯び、投資家はユーロ建て資産を敬遠した。
わずか2年で市場の雰囲気は「楽観」へと一変した。ギリシャだけでなく、ポルトガルも3年ぶりに国債入札を再開。キプロスも4月末、特定の投資家に限定した国債で1億ユーロを調達し、部分的ではあるが市場復帰を果たした。
利回りを求めて資金の欧州回帰の勢いは止まらない。スペインの長期金利は2日に05年以来の3%割れ。イタリアとともにユーロ導入以降の最低水準近くで推移する。日本からも欧州中長期債への投資が09年以降の最高水準に膨らみ、ギリシャ向けも復活した。
欧州域内の金融市場の不均衡は解消に向かっている。それを示すのが「ターゲット2」と呼ばれる欧州の中央銀行間の資金過不足を調整する仕組みだ。債務危機後は、南欧の金融機関に対して、中銀を介してドイツなどが資金を融通した。ドイツ連銀の与信額は12年夏のピークの7500億ユーロから3月は4700億ユーロと4割近く減少している。
ただ、金融市場の楽観ほどには実体経済は回復していない。金融機関の貸し出しは伸びず、中小企業向けの融資姿勢は厳しい。ギリシャの金融機関の不良債権比率は30%を超えるという。金融システムはなお不安を抱える。
そもそも財政不安を抱える国の長期金利をめぐっては、危機前の異様に低い水準に疑問が向けられていた。各国は長期金利の「正常化」を歓迎するが、新興国不安を背景に気まぐれなマネーが一時的に欧州に退避しているだけという可能性もある。
労働市場や社会保障の改革は緒に就いたばかり。政府の財政再建への切迫感が後退していることも懸念される。本来、競争力に大きな違いがあるはずの欧州で縮んでいく国債の利回り差には、危うさもひそむ。
赤川省吾、黄田和宏が担当しました。
[日経新聞5月4日朝刊P.5]
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。