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内部留保はどこに行ったのか
日本企業は内部留保を抱え過ぎている。あいさつ代わりに、識者はそんな指摘を交わしている。
企業の内部留保は2012年度末で合わせて304兆円。しばしば300兆円余りの現預金を懐に抱えていると誤解され、消極経営の代名詞とされている。
内部留保とは毎年の利益から税金と配当を差し引いたおカネのこと。貸借対照表の負債の側に、利益剰余金として計上される。
資本金1億円以上の企業の12年度末の内部留保は189兆円。金融危機のただ中にあった1998年度末の101兆円に比べ9割近く増えた。その間に有利子負債を305兆円から256兆円へと49兆円圧縮しつつ、内部留保も88兆円蓄えてきた。
ならば資産の側はというと、98年度に83兆円だった現金は12年度も84兆円とほぼ横ばい。その他の流動資産も254兆円から285兆円に増えたにすぎない。
目立って増えたのは長期保有株式である。98年度の59兆円から12年度の195兆円へと136兆円増加した。3倍だ。直近5年間の増加額は73兆円にのぼる。
もちろん、日本企業が銀行や他の企業との株式持ち合いを増やしたわけではない。リーマン・ショックや震災、超円高を背景に、企業が海外投資や海外M&A(合併・買収)を加速したのである。
一方、国内の設備投資はリーマン後の落ち込みから立ち直れずにいる。その結果、有形固定資産は98年度の277兆円から12年度は241兆円に減少してしまった。
日本政策投資銀行の調べでは、国内投資に対する海外投資の比率は13年度で45%にのぼる。製造業に限れば70%だ。内部留保を積み上げることがいけないのではなく、国内が設備投資の場として選択されないことが問題なのだ。
企業が海外投資を増やした結果、収益増が国内の雇用増につながりにくくなっているともいえる。内部留保に対して多くの人が抱く不満の根っこはここにあるはずだ。安倍政権が成長戦略を軌道に乗せるには、何よりも国内に投資を呼び戻さないといけない。
(編集委員 滝田洋一)
[日経新聞5月5日朝刊P.18]
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