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エルニーニョ現象、今夏の日本経済に悪影響の懸念 消費増税判断に影響の可能性も(Business Journal)
http://www.asyura2.com/14/hasan87/msg/482.html
投稿者 赤かぶ 日時 2014 年 5 月 04 日 07:09:39: igsppGRN/E9PQ
 

「エルニーニョ監視速報」-「エルニーニョ監視海域の海面水温の予測(5か月移動平均)」(「気象庁 HP」より)


エルニーニョ現象、今夏の日本経済に悪影響の懸念 消費増税判断に影響の可能性も
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140504-00010002-bjournal-bus_all
Business Journal 5月4日(日)3時0分配信


●冷夏、梅雨明けの遅れをもたらすエルニーニョ

 世界的に異常気象を招く恐れのあるエルニーニョ現象がこの夏、5年ぶりに発生する可能性が高まっている。気象庁が4月10日に発表した最新の「エルニーニョ監視速報」によると、エルニーニョ現象が夏に発生する可能性が高いと予測されており、市場関係者の間では景気への悪影響を懸念する声も聞こえ始めている。

 エルニーニョとは、南米沖から日付変更線付近にかけての太平洋赤道海域で、海面水温が平年より1〜5度高くなる状況が、1年から1年半続く現象である。エルニーニョ現象が発生すると、地球全体の大気の流れが変わり、世界的に異常気象になる傾向がある。最近では2009年夏から10年春にかけて発生した。その際、アジア全土で多雨、西日本で長期的な豪雨、北日本で寒秋となった。また、欧州・北米・中国・韓国・インドで記録的な大寒波、日本では全国的な平均気温は平年よりも高く気象庁は暖冬だったと発表したが、西日本〜北日本の日本海側で一時的に強い寒波・豪雪、東日本〜北日本では寒春など寒暖差が大きくなった。

 最も被害が拡大したのは93年夏から冬である。日本は39年ぶりの冷夏となり、大雨や日照不足もあって稲作を中心に農作物に被害が出た。気象庁の過去の事例からの分析では、エルニーニョの日本への影響として、気温は西日本を中心に平年より低い地域が目立つことや、降水量は平年より増える地域が多く、西日本の日本海側や東日本の太平洋側で顕著となること、さらには、梅雨明けは沖縄を除き遅くなる傾向がある、ということ等が指摘されている。

●90年代以降、エルニーニョ期間の半分以上が景気後退期

 実際、エルニーニョの発生時期と我が国の景気局面はどのような関係があるのかを調べると、驚くべきことに1990年代以降はエルニーニョ発生期間と景気後退局面は実に51.7%もの確率で重なっていることが判明する。

 特に90年代以降で見てみれば、91〜92年と93年のエルニーニョ現象は、91年3月〜93年10月まで続いた景気後退局面に含まれる。また、97〜98年のエルニーニョは、ほとんどの月が97年6月〜99年1月まで続いた景気後退局面に含まれている。

 潜在成長率が4%程度あったとされる80年代までなら、気象要因が景気の転換点に大きな影響をもたらすことは想定しにくかった。しかし、90年代以降になると、バブル崩壊により潜在成長率が2%程度、最近では1%以下に下方屈折しているといわれる状況では、気象要因により景気の転換点に変化が及ぶことも十分に考えられる。実際、93年の景気後退局面においては、景気動向指数の一致DIが改善したことを根拠に、政府は93年6月に景気底入れを宣言したが、円高やエルニーニョ現象が引き起こした長雨・冷夏等の悪影響により、景気底入れ宣言を取り下げざるを得なくなったという経緯がある。93年といえば、日本は全国的に記録的な冷夏に見舞われ、特に東京の平均気温は平年を2.6度も下回った。

 以上の事実を勘案すれば、仮にエルニーニョ現象により夏場の天候が不順となれば、日本経済に悪影響が及ぶことは否定できない。

●主に夏場の個人消費に悪影響をもたらすエルニーニョ現象

 エルニーニョによる長雨や冷夏といった天候不順は、具体的に日本経済にどのような影響を及ぼすのかを見るべく、近年で最も日照不足の悪影響が大きかった93年と03年の7−9月期前年比の平均値を基に、日照不足が品目別に及ぼす影響を確認してみると、消費支出全体では前年比マイナスとなっており、消費全体には悪影響を及ぼしていることがわかる。特に足を引っ張っているのは、季節性の高い「被服及び履物」、交際費などが含まれる「諸雑費」、夏の行楽等を含む「教養娯楽」、ビールや清涼飲料の売上の影響を受ける「食料」、冷房の使用減等の影響を受ける「光熱・水道」となる。

 従って、エルニーニョによる天候不順は、外出の抑制を通じて「教養娯楽」や「諸雑費」といった支出に悪影響を及ぼす可能性がある。また、夏物衣料の影響を受ける「被服及び履物」や冷房器具の利用に関連した「光熱・水道費」、ビールや清涼飲料等の消費の影響を受ける「食料」といった季節性の高い品目に関する支出を押し下げるといえる。

●93年並みの冷夏で、7−9月期の経済成長率を0.9%押し下げる可能性

 また、国民経済計算を用いて7−9月期の実質家計消費の前年比と東京・大阪平均の日照時間の前年差の関係を見ると、両者の関係は驚くほど連動性があり、7−9月期は日照時間が低下したときに実質家計消費が減少するケースが多い。従って、単純な家計消費と日照時間の関係だけを見れば、日照不足は家計消費全体にとっては押し下げ要因として作用することが示唆される。

 そこで、国民経済計算のデータを用いて気象要因も含んだ7−9月期の家計消費関数を推計すると、7−9月期の日照時間が同時期の実質家計消費に統計的に有意な影響を及ぼす関係が認められる。そして、過去のデータに基づけば、7−9月期の日照時間が10%減少すると、同時期の家計消費支出が0.45%程度押し下げられる関係がある。

 この関係を用いて今年7−9月期の日照時間が93年および03年と同程度となった場合の影響を試算すれば、日照時間が前年比でそれぞれ51.3%、30.3%減少することにより、今年7−9月期の家計消費はそれぞれ前年に比べて1兆4812億円(2.3%)、8,754億円(1.3%)程度押し下げられることになる。

 ただし、家計消費が減少すれば、同時に輸入の減少等ももたらす。このため、こうした影響も考慮し、最終的に日照不足が実質GDPに及ぼす影響を試算すれば、03年並みとなった場合は1兆1452億円(0.87%)、93年並みとなった場合は6768億円(0.52%)ほど実質GDPを押し下げることになる。このように、日照不足の影響は経済全体で見ても無視できないものといえる。

●来年10月の消費税率引き上げの判断を左右する可能性も

 なお、これまでの歴史を見てもわかるように、エルニーニョが発生したからといって必ず冷夏になるわけではない。しかし、エルニーニョによる天候不順のインパクトが現実のものとなれば、政府が今年12月に最終判断するとされている来年10月の消費税率引き上げの判断に大きく影響を及ぼすかもしれない。

 というのも、判断の際に最も重視される経済指標が、今年12月に公表される7−9月期のGDP二次速報値とされているためである。このため、本来冷夏とならなければ年率換算で2%を上回るはずだった経済成長率が、エルニーニョによる天候不順に伴い成長率が年率換算で2%を下回ることも想定される。

 足元の個人消費に関しては、消費増税に伴う駆け込み需要の反動により落ち込んでいるが、夏場にかけて回復するとみられている。しかし、今後の個人消費の動向を見通す上では、エルニーニョによる天候不順といったリスク要因が潜んでいることには注意が必要だ。

永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部・主席エコノミスト


 

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