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欧州危機 出口は見えたか
景気回復、波乱含み 低インフレとロシア懸念
欧州景気の霧が晴れない。低インフレが続き、経済の結びつきが深いロシア・ウクライナ情勢も混迷している。ユーロ圏が2010年5月にギリシャ支援を決めてから丸4年。信用不安は和らぎ、雇用悪化に歯止めがかかったが、危機から抜け出せたとはいい切れない。欧州中央銀行(ECB)が8日の理事会で金融緩和に踏み切るか注目が集まる。
3月、ドイツのディスカウントチェーン「アルディ」は思い切った広告を出した。ジュースや肉製品の定価を引き下げます――。期間限定ではない値引き通告に慌てた競合相手はセールで対抗。ドイツではちょっとした騒ぎになった。
値下げ合戦が物価を上がりにくくしているのは間違いない。ユーロ圏の4月の域内の消費者物価上昇率は前年同月比で0.7%にとどまった。
「経済の体温」とされる物価の動きが鈍い。ユーロ高でエネルギー価格は下がり、内需も力強さに欠ける。企業は設備投資に及び腰で3月の銀行貸出は2.2%減った。
債務危機を受け、ユーロ圏は痛みを伴う構造改革に取り組んだ。残ったのは12%に迫る高い失業率。直近では悪化に歯止めがかかったが、南欧経済は低調なままだ。
そんな欧州を地政学リスクが襲う。EUの域外輸出の9%を占めるロシア・ウクライナ向けは急減。軍事衝突の危険すら取り沙汰され、経済界は気をもむ。「先行きへの不透明感が企業の投資意欲をそいでいる」と北欧系スウェドバンクのウルフ最高経営責任者(CEO)は警鐘を鳴らす。
欧州はデフレの瀬戸際なのではないか。国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は「いまこそ(量的緩和など)非伝統的な金融政策に踏み出すべきだ」と忠告する。
ECBは慎重だ。悪材料ばかりでなく、好材料も点在する。少し待てば景気が力強さを取り戻し、過剰マネーと隣り合わせの超緩和に踏み切らなくて済むかもしれないとの見方もある。
「いきなり量的緩和というのはあり得ない」と欧州の中銀関係者は口をそろえる。まずは利下げや銀行融資の促進策など「伝統的な措置」に着手し、様子を見るのがシナリオだという。
現時点では欧州が再び「先の見えぬトンネル」に逆戻りするとはいい切れない。
過去4年、信用不安に揺れたギリシャでは観光客が戻り、世界遺産のパルテノン神殿に海外客が押しかける。14年の観光客数は2年連続で過去最高を更新する見込みだ。昨年の経常収支はユーロ導入後、初めて黒字となり、4月に4年ぶりの国債発行にこぎつけた。
大黒柱のドイツ経済は絶好調。昨年だけで約42万人の外国人が移り住んだが、それでも失業率は約5%と空前の雇用ブームに沸き、1人当たりの可処分所得は着実に増えている。
低インフレとロシアというリスクがどこまで膨らむのか、それを力強さが増す景気で吸収できるのか。コンスタンシオECB副総裁は「状況はましになったが、危機は終わっていない」と語る。
[日経新聞5月3日朝刊P.6]
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