04. 2014年4月24日 23:19:57
: mHY843J0vA
>東京市場で株安・円高が進行 コラム:リスクオン本格化で資源・新興国通貨高へ=亀岡裕次氏 2014年 04月 24日 18:17 JST 亀岡裕次 大和証券 チーフ為替ストラテジスト
[東京 24日] - 過去1年近くにわたり、円も資源・新興国通貨もドルに対して下落傾向にあり、ドル全面高に近い状況が続いてきたが、そのトレンドに変化の兆しが見られる。 対ドルで円が引き続き下落傾向にある一方で、資源・新興国通貨は下落傾向線をわずかながら上回り始めた。円よりもドルが強く、ドルよりも資源・新興国通貨が強いというのは、リスクオンの相場パターンである。 これまでは、先進国経済の回復を受けた株価上昇とともにユーロやドルなどが円に対して上昇する一方、新興国では経済成長率の鈍化を反映した株価停滞とともに通貨が円に対して伸び悩んできた。 つまり、「先進国に限定されたリスクオン」であり、新興国についてはリスクオンでもリスクオフでもない中立的な状況だったが、それが「世界全体のリスクオン」に変わりつつあるのではなかろうか。 <商品高の背景に需要増加> 株価に目を転じると、先進国株価に比して下落を続けてきた新興国株価が最近になって上昇していることがわかる。これは、先進国株価の下落と新興国株価の上昇が相まった動きだ。 先進国株安は、株価収益率(PER)などが急速に高まっていた米国株価の調整が波及した面が大きく、その調整はほぼ完了したと見られる。先進国のリスクオフは一時的で、リスクオンの動きは先進国から世界全体へと広がりつつあるようだ。 リスクオンの広がりは、通貨や株価の動き以外でも見受けられる。商品総合指数も、過去の下落傾向線を上回り始めた。 ただし、上昇が顕著なのは商品指数の中でも農産物の比重が比較的大きいロイター/ジェフリーズCRB指数で、エネルギーの比重が大きいS&P/GSCI商品指数の上昇は明確ではない。商品別の内訳を見ると、農産・畜産物の上昇が大きく、エネルギーと貴金属はわずかに上昇し、産業用メタルはまだ底値圏に近い状況だ。天候要因などによって農産・畜産物の価格上昇は明確だが、そうした要因がないものは価格上昇が鈍い。つまり、今のところは需要増加期待による全面的な商品高ではなく、一部の供給減少懸念が商品高を主導していると言える。 しかし、需要増加による商品高という側面がないわけではないだろう。たとえば、米国の企業景況感改善や長期金利上昇、新興国の株価上昇と歩調を合わせるように商品指数が上昇している。商品の需要増加期待が小さく供給減少懸念が大きいなら、商品指数は上昇しても、世界的に景況感は悪化して株価や金利は低下しているはずだ。そして、商品指数の上昇もすぐに息切れするはずである。 また、経済協力開発機構(OECD)加盟国と主要新興国を合わせた世界の景気先行指数が上昇して長期トレンドを上回ったのとほぼ同じタイミングで商品市況が上向き始めたことからしても、需要増加が商品高に作用しつつあると言えるだろう。今後、先進国の景気回復が新興国に波及しながら世界的に景況感が改善し、通貨、株式、債券、商品市場でリスクオン傾向が強まる可能性が高い。 <株高・債券安・商品高・ドル安へ> 商品相場とドル相場(実効為替レート)は基本的に逆相関であり、商品高ならばドル安、商品安ならばドル高となりやすい。国際主要商品が基本的にドル建て価格のために、商品の価値と通貨の価値が逆方向に動きやすいからだ。 また、金のように貴金属には通貨の代替需要があるために、ドルの価値と逆方向に動きやすいという一面もある。これまでは新興国経済への懸念などから商品相場が下落する一方で、ドルが新興国通貨や円など多くの通貨に対して上昇してきたが、これからはそれが逆転して「商品高・ドル安」となる可能性がある。 商品とドルは基本的に逆相関ながら、今年1月は例外的に、リスクオフの株安・債券高・ドル高となる一方で、北米寒波の影響でエネルギーを中心に商品高となった。しかし、2月にはリスクオンの株高・債券安・商品高・ドル安に転じた。 3―4月には一時的にドル高・商品安となったが、これはイエレン米連邦準備理事会(FRB)議長が資産買い入れ終了から利上げまでの「相当の期間」を半年程度と発言したことで、利上げ期待が高まり米金利が上昇したことや、欧州中央銀行(ECB)が追加緩和策として1兆ユーロの資産買い入れを検討との観測が浮上してユーロ売り・ドル買いを招いたためだ。 4月には、株安・債券高(金利低下)となり、リスクオフ効果よりも米金利低下が効いてドル安、さらには黒田日銀総裁の物価目標への自信を示す発言を受けて追加緩和期待が後退して円高・ドル安となる一方で、商品高となった。だが、景気回復傾向にあるなかで、先進国株安や債券高は短期で終息し、再び2―3月のようなリスクオンの株高・債券安・商品高となり始めた。 12年以降のドル実効為替レートを、米5年国債利回りとS&P/GSCI商品指数で回帰させると、米金利上昇はドル高、商品高はドル安に作用するという結果になる。問題は、リスクオンの米債券安(金利上昇)・商品高になった場合、米金利上昇のドル高効果と商品高のドル安効果のどちらが大きくなるかだ。 たとえば、金利上昇幅0.25%に対して、商品指数が170ポイント上昇した場合、回帰分析上のドル高効果とドル安効果が等しくなるが、これは過去半年間の米金利上昇幅および商品指数上昇幅とほぼ同じである。つまりは、過去半年に比べて相対的に米金利上昇よりも商品指数上昇が大きくなれば、ドル高効果よりもドル安効果が勝りやすい。今後、そうなる可能性が比較的高いと考えられる。 <高金利通貨優位、低金利通貨劣位に> 過去1年間について、主要通貨の対円相場変動率と翌日物金利平均をとると、金利水準が高い通貨ほど対円下落率が大きい(金利水準が低いほど対円上昇率が大きい)傾向がある。円安進行はリスクオンではなくて日銀の異次元緩和によるものであり、為替市場全体ではリスクオフ傾向にあったということだ。 しかし、3月については、逆に金利水準が高い通貨ほど対円上昇率が大きい(金利水準が低いほど対円上昇率が小さい)傾向がある。リスクオンの相場パターンにあることは明白だ。 今後も日銀緩和による円安圧力の持続にリスクオンが加わることで、「高金利通貨優位、低金利通貨劣位」が続くと予想される。円よりもドルが強く、ドルよりも資源・新興国通貨が強い相場展開となるだろう。 *亀岡裕次氏は、大和証券の投資戦略部担当部長・チーフ為替ストラテジスト。東京工業大学大学院修士課程修了後、大和証券に入社し、大和総研や大和証券キャピタル・マーケッツを経て、2012年4月より現職。 |