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直前まで交渉難航も伝えられたが、オーストラリアのアボット首相(右)来日時に何とかまとまった Photo:REUTERS/AFLO
TPPで米国を揺さぶれるか 日豪EPA合意の“賭け”
http://diamond.jp/articles/-/51786
2014年4月24日 週刊ダイヤモンド編集部
はたして、米国を動かす一撃となるか。4月7日、日豪間のEPA(経済連携協定)交渉が、大筋で合意に至った。2007年に交渉を開始してから7年越しの成果である。
焦点となったオーストラリアから輸入される牛肉の関税については、現在の38.5%から、冷凍肉は18年目に19.5%、冷蔵肉は15年目に23.5%まで下げる。その他に飼料用の小麦や乳製品の一定枠の関税が撤廃または削減され、砂糖なども将来の見直し対象とされた。また、コメは関税撤廃の対象外とされた。
一方で、オーストラリア側は自動車関税の75%を即時撤廃し、残る部分や自動車部品も3年目までには撤廃する。
「両国の利害関係者が納得できるギリギリの線。微妙なバランスの上に成り立つ、よく練られた合意内容だ」。みずほ総合研究所の菅原淳一上席主任研究員は、そう評する。
今回の合意は、日豪間の貿易促進もさることながら、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)をにらんでの一石、という面が大きい。
日本としては、日豪EPAを先行させることで、関税の完全撤廃という主張を譲らない米国にプレッシャーをかけるというもくろみだ。他方、オーストラリアは、TPPが合意・発効するまでの間、農産物の対日輸出で米国より優位に立つことができる。「膠着しているTPP交渉を動かす、てこになり得る」(菅原上席主任研究員)との期待は大きい。
■米国は簡単には譲歩しない
一方で、「リスクの高い戦略」(長谷部正道・大和総研主席研究員)と懸念する声もある。
TPP交渉での米国の強硬姿勢の背景には、オバマ政権が、貿易協定を結ぶに当たってその内容を大統領に一任する貿易促進権限(TPA)を得られていないことがある。これがないと、米国政府は合意内容について逐一議会の承認を得なければならない。
少しでも国内の各業界に不利益な内容となれば、議会に突き返されるのは目に見えているため、米国政府は強硬な主張をせざるを得ない。特に現在、今年11月の中間選挙の予備選挙がすでに始まっており、業界団体の意向を受けた議員は妥協できる状況ではない。
TPAがない以上、米国が譲歩する可能性は低い、との見方は多い。「日豪EPAの先行で牛肉を筆頭とする米国内の業界が焦り、オバマ大統領にTPAを与える方向に行けばよいが、そうならない場合には業界の不満を高めるだけに終わる恐れがある」(長谷部主席研究員)。
仮に多少の譲歩を認めたとしても、米国が今回の自由化水準で満足するはずはなく、TPP交渉および日米協議で、より高い要求を突きつけてくるのは必至だ。また、日米間の自由化率が日豪間を上回る水準になった場合は、オーストラリア側もあらためて同水準の待遇を求めてくるはずだ。
今月24・25日のオバマ大統領来日を前に、日米間の協議が続けられるが、よりいっそう厳しい交渉になるのは間違いない。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 河野拓郎)
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