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「板橋の田園調布」と呼ばれるときわ台駅近の広大な空き地は、不動産業界では有名な土地だった 筆者撮影
住吉会系大物組長の引っ越しで都内塩漬け「マンション一等地」が再開発へ!
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/39064
2014年04月24日(木) 伊藤 博敏「ニュースの深層」 現代ビジネス
暴力団が追い詰められている。
■「住むところ」は他人名義
1992年に施行された暴力団対策法は、暴力団の人権を認めないもので、憲法違反論議を呼んだ。そして、2010年に全国で施行された暴力団排除条例は、国民に暴力団との対決を要請、銀行口座の閉鎖、不動産の賃借契約の解除にまで踏み込むもので、生活権や生存権を侵食するものだった。
暴力団構成員は、土地取引や賃貸契約を拒否される。不動産業者は、必ず、「暴力団関係者ではないこと」を契約条項に入れ、高い違約金を定めているから、「住むところ」を確保しようと思えば、他人名義にするしかない。
だが、発覚すれば詐欺である。「他人名義での入居」は、捜査当局が暴力団幹部を逮捕する簡便な手法になっている。
暴力団構成員だけでなく、家族にまで及ぶ生活権の侵害には「行き過ぎ」という声もあるのだが、それなら「暴力団を辞めればいい」という“正論”にかき消される。
今回、私が指摘するのは、近くに暴力団幹部宅があればどうなるか、という現実である。6年近い歳月をかけ、暴力団組長が引っ越し、問題は解決したのだが、暴排条例の是非を問う材料と考えていただきたい。
■誰もが欲しがり見送ってきたマンション一等地
ターミナル駅の池袋から東武東上線で5つ目の「ときわ台」は、各駅停車しか停まらないが、池袋まで8分、都内の主要地に30分もかからない交通至便の駅である。問題の物件は、そのときわ台駅から徒歩3分の「駅近物件」だった。
鉄筋コンクリート4階建てで、延べ床面積は約180坪。ひとつの家族が住むには十分過ぎる広さだが、一ヵ月前までは、住居兼事務所として使用され、多くの「若い衆」が出入り、広域暴力団・住吉会系組織の「代紋」が掲げられていた。
「代紋」は、「盃」を交わすことで「親子」「兄弟」となる暴力団一家の紋章であり、統制と団結のシンボルである。それは同時に、外に対しては威嚇の道具であり、マフィアであることを公言する「代紋」を、堂々と掲げる“風習”は、諸外国にはない。
こうした暴力団の組事務所が側にあることのデメリットは、地価が下がること、そして再開発を阻むこと。
現に、住吉会系でも武闘派として知られ、多くの組員を抱える有力組織が、「代紋」を掲げ、検視カメラが備え付けられて要塞化させていたために、道ひとつ隔てたところにある740坪もの広大な土地は、マンション建設計画がありながら進展しなかった。
不動産業者が率直に言う。
「駅から近くにあれだけのまとまった土地ですから、誰だってのどから手が出るほど欲しい。
でも、売買にあたっては、『重要事項』として向かいが組事務所であることを開示しなければならない。その時点で、誰もが見送ってきました」
この要塞化した物件は、最初からそう意図して建築されたわけではない。所有権を持つのは、芸能・風俗関係で財を成した女性経営者。
約75坪の土地を97年に取得、翌年、建物を建てて、娘と二人住まいだったという。おそらくそこが絶頂期。不動産登記簿謄本には、以降の苦境が残されている。
高利で知られる金融業者から次々に借金。最後に融資した不動産金融業者が、07年1月、2億5000万円の根抵当権を設定。すぐに遅延したようで、東京地裁に競売を申し立て、08年6月、開始決定を受けた。
不動産金融業者が経緯を説明する。
「融資は、ときわ台の案件だけでなく、新宿や目黒の物件も含んでいた。競売にかけることになり、物件情報を閲覧して始めて、ときわ台の所有権者と暴力団組長が、07年10月、賃借契約を結んでいるのを知った。向こうは、金利が高いとして債務不存在を訴えてきたけど、時間稼ぎが目的。暴力団案件になって面倒だったけど、トラブル案件がようやく片付いてホッとしている」
この業者だけではない。一部を駐車場に使うほかは、無為に放置してきたマンション用地の地主は、ようやく売却できた。
■組事務所があったのでは土地が死ぬ
結局、解決法は以下のようなものだった。
売買は、暴力団組長の居宅とマンション用地を一体で行う形にした。正確にいうと、競売物件は暴力団組長宅の土地建物と隣地の駐車場(約80坪)だったのだが、まず今年2月12日、駐車場部分を新宿区の不動産業者が落札して所有権移転。3月13日には同じ業者が居宅部分を売買で購入した。
向かいのマンション用地は、3月25日、水戸市の不動産業者を経て中野区の不動産開発業者が取得した。いろんな業者が登場、抵当権の設定状況は複雑だが、最終的には組長宅もマンション用地も、中野区の業者が事実上、取得して販売することになる。
中野区の当該業者は取材拒否だった。
「私どもは、水面下で動き、形に仕上げるまでが仕事です。だから、過程も今後もお話しするつもりはありません」
要は、リスクを負って開発用地を取得、大手・中堅のデベロッパーと共同事業としてマンションを建設するか、そのまま用地を転売するのだろう。代紋が掲げられていた“要塞”は、現在、解体工事が進められている。
組事務所があったのでは土地が死ぬ――。
この現実は、生存権と生活権を主張する暴力団関係者も受け止めておくべきだろう。
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