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ソフトバンク、窮地の米国進出で注目集める“次の一手” 米政府の反対と競合台頭の誤算
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140424-00010005-bjournal-bus_all
Business Journal 4月24日(木)3時0分配信
ヤフーは3月27日、携帯電話通信会社のイー・アクセスを親会社のソフトバンクから買収、携帯電話事業に参入すると発表した。
イー・アクセスは6月1日にPHS大手のウィルコムと合併する。その翌日にヤフーはこの合併会社をソフトバンクから3240億円で買収、合併会社の社名はワイモバイルとする予定。ヤフーの宮坂学社長は「ネットサービスを中心とした通信事業を展開するのが買収の目的」と説明している。
合併会社が提供するサービスや料金は未定だが、通信事業を通じて「Yahoo!プレミアム」などの有料ネットサービスの新規会員獲得を狙うとともに、ネットサービスと通信サービスの組み合わせによってネット広告事業やEC(電子商取引)事業の拡大を図る考えだ。
ヤフーとイー・アクセスは共にソフトバンクの事業子会社。通信業界では「ソフトバンク内の子会社の組み替え」と見る向きもある。だが、米国のアマゾンやグーグルは端末販売事業や通信事業の拡大によりネットサービス事業を強化しており、株式市場では「ヤフーのイー・アクセス買収は、これら米ネットサービス会社の事業モデル導入による新しい成長戦略」と評価する向きが多い。
その一方で、市場の一部では「これはソフトバンクが軍資金を集めるための取り組みの一環だ」との声も上がっている。
●米国事業の資金集めに腐心
3月27日の記者発表会に出席していた証券アナリストの一人は「買収に関する一連の説明を聞き終わった瞬間、ソフトバンクがついに奥の手を出してきた」と直感したと言う。「奥の手」とは、ソフトバンクが豊富な資金を持つヤフーをATM代わりに使おうとしているというもの。
それは、資金の流れが根拠になっている。
今回の買収に当たり、ソフトバンクはこれまでイー・アクセスに融資していた約1300億円を一括回収する。このためヤフーは、自己資金の乏しいイー・アクセスに運転資金を含め約1700億円を融資する。
つまり、資金の流れを追うと、イー・アクセスの買収額3240億円と融資額約1300億円の約4540億円が、ヤフーからソフトバンクに流れることになる。宮坂社長が「ヤフー史上、最大規模のM&A(買収・合併)」と述べているゆえんだ。
では、子会社同士のM&Aという手法を使って、ソフトバンクがこれだけの資金を集める目的はどこにあるのだろうか?
事業会社のヤフーの資金が持株会社のソフトバンクに流れたところで、連結で9兆2200億円(13年12月末)に達する有利子負債は減らないので、ソフトバンクの財務体質改善には寄与しない。前出アナリストが指摘するのは、ソフトバンクが昨年から米国で進めている買収工作だ。
ソフトバンクは昨年7月に買収した米携帯電話業界第3位のスプリント・ネクステル(以下、スプリント)に続き、同4位のTモバイルUS(以下、Tモバイル)の買収工作を進めている。「2兆円以上の資金が必要」(携帯電話業界関係者)と言われるTモバイルの買収に向けて「ソフトバンクは資金集めに知恵を絞っている。同社が筆頭株主(約37%出資)になっている中国EC大手の阿里巴巴集団(アリババグループ)の米国上場を考え合わせれば、そう見るのが本筋だろう」(前出アナリスト)というわけだ。
では、ソフトバンクは、なぜTモバイルの買収に血眼になっているのか。
●Tモバイルを買収できなければ、米国進出失敗の危機感
前出の携帯電話業界関係者は「競争が熾烈な米携帯電話市場が原因。それは13年の米携帯電話の加入件数を分析すれば明白」と、次のように説明する。
13年の米携帯電話新規加入件数は約1200万件に上るが、問題はその内訳にある。
全米にLTE(次世代高速通信)網を整備している業界首位のベライゾン・ワイヤレス(以下、ベライゾン)が、新規加入の約36%を占めた。これは業界の想定内だったが、想定外だったのがTモバイルだった。同社は「猛烈な安売り」で約34%ものシェアを獲得した。
これで追い込まれたのが、同2位のAT&Tモビリティ(以下、AT&T)と同3位のスプリントだった。
ソフトバンクがスプリント買収を発表した12年末現在、同社の総契約件数は約5530万件。約3338万のTモバイルに対し、約2200万件近い大差をつけていた。しかし、TモバイルはメトロPCSを買収した効果もあり、総契約件数を13年末に約4668万件まで伸ばした。一方のスプリントは5505万件と、若干ながら減らしている。つまり、たった1年間で3位と4位の差は837万件に縮まってしまった。
今年は、AT&TとTモバイルが競って勢いの弱まっているスプリントの加入者に対して安売り攻勢をかけてくるのは必至。Tモバイルが昨年と同じペースで契約件数を伸ばせば、来年はスプリントが4位に転落するは誰の目にも明らかだ。そうなれば、ソフトバンクは買収効果どころか、逆に重い荷物を背負うことになる。
前出の業界関係者は「スプリントが4位に転落すれば、Tモバイルがスプリントを買収・合併するという、かねてから噂されているシナリオが現実味を帯びてくる。そんな事態になれば、ソフトバンクはスプリントの経営関与権を失い、米国進出は失敗する。孫社長は、そんな危機感に駆られている」と指摘する。
●米政府当局の反対で、Tモバイル買収は困難
そこで気になるのが、ソフトバンクのTモバイル買収の可能性だが、これが困難を極めている。問題はTモバイルの親会社のドイツテレコムとの交渉ではなく、FCC(米連邦通信委員会)や司法省など米政府当局の反対に遭っているからだ。
例えば、司法省反トラスト局のウィリアム・ベーア局長は今年1月30日、米紙「ニューヨーク・タイムズ」のインタビューに対し「(米携帯電話業界再編については)いかなる提案も反トラスト局の厳しい審査を受けることになる」と述べ、暗にソフトバンクのTモバイル買収に反対の意思表示をしている。
またロイター通信によると、2月上旬、孫社長はFCCを訪問、トム・ウィーラー委員長と面会してTモバイル買収を打診した際も「FCCは反対」との意思を示されている。
そこで孫社長が次に取った策は、米国の世論に訴えることだった。
孫社長は3月11日にワシントンを訪れ、ワシントン商工会議所での講演、PBS(米公共放送)のトーク番組出演、CNBCのインタビュー番組出演など、精力的に動き回った。孫社長が訴えたのは次の3点だった。
(1)米国のLTE(高速通信サービス)ユーザーは、日本のユーザーに比べ「ギガバイト当たり1.7倍高い」料金を払っている
(2)日本に比べ米国の携帯電話通信網の質は低く、しかも技術が停滞気味だ
(3)その原因は上位2社がモバイルブロードバンドを寡占しているからだ
孫社長は講演やインタビューの場で、Tモバイル買収について直接的には触れなかった。だが、上記3点を解決するためには「スプリント単独では難しい。米国ユーザーに高品質・低価格なLTE環境を提供するためには、ネットワークカバー的にも契約数的にも携帯電話会社の規模拡大が必要だ。また2強体制より3強体制のほうが健全な競争ができる」との論法で、Tモバイル買収の必要性を間接的に訴えた。
ソフトバンク関係者によると、孫社長は今後もメディアを通じて「3強体制による健全競争の必要性を米国世論に訴え続ける」という。しかし「米携帯電話業界内では、現在の4社体制で健全競争ができているとFCCも司法省も判断している以上、ソフトバンクがいくら世論工作をしても、当局がスプリントとTモバイルの合併を認めることは難しい」(前出・業界関係者)との見方が支配的なようだ。
しかし裏を返せば、孫社長が一番危惧している「Tモバイルによるスプリント買収」という最悪の事態も、当面は可能性が低くなる。孫社長は米国世論喚起作戦を続け、従来通りTモバイル買収工作を進めるのか、それとも買収をあきらめ、スプリントの経営立て直しに舵を切るのか、日米の業界関係者が「孫社長の次の行動」に注目している。
しかし、Tモバイル買収、スプリント経営立て直し、いずれにしてもソフトバンクは今後も米国事業に巨額の資金を必要としていることに変わりはない。
福井晋/フリーライター
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