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スイスでは勤労者のおよそ90%が時給換算で22スイスフラン(約2550円)以上を得ているそうである。今回提案の最低賃金制の恩恵を受けるのはわずか10%ということになるが、それでも、雇用や経済活力に影響が出る可能性はある。
スイスの経済相は、「小売り、農業、家事サービスなどの産業に打撃を与え、結果として低賃金労働者を苦しめる」という理由で国民に反対を呼び掛けているそうだが、最低賃金未満での不法就労が増加する可能性や省力化で失業が少し増える可能性は指摘できる。
スイスの隣国ドイツは、ここ13年間実質賃金が減少しており、農業などドイツと競合する低生産性の分野で競争力に影響が出るかもしれない。(実質賃金が減少しているドイツでさえ、東欧出身者を低賃金で不法に就労させているケースがみられる)
それでも、国内全体の購買力増大がもたらす供給増加に期待するほうが合理的である。
むろん、法定最低賃金制度ではなく、税制などを通じて最低時給が実質として22スイスフランになるよう調整するという手もある。
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『ニューズウィーク日本版』2014-4・29/5・6
P.20
「スイスで世界最高の最低賃金?
スイスと言えば、高い生活水準と高級時計で知られるが、そこに「最低賃金が世界で最も高い国」という称号が加わるかもしれない。5月中旬に、法定最低賃金を時給22スイスフラン(約2550円)とする提案について国民投票が行われるのだ。
スイスには法定最低賃金の制度はないが、働き手の約90%は時給換算で22スイスフラン以上を得ている。それでも22スイスフランの最低賃金を導入すれば、物価の高いスイスで33万人の低賃金労働者(ほとんどが女性)の生活を楽にできると、提案支持派は主張する。
エコノミストや経済界の反対は強い。スイス有数の大企業ネスレの広報担当フィリップ・エシュリマンによれば、同社は既に国内の全従業員に時給22スイスフラン以上支払っている。打撃を受けるのは、同社の取引先企業だろうと彼は指摘する。
「提案されている法定最低賃金は近隣諸国よりかなり高く、地域や業界ごとの事情も考慮していない」と、エシェリマンは電子メールで取材に答えた。「スイス企業に打撃が及び、ひいては経済全体に悪影響が生じる」
シュナイダーアマン経済相も、提案が通れば、小売り、農業、家事サービスなどの産業に打撃を与え、結果として低賃金労働者を苦しめると主張。国民に反対を呼び掛けている。
最低賃金をめぐり論争が起きているのは、スイスだけではない。米ワシントン州シータツクでは最近、最低賃金が全米最高の時給15ドルに引き上げられた。同州シアトルでも同額の最低賃金導入を目指す動きがある。
スイスと同様、中小企業が流出するとの理由で反対する声があるが、地元の非営利団体ビュージェットサウンド・セージの報告書によれば、そうした懸念には根拠がないという。昨年、最低賃金を25%引き上げたカリフォルニア州サンノゼでは、むしろ企業の数が3%増えたと、同報告書は指摘している。
スイス国民の意見は割れている。最近のある世論調査では、52%の人が反対票を投じるつもりだと答えている。
クリストファー・ザラ」
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