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アベノミクスを支える浜田宏一に聞く 「成熟した債権国」化する日本 今後の針路
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140422-00010001-wedge-bus_all
WEDGE 4月22日(火)12時17分配信
「成熟した債権国」へと変貌を遂げる日本。将来の日本経済を見据え、政府・日銀に求められるものとは。
─アベノミクス第1の矢・大胆な金融緩和によって円高が是正されたのにもかかわらず、輸出が伸びていないことを疑問視する声があります。
円高が続き日本の製造業の海外シフトが進んだため、円安が輸出増に効いていないと一般的に言われる。
しかし、人間の一生にたとえると、ここ50〜60年間の日本は、輸出を伸ばして海外に金融資産をため込みプラントも増やしてきた。いわば人間の壮年期として蓄えてきた。
いまは、蓄積した資産を食いつぶしていく時期。貿易収支が縮小していくのは当然の流れであり、経常収支も然り。世界全体で見ても、世界各国の経常収支、貿易収支を足せば大体ゼロになる。日本だけが未来永劫黒字を維持しようとする必要はない。米国にしろ経常赤字をずっと続けながら、技術水準なり成長の活力を他国よりも保っている。
日本の経済運営に関しても、これまでの円安政策による輸出振興で、輸出を伸ばし利益を他の資産に回して日本の企業や国民の消費を増やしてきたことから、経済運営が外需中心から内需中心に転換しつつある。1986年の「前川リポート」でも主張された内需主導型の経済成長への転換を果たしているのだ。「成熟した債権国」へと日本が変わってきているのであって、貿易収支が赤字でも、利子収入などで食べていけるので心配する状態ではない。
それよりも心配すべきは、デフレギャップが解消し切れていないことである。有効求人倍率も1倍を超え、賃金も上昇して雇用市場には改善が見られるが、資本や設備に余剰感があり、投資意欲が伸び悩んでいる。
─日銀が「2年で2%の物価上昇」を目標として掲げています。
無理に2%までもっていく必要性が分からない。日銀としては、経済政策をやるにはコンシステンシー(一貫性)が必要であり、おそらく失業率を改善させて完全雇用にするのに2%くらいは必要と見込んで目標に設定し、それを信頼してみんなが行動するといういわゆる合理的期待形成を目指したものであろう。研究上でも有益な考え方であるが、現実には予想は外れることが多い。
安倍首相が今回大胆な金融緩和を実施したのは、日本にとって良かったし、画期的なことであった。
しかし、金融緩和がデフレの改善に効果を発揮している間は続けていればいいが、インフレ的な動きが見られるときは、早急に手を打ちインフレが坂道を逆走するようなことを止めなくてはならない。
─25年先など将来を見据え、政府や日銀に意識してほしい点は。
まずは、貨幣の持つ重要性。経済に対する金融政策の効き方はその時々によって異なる。金融が実体社会にただ付け加えられただけのものなどと考えないでほしい。
さらに長期を見据えれば、日本の人口は減っていく。少子化の抑制や女性労働力の活用が重要。託児所の充実などの対策が考えられるが、ハーバード大学のスーザン・ファー教授は、外国人労働力の導入が有効だと言う。保育を担うような移民を海外から受け入れて子育てはそちらへ頼み、その代わりに日本で教育を十分受けた女性の就業機会を増やす。移民の受け入れは、労働力が増えるという意味だけでなく、日本の女性がもっと働ける環境を促進することにもなる。
─アベノミクスによって大胆な金融緩和に踏み切った日銀ですが、政策姿勢自体を転換したのでしょうか。
日銀は非常に優れた官僚組織であり、命令されたことはやる。ただ、この15〜20年間、「デフレは悪くない」「インフレは1%でも許さない」という姿勢で金融政策が行われており、日銀の「家訓」となっているだろう。黒田東彦総裁がトップの間は心配ないが、次の総裁の誕生、あるいは将来を考えれば、独立性が強すぎる今の状態から日銀法を改正しなければならない。物価の安定だけでなく、雇用や経済成長も重大な目標であると日銀が認識して行動することが、国民の幸福につながる。
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浜田宏一 (はまだ・こういち)
米イェール大学名誉教授、内閣官房参与。1936年生まれ。経済学博士(イェール大学)。69年東京大学経済学部助教授、81年同教授。86年イェール大学経済学部教授。2012年12月、第2次安倍内閣で内閣官房参与就任。 (撮影・松村隆史)
WEDGE編集部
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