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消費税8%後の勝者は誰だ 小売激変 この難局を各社どう乗り切る??
http://toyokeizai.net/articles/-/35956
2014年04月22日 週刊東洋経済編集部
4月、17年ぶりに引き上げられた消費税。小売り関係者にはかつての悪夢がよぎったはずだ。前回、1997年の消費増税以降、全国のスーパーの売上高(既存店ベース)は、前年比マイナスが続き、結局一度も水面上に浮かぶことはなかった。2001年にマイカルが破綻、そして04年にはダイエーが自主再建を断念するなど、再編・淘汰も起きた。
だが、業界は今回の増税を冷静に受け止めている。アベノミクスによる株高などに支えられ、消費が比較的堅調だからだ。首都圏地盤の食品スーパー・マルエツでは、4月の第2週に入って既存店売上高がプラスに転じ始めた。「駆け込み要因のなかった生鮮食品や総菜は、4月に入って3.4%増えている」(上田真社長)。業界には、少なくとも6月に入れば増税の影響は一巡する、との見方が多い。
それでも安閑としてはいられない。15年秋には消費税の10%への引き上げが予定されている。何よりも、人口減で国内のパイは縮小する。高齢化や単身世帯の増加などによる、消費者行動の変化も激しい。イオンの岡田元也社長は「むしろ駆け込み需要の反動減が収まった後に、本当の競争が始まる」と気を引き締める。
■業界でM&Aが加速 セブンはオムニ再編
小売業界では昨年からM&A(企業の合併・買収)が増えている。業界首位のセブン&アイ・ホールディングスは今年1月、カタログ通販最大手のニッセンホールディングスや雑貨店「フランフラン」を展開するバルスなど、計4社に資本参加。イオンも昨年8月にダイエーを名実共に傘下に収めた。M&Aは業態を問わず起きており、ある食品スーパーの幹部は、「M&Aの案件はしょっちゅう舞い込んでいる」と明かす。
背景には業界特有の事情もある。高度成長期に勃興した小売企業の多くが、ちょうど代替わりの時期を迎えているのだ。「後継者難からM&Aに発展するケースが多い」(M&A仲介会社幹部)。円安に伴う仕入れコスト増への対応も大きな課題だ。
今後も業界でM&Aが加速することは間違いない。注目すべきは、従来のような同じ業態同士の統合だけではないということだ。ネットとリアルの融合=オムニチャネル戦略を掲げ、通販や専門店などを取り込むセブン&アイはその代表例。異業種との融合はさらに増えるだろう。
本特集では、業界再編の真意と、各社の新戦略を検証する。消費増税後の真の勝者は誰だ。
■ネット企業のO2O戦略が加速
スマートフォンの「楽天チェック」アプリで紹介された池袋パルコ7階のレストランフロア。到着後、アプリを立ち上げチェックインボタンを押すと、何も買わずして「楽天スーパーポイント」が30ポイント貯まった。ポイントは「楽天市場」などで使うことができる。
このようなサービスを来店ポイントといい、楽天、リクルートなどのネット企業が相次いで参入している(左表)。来店ポイントのように、ネット利用者をリアル店舗に誘導する施策がO2O(オンライン・ツー・オフライン)。今、ネット、小売り各社が熱視線を注ぐ分野だ。
積極的な取り組みが目立つのが商業施設大手のパルコ。過去1年、O2Oのサービスを手当たり次第に導入してきたといってもいいほどだ。
来店ポイントでは表に挙げた四つのサービスすべてに参画。ユーザーが行きたい場所を保存しておくと、近くに来たときにスマホに通知する頓智ドットの「tab」にも参加する。LINEの公式アカウントと「LINE@」では、クーポンなどの情報を発信している。
「パルコのウェブサイトへのアクセスの7割がスマホ経由。ここ1年くらいでさまざまなO2Oサービスが出てきたこともあり、やって当然だと考えている」と昨年3月に新設されたWEBコミュニケーション部の島袋孝一業務課長は語る。
■行くだけでもらえる 来店ポイントの集客力
中でも送客人数が最も多いのが、昨年6月から池袋店で導入している来店ポイントの「スマポ」だ。スマポは楽天傘下のスポットライトが運営、大都市圏を中心に100万人近くの会員を擁する。「多い店舗では1カ月に1万人を送客している」(スポットライトの柴田陽社長)。パルコは実際の送客人数を明らかにしていないが、平日、週末を問わず来店者数の底上げがあるという。「ポイント獲得だけが目的の人もいるが、パルコに関心がなかった人の来店と購買につながっている」(島袋氏)。
スマポの効果を受けてパルコが現在期待を寄せるのは、スポットライトが4月2日に始めた楽天チェック。超音波を使う来店検知装置はスマポと共用可能だ。スマポの兄弟分といえるようなサービスだが、楽天スーパーポイントを求めるアプリの潜在ユーザーとして約9000万人の楽天会員がいることは大きい。
楽天にとって、楽天チェックはネット通販市場よりはるかに巨大なリアル市場に「楽天経済圏」を広げる一つのカギとなる。将来的には、リアル店舗の来店記録をネット上の販促にも活用できるかもしれない。
スマポ、楽天チェックとも、今年のゴールデンウイーク前までにパルコ全19店舗での導入を予定する。両来店ポイントでは、初期費用を除けば店舗の負担はポイント原資と送客人数に応じた手数料のみ。チラシを使う場合、1来店当たりの集客費用はスーパーなどで95〜140円程度かかるが、来店ポイントだと50〜80円に抑えられる。年齢や性別でターゲットを絞り込んでの集客や、来店者へのメッセージ送付も可能。販促活動を効率化できそうだ。
■料理する女性目がけ 晩ご飯の食材を提案
ところ変わって、東京都江東区の食品スーパー、タイヨー東陽町店。地元の買い物客でごった返す店内で目立っていたのは、国内最大の料理レシピサイト「クックパッド」のロゴやレシピカードだ。同店は2012年12月から、クックパッドの利用者に向け「特売情報」のリアルタイム配信を行っている。
朝一番に店長らが目玉商品を写真付きでクックパッドに載せ、午後1時ごろにパートの女性たちが夕食に使いたい食材をお薦めするのが日課だ。長谷川憲治郎店長は「新聞の折り込みチラシを構成するのは早くて1週間前。特売情報では当日の朝仕入れた商品も告知できる」と語る。
同店では3年ほどメールやツイッターによる集客も行ったが、登録者は400人が限度。新聞を取らない世帯が増え、チラシにも限界を感じていた。片や特売情報の登録者はすでに1700人を超え、毎日200〜250人が情報を閲覧する。1日の来店者5000人に対し、決して小さい数字ではない。長谷川店長によると、「来店者数は特売情報の導入前より1%以上増えた。特に若い客が増えている」という。
クックパッドの利用者という、料理や買い物への意欲が高い人々に情報を届けられることが、集客効果の背景にありそうだ。月間約2000万人のクックパッド利用者のうち特売情報を使うのは10%未満で、伸びしろは大きい。「興味を持ってくれる店舗も増えている」(クックパッド買物情報事業部の沖本裕一郎部長)。利用者、店舗双方でさらなる普及を見込む。
花盛りのO2Oビジネスだが、すべてのサービスがうまくいっているわけではない。
昨年10月末に登場したスタートトゥデイのスマホアプリ「WEAR」は、かねてから波紋を広げていたバーコードスキャン機能を4月末で中止する。衣料品店の店頭でバーコードを撮影するとその商品をネットで購入できるサービスだが、「店舗をショールームのように使われてしまう」という店舗側の警戒心を解くことができなかった。
同業の中で唯一実験導入していたパルコでも、利用者は増えなかった。販売側の管理ツールであるバーコードをスキャンする行為自体、消費者になじまなかった側面もある。全体のパイが増えない中で、ネットとリアル店舗の対立という従来の構図だけが浮き彫りになってしまった。
O2Oは日の浅い分野だけに試行錯誤は必至。リアル店舗は新サービスをうまく利用し、新しい顧客層の開拓につなげたいところだ。
(週刊東洋経済2014年4月26日号より)
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