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中韓への人材・技術流出、なぜ起こる?人材戦略の欠如と技術者冷遇〜サムスンとの比較
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140420-00010001-bjournal-bus_all
Business Journal 4月20日(日)8時13分配信
●サムスンの徹底的な人材管理
日本は、技術立国を掲げている。実際に、電機、自動車、医療など多くの分野で、日本企業は世界最先端技術を保有している。にもかかわらず、その技術力を競争力につなげることができない。いわば、「MOT(マネジメント・オブ・テクノロジー=技術経営)」が行われていないのだ。
とくに顕著なのが、技術をめぐる人材戦略の欠如である。韓国サムスングループを見てみよう。R&D(研究開発)に従事する従業員の数はグループ中核企業のサムスン電子だけで6万人以上を数え、グループ全体では7万3000人以上に上る。その中で、「戦略的人的資源管理」と称して徹底的な人材管理が行われている。
サムスンの驚異的成長は、同社にとって核心的な技術を持つ人材を確保し、育成してきた結果だ。「経営計画が実現できるかどうかは、99%が人事戦略とその実現にかかっている」と、同社の人事関係者は語る。
注目すべきは、外部からの“核心人材”の確保と、優秀な人材の維持、すなわち「A&R(アトラクション&リテンション)」戦略だ。サムスングループの中途採用者は、年間採用者の25%から30%にも上る。なかでも核心人材の獲得にかける執念は半端ではない。
まず、企業の長期的戦略に基づき、将来的に必要な技術について世界トップレベルの人材を、文字通り世界中から探し求める。なかでも「スーパークラス」の人材となれば、グループ会社社長が直々に出向き、スカウトする。用意する報酬額は青天井だ。戦略的人的資源管理では、リテンションストラテジー、すなわち維持戦略を重要視する。せっかく集めた超優秀な核心人材を他社に引き抜かれないように、手を尽くして守り抜く。
一方、日本企業は、もう10年以上も「サムスンが技術を盗む」と言い続けていながら、高度な技術を有する社員がサムスンに転職する理由を調べたり、頭脳流出に歯止めをかける努力をしてきていない。
●技術漏洩が日本企業の国際競争力低下を招く
実際、日本の最先端技術が海外企業に流出するのは珍しいことではない。例えば、3月、東芝の提携先企業であるサンディスクの元社員が、東芝の最先端技術であるNAND型フラッシュメモリの研究データを、韓国のライバル企業SKハイニックスに不正に提供した事件は、記憶に新しい。
しかしながら、このように表沙汰になるケースはごく一部だ。多くの企業は、起訴することで技術情報がオープンになるのを恐れたり、管理の甘さを指摘されるのを恐れるなどして表に出さない。また、技術が日進月歩の今日、最新技術といえども短期間で陳腐化するため、訴訟をして賠償金を得てもペイしないと判断し、争うのを見送る場合が多いのだ。
しかし、水面下で発生している多くの技術漏洩が、日本企業のグローバル競争力の低下を招くことは間違いない。泣き寝入りしては、相手の思う壺といっていいだろう。そうである以上、不正には断固とした対応をとり、再発防止に向けて「徹底的に技術を守る」姿勢を内外に示すことが重要だろう。
技術流出が後を絶たない背景として、日本企業のリスク管理の甘さも指摘しなければいけない。日本企業は、技術流出リスクへの対策が遅れている。例えば、セキュリティの厳しい海外企業では、パソコンやデジタルカメラ、メモリー類の持ち込みを制限している。コピー用紙の持ち出しまで禁止する企業もある。身内からの情報流出に神経を尖らせているのだ。
国の法整備も遅れている。知的財産基本法、不正競争防止法などの充実、罰則の強化が求められる。
技術漏洩としては、不正流出のほかに、中途退社した技術者が競合他社に転職し、ノウハウを提供するケースも後を絶たない。なぜ、機密情報を握るような能力の高い技術者が、中途退社するのか。ここに、日本企業の抱える今日的問題がある。
●理系出身者を冷遇する日本企業
日本企業はバブル崩壊後、構造改革に明け暮れ、雇用調整を繰り返してきた。日本の「失われた20年」の間のリストラがそれだ。意に反して退職させられたり、希望退職によって大手企業を離れた技術者は少なくなかった。さらに、日本企業は、文系出身者と比較して、理系出身者を冷遇してきた。最先端の技術を持つ技術者が、待遇に不満を抱いて転職するケースは多い。彼らの受け皿となったのが、中国や韓国のライバル企業だ。
加えて、終身雇用制度の崩壊により、技術者が将来に不安を抱くようになったとしても不思議ではない。彼らは、高額の報酬をエサに海外企業から引き抜きを仕掛けられれば、釣られてしまう。日本企業は、技術者を一本釣りする中韓企業を批判するが、問題は引き抜く企業ではなく、引き抜かれる企業にもある。
実は日本企業もかつて、韓国や中国企業と同じように、海外から先進技術を強引に学んできた歴史がある。1970年代末、日本企業は米シリコンバレーから最新の半導体技術を得ようと、高額の報酬を用意して米国人技術者に指導を仰ぎ、米国側から激しいバッシングを浴びた。
むろん、不正な技術流出となれば論外であるが、定年退職した技術者がどこに再就職しようと、誰も規制はできない。仮に退職者に「守秘義務契約」を結ばせたとしても限界があるだろう。頭の中にインプットされた情報や体に染みついたノウハウまで管理することはできない。
これまで見てきたように、日本企業はサムスンをはじめとするグローバル企業と比較して、人材維持戦略が欠落しているといわざるを得ない。技術者が、自分を高く評価する企業や恵まれた研究環境を求めて転職することは、否定されるべきではない。したがって、日本企業が今後も高い技術力を維持するためには、技術者にとって魅力ある企業であり続けることが求められるのだ。つまり、技術者の処遇や設備などの環境において、世界の競合他社と互角、いやそれ以上のレベルでなければならないということである。
片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家
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