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2014年04月17日
日産自動車の命運 その1
タイムリーではありませんが、どうしても書いておきたかったテーマです。
よく本誌は(有料メルマガも含めて)日産自動車を「ルノーに食い荒らされて体力がなくなっている」と書くのですが、いよいよ「ルノーに丸ごと食い尽くされてしまう」タイミングが近づいたと感じます。
ただルノーもカルロス・ゴーンCEO(2005年からルノーのCEOも兼務)も資本主義のルールを踏み外して暴挙を働いているわけではなく、止める方法はありません。ここでわざわざ記事にする理由は、「資本の論理」の厳しさを改めて理解していただくためと、逆に最近増えている日本企業による海外企業の巨額買収が「単にお金を出しただけ」に終わらないためです。
強力な労組を巻き込んだ社内抗争に明け暮れて経営危機に陥っていた日産自動車を、ルノーが1999年3月に第三者割当増資で13.64億を1株=400円で、2002年3月にワラント行使で5.4億株を同じく1株=400円で、合計20.04億株(44.4%)を8016億円で取得して傘下に入れ、ゴーンCEOら役員を派遣しました。
直近のルノーの持ち株は19.62億株(43.4%)と減少しています。これは2010年4月にルノー・日産連合とダイムラーAGがそれぞれ発行済み株数の3.1%を保有する資本提携で、ルノーが保有する日産自動車株の1部をダイムラーAG株と交換したからですが、コスト計算が複雑になるため以下では無視します。
ただ2002年3月のワラント行使に際して日産自動車もルノーに2470億円を出資し、15%の株主となったのですが議決権はなく、当然に役員の派遣もありませんでした。ワラント行使で払い込まれた2159億円から2470億円を「タダ」で返したことになります。それにワラント行使時点では日産自動車の株価が900円台まで回復していたのに対し、日産自動車の取得したルノーの株価は「時価」だったことなど、釈然としないことが多いのですが一応はルールの範囲内です。
本日(4月16日)日産自動車の株価は911円なので、円ベースではルノーの投資した8016億円は2.23倍の1兆7874億円になっていますが、これも一応はリスクを取った結果なので考えないことにします。ちなみにユーロベースの投資金額は66億ユーロで、本日は1.91倍の126.3億ユーロとなっています。
しかしルノーが投資開始以降、日産自動車から受けとった配当総額は(2014年3月期の予定配当1株=30円も入れて)概算で5140億円になります。それにルノーへ出資させた2470億円を加えると合計7610億円を受け取っており、投資金額の8016億円は「ほとんど回収済み」となりますが、これも文句がいえる筋合いではありません。
それでは冒頭で書いた「ルノーに食い荒らされて体力がなくなっている」とは、どういう意味なのでしょう? それは目先の決算(配当)とバランスシートのスリム化を重視するあまり、必要な資産まで切り売りして将来のための投資を怠ってきたツケが出てきていることです。例えば中国では、ホンダや韓国の起亜自動車とも合弁している東風汽車集団と合弁してお茶を濁すだけで、本格的な投資で生産拠点化するつもりは全くありません。
逆に明らかにルノーが投資すべきロシアではアフトバスを傘下に入れるものの、全く恩恵を受けない日産自動車に7億5000万ドルも負担させ、肝心のルノーは3億ドル負担するだけです。同じようにルノーが投資すべきモロッコのタンジール工場も、わざわざルノー・日産自動車の共同投資にしてしまっています。
これはある意味では当然ですが、ゴーンCEOにとってルノーは「今後のステップのために重要」であり、日産自動車は「搾れるだけ搾りとり、不必要なものまで負担させる」対象でしかありません。
その結果、日産自動車は昨年11月に2014年3月期の営業収益を1000億円減の6000億円、純利益を650億円減の3550億円と大幅下方修正に追い込まれ、円安で潤う自動車会社の中で「1人負け」となりました。
ゴーンCEOは、すかさず名目No2の志賀COOと実質No2のドッジ副社長を閑職に追いやり、新たに3名の副社長(日本人は1名だけ)にCOO職を分担させると発表し、自らの責任には全く触れませんでした。そのゴーンCEOは日産自動車に出社するのは月3日ほどだそうですが、10億円ともいわれる報酬は日産自動車に負担させています。
そのゴーンCEOは、いよいよ「仕上げ」に取りかかりました。もっともっと「恐ろしいこと」が始まっています。
続きます。
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2014年04月18日
日産自動車の命運 その2
昨日は、日産自動車が「ルノーに食い荒らされて体力がなくなっている」段階から「ルノーに丸ごと食い尽くされてしまう」段階に移りつつあると書きました。
そこで「食い尽くす主体」がルノーなのかゴーンCEOなのか?とのコメントをいただきました。以下のように書くとわかりやすいと思います。
ゴーンCEOはレバノン系ブラジル人で、フランスでは理系のエリート養成大学・エコール・ポリテクニークを卒業しているものの決して特権階級ではなく、2005年に就任したルノーCEOとして十分な実績をあげないと「その将来」がありません。日産自動車を立派な会社にしても何の実績にもなりません。
ところがルノーの2013年通期の純利益は前年比66%減の5.86億ユーロ(826億円)しかなく、連結対象の日産自動車は決算期が違うので仮に2014年3月期の予想純利益3550億円を使うとルノーの持ち分(43.4%)利益は1540億円にもなるため、ルノー単体では大赤字だったことになります。
日産自動車の時価総額(4月16日)は4.08兆円なのでルノーの保有分は1.77兆円です。これに対してルノーの時価総額は216億ユーロ(3.05兆円)ですが、そこには日産自動車株の資産価値だけではなく「日産自動車から受け取り続ける各種メリットの現在価値」が含まれているはずで、ルノー単体の価値は大変に少ないことになります。
このままではフランスにおけるゴーンCEOの将来はおぼつかないことになります。フランス政府はルノーの15%の株主ですが、この比率以上の発言力があるはずです。また昨年ゴーンCEOはルノーのNo2だったタバレスCOOを「自分の地位を狙っている」と解任しており、タバレス氏はライバル会社のプジョーCEOに就任しています。
つまりゴーン・ルノーCEOは、自分がCEOを兼ねる日産自動車に「ますます」依存して「ますます」搾り取る必要が出てきています。とりあえずは本年1月31日にルノーと日産自動車は両社工場の一体運営などを柱とした統合強化策を検討すると発表しており、「生産・物流」「研究・開発」「人事」「購買」の幹部を相互活用するようですが、これを対等な一体運営と考えてはなりません。
いよいよルノーが日産自動車を「丸ごと食い尽くし」はじめたのです。相互活用する部門をみれば、例えば日産の生産ラインを使ってルノー車を組み建てるとか、日産の研究・開発コストでルノー車の研究・開発を行うとか、日産自動車に購入させた部品をルノーが格安で使うとか、「やりたい放題」ができることになります。
日産自動車にもう少し「まともな」日本人幹部社員がいれば、もっと危機感が出るはずですが、ゴーンCEOやルノーから派遣された役員や幹部の「顔色を伺う」だけのようです。
ゴーンCEOにしても、日本国内だけではなくフランスを除く世界各国では、ルノーよりも日産自動車の方がまだまだ「ブランド価値」「生産・開発能力」「収益力」が優れていることがわかっているため、日産自動車を「ルノー日本法人」にするつもりはありません。もちろん時価総額が小さく資金のないルノーが日産自動車を完全子会社にすることは、もっとありません。
つまりこのままの状態で、日産自動車を「食い尽くす」ことになります。
一部の評論家は「ルノーは保有する日産自動車株の持ち株比率を引き下げて、その売却収入で経営の立て直しをする」と大変に平和的な予想をしています。確かに拒否権が残る33.4%近くまで日産自動車株を売却する可能性はありますが、日産自動車を「食い尽くす」ことは止めるはずがありません。
繰り返しですが、ルノーCEOとしての実績に「将来がかかっている」ゴーンCEOにとって、確実な方法は日産自動車を「食い尽くす」ことしかないからです。
またこの「搾取」を止める方法はないのか?とのコメントもいただいていますが、残念ながら「全く」ありません。それが「資本の論理」であり、もう日産自動車は諦めるしかありません。
逆にソフトバンクやサントリーや武田薬品などが「日本で儲けた収益」を惜しげもなく海外企業の巨額買収につぎ込んでいますが、果たして「日本に還元」されることがあるのか?と考えてしまいます。そのような意味ではルノーやゴーンCEOの「とんでもなさ」は見習うべきなのかもしれません。
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