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ブラック居酒屋に「やりがい」を感じ、搾取される従業員?経営者目線を押しつけ、美辞麗句でダマす
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140418-00010000-bjournal-bus_all
Business Journal 4月18日(金)2時7分配信
少々昔の話になるが、今年1月14日放映のテレビ番組『クローズアップ現代』(NHK)にて居酒屋甲子園の様子がネガティブなニュアンスで取り上げられ、インターネット上で話題になっていた。
後追い記事も多数目にしたが、概ね番組の姿勢に賛同するもので、「宗教的なやりがい搾取だ」「違和感通り越して戦慄を覚えた」といったネガティブな意見が多かったようだ。確かにそんな面があることは否定できないが、かといって「居酒屋甲子園」ばかり非難するのもアンフェアと感じた。いくつかの切り口からみていこう。
そもそも居酒屋甲子園とは、外食産業の活性化を目的に2006年から毎年1回開催されているイベントである。全国からエントリーした居酒屋のうち、独自の選考基準で選ばれた優秀店舗が自店の想いや取り組みをプレゼンテーションし、日本一を決めるというものだ。8回目となった昨年大会には全国から約1400店舗が参加し、5000人以上の来場者があった。
ちなみに同番組では決勝スピーチの様子が放送されたのだが、料理の味や接客技術を競うのではなく、「感動」や「笑顔」「仲間」「感謝」といったポジティブなキーワードで彩られた「居酒屋で働く夢や希望を語る」プレゼンテーションを評価するものであり、スピーチの様子を仲間の店員たちが涙ぐみながら応援している様子が「カルト的」といった印象を持たれてしまったようだ。
【放送したNHKの問題】
居酒屋甲子園運営側のコメントによると、当初NHK側から取材の申し込みがあった際に伝えられていた取材趣旨と、実際の報道内容が大きく異なっていたとのことだ。取材された側の主張が伝わることなく、一方的に批判的な報道がなされたのであれば問題である。
<NHKからの取材依頼文>
いま日本社会のさまざまな現場で生まれている広告、条例、企業の社訓・クレド(信条)などの「熱い言葉」の現場を訪ね、その背景にあるものを探る特集を組みたいと考えております。そのなかで、従業員の離職率の高さに悩むサービス業界で、いま○○甲子園という大会が広がっていること、さらに各店舗さんの企業理念や個人理念でも詩的な言葉を導入されている様子を取材しております。低温世代といわれる若者たちのこころをどう動かすか、その取り組みの様子を取材しております。
<居酒屋甲子園側からの反論>
若者をごまかすための言葉遊び(「ポエムの力で説明放棄」「何かを隠蔽する」等々)であるような報道がありました。このような報道になったことは誠に残念であります。
NHKの取材依頼文に嘘はないが、「居酒屋甲子園に対する批判的な姿勢」という肝心の報道趣旨が伝えられていない。筆者の経験上、恐らく編集されたVTRも居酒屋甲子園側に確認されないままで放送されたのであろう。
肯定的な報道を期待して取材協力したはずなのに、実際の放送で手のひらを返される。大会を運営しているNPOへの営業妨害ともいえるし、趣旨に賛同して決勝まで残ったプレゼンターが「哀れで無知な、搾取される若者」に見えてしまうではないか。これは報道機関の取材姿勢として問題である。
【批判的な視聴者の問題】
本件で視聴者にはなんの罪もないが、一つ確認しておきたい。もし当該番組が、居酒屋甲子園の取り組みを「過酷な労働環境でもやりがいを感じる若者たち」と絶賛するような報道だったら、ネガティブな反応をしただろうか?
全員とはいわないまでも、中には「ゆとり世代とか言われていても、こんな熱心に頑張る人たちもいるんだな。いい取り組みだ」などと思う人は一定割合いたことだろう。報道意図とは恐ろしいものである。
確かに異様に感じた人もいようが、それもまた価値観だ。ひとによって長時間労働は苦痛かもしれないが、参加した人にとってはやりがいを感じる職場であり、仕事なのである。薄給でハードワークであろうが、自分なりのモチベーションとプライドを持って働く姿勢自体を批判すべきではない。
安さを求めコストパフォーマンスを重視する一方で、料理の質やサービスを批判している消費者も、飲食店の「ブラック化」を促進する遠因でもあることを忘れてはいけない。その過剰要求に応えるために、最終的なしわ寄せが飲食店従事者に至っていることを認識しておく必要がある。
【ブラック居酒屋の問題】
多くの居酒屋は、顧客にも従業員にも真摯な姿勢で臨み、いい店舗づくりのために努力されているはずだが、中には残念な店も存在する。
薄給でハードワークな現状を改善しようともせず、「夢」や「絆」「笑顔」「感謝」などといったキラキラワードでごまかしている店はブラックである。
ダメ経営者がしばしば口にする「労働基準法を守っていたら、商売にならない」は言い訳だ。適正価格で商品とサービスを提供し、適法な労働環境を整備し、キッチリ利益を出している飲食店は確実に存在している。儲からない理由を従業員の資質や商圏、客層、景気、法規制などのせいにする経営者は能力が不足しているのである。
昨年大ヒットしたNHK連続テレビ小説『あまちゃん』にて、小細工を弄するプロデューサーに主人公である天野アキの母・春子(小泉今日子)が言い放ったセリフ「普通にやって普通に売れるもんつくりなさいよ」は至言なのだ。
【ブラック居酒屋の無知な従業員の問題】
「ブラックな会社でしか働いたことのない若者」は搾取される。彼らに言いたいのは「現在の労働環境は『当たり前』じゃない」ということだ。
最低限の労働法規を知っておくべきである。1日8時間以上、週40時間以上の労働は本来違法であるし、それ以上の残業ができるように協定が取り交わされている店なら、残業代をきちんと得るべきである。
視野を広く高く持ち、他の店の労働環境も知っておこう。「ウチの店、何かおかしいかも……」と思ったならば、経営者と話し合うべきである。
もちろん、給与を得て働いている以上は、権利を主張するなら義務を果たさねばならない。一生懸命働こう。
経営者目線を持って働くのは素晴らしいことだが、一方で経営者と同じ責任を要求する会社は怪しいと警戒しよう。経営者はそもそも、「すべてを仕事に捧げることが仕事」だ。だから高い給与を得ている。あなたは従業員だ。責任は限られるし、自分の時間、リソースの一部を経営者に提供して、その見返りに給与、報酬をもらっている存在である。迷った時は、何を大切にしたいのか思い返そう。もしかしたら居酒屋甲子園なんて、不満を会社に向けさせないためのガス抜きかもしれない。
いろいろ述べてきたが、個人的には、何の工夫もない店で無愛想な店員に接客されるよりも、居酒屋甲子園に出ようとするくらいのバイタリティの溢れる雰囲気が好きだ。さらに料理も美味く、適度に安価であれば最高である。
新田 龍/ブラック企業アナリスト、ヴィベアータ代表取締役
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