http://www.asyura2.com/14/hasan87/msg/135.html
Tweet |
「取りやすいから取る? 消費増税転嫁の不公平(東京新聞 こちら特報部)」
http://www.asyura2.com/14/hasan87/msg/130.html
財務省(国税庁)が消費税を小売売上税や物品税のように説明してきたことが、書かれているような混乱(デタラメ)が起きる源泉である。
財務省がすっきり付加価値税であることを説明していれば、消費税増税前の売上分について消費税増税後に“消費税分の差額”を徴収するといったデタラメな商法は発生しなかったはずである。
もう一つ、わざとかもしれないが、東京新聞ともあろうものが、NHKの言い分にきちんと反論できていないことにも驚かされる。
まず、消費税の税額は、「売上に係わる消費税額−仕入に係わる消費税額」で計算される。
消費税の税率が8%に変更されたのは4月1日だが、個人事業者は暦年(1月〜12月)が会計期間であり、企業にしてもどこもが4月〜3月の会計期間というわけではない。
消費税増税(税率変更)をまたぐ決算期間の場合、消費税増税前に計上した売上や仕入に係わる消費税額の計算には5%を適用し、消費税増税後に計上した売上や仕入に係わる消費税額の計算には8%を適用した合計に基づき「売上に係わる消費税額−仕入に係わる消費税額」を算出し納付すべき消費税額とする。
NHKの差額徴収に関して、「消費税はサービスが提供された時点で発生する。受信料も番組を見た時点で発生する」という説明は、“テレビ視聴税”なら説明になるものだが、消費税ではまったく通用しない駄話である。
消費税を計算する基礎的値は、サービスが提供された時点で発生するわけではなく、売上や仕入が発生した時点で発生する。
売上と仕入に係わる消費税額の処理は発生(計上時点)主義であり、ある商品を3月19日に仕入れ、その商品を4月10日に売った場合、「仕入に係わる消費税額」には税率5%を適用し、「売上に係わる消費税額」には税率8%を適用することになる。(5%の税率で仕入れた物だから、売上の消費税も5%でというわけにはいかない)
極端な例を示すと、消費税導入前の1988年に仕入れた商品を2014年4月に売った場合、「売上に係わる消費税額」には税率8%が適用されるが、「仕入に係わる消費税額」はゼロ(仕入自体がこの決算期間に発生していない)だから、仕入に伴う税額控除はできず売上に係わる消費税額がそのまま残ることになる。
NHKのケースに似た話として、翌月分を前月末までに受け取る事務所の家賃が問題になったようだが、これも、借り主と貸し主のあいだの契約内容次第であり、売上として計上した時期がいつなのかということで決まる問題である。
消費税増税が実施された場合賃料が自動的に上がるという条項が契約にあれば、4月分の家賃を引き上げることできる。とはいえ、それはあくまでも契約に従ったものであり、消費税が増税されたことが直接の理由ではない。
貸し主は、3月に消費税分をアップした家賃を受領しその日に売上として計上すると、その売上に係わる消費税額を算出するときに適用する税率は5%である。(余禄が生じるが、消費税には関係ないことであり、黒字なら利益増として法人税の税額に反映される)
貸し主が消費税分として余計に受け取ったから納付する消費税に加算したいと思ったら、3月時点では前受け金として処理し、4月になってから売上として処理すればいい。税務署は、そうせず、消費税額が少なくなる3月に売上を計上したからといって文句は言わない。
NHKのケースに戻り、わかりやすい簡単なケースを示す。
2014年4月20日に放送するある番組は、2014年3月15日時点で制作費の支払いがすべて完了していた。
NHK職員の給与を別にすれば、制作費は仕入だから、5%の消費税が課されているとみなして計算することができる。税抜支払い額が1億円の制作費なら、5百万円は「仕入に係わる消費税額」として、“前期”の「売上に係わる消費税額」から控除できる。
仮に、NHKが、「消費税はサービスが提供された時点で発生する。受信料も番組を見た時点で発生する」という理屈を持ち出し、番組を放送したのが4月20日だから、「仕入に係わる消費税額」は1億円×8%で8百万円になると税務署に主張したとしても受け入れてはもらえない。それは、本来よりも3百万円も多く控除する脱税行為と認定されてしまう。
また、記事のなかに、「NHK広報によると、消費税法が1988年に成立する際、経過措置対象に含めることを国に申請したが、「該当しない」と認められなかった。5%に引き上げられた97年や、今回は財務省に問い合わせてはいない」という一節があるが、NHKは、契約者(視聴者)との関係と税務署との関係をごちゃ混ぜにしている。
なぜなら、消費税の納税義務(負担)は事業者にあり、視聴者(消費者)にはまったく関係がないことだからである。
「経過措置対象に含めることを国に申請したが、「該当しない」と認められなかった」とあるが、経過措置とは、数ヶ月前から予約販売がなされている航空券やJR指定乗車券や劇場・映画館などの前売りに関するようなものである。
前売りしたものには前売り時点の消費税税率が適用されるというのが「経過措置」である。
これも、ことさら「経過措置対象」という仰々しい概念を持ち出す必要はない。なぜなら、消費税増税前に売上が計上されていれば、その売上に係わる消費税額を算出するときに適用される税率は5%の他にないからである。
「経過措置」というような仕組みをわざわざ持ち出さなくても、売上も仕入も、消費税についてはそれを計上した時点の消費税税率が適用されるという“一般的規則”で済んでしまうのである。
NHKの一括前納分に対する“差額”徴収は、「契約又は慣行により、1年分の対価を収受することとしており、事業者が継続して当該対価を収受したときに収益に計上しているときは、施行日の前日(平成26年3月31日)までに収益に計上したものについて旧消費税法(旧税率)を適用して差し支えありません」という国税庁の見解を無視し、視聴者(契約者)に不利な条件を押し付ける行為と言える。
国税庁の見解をシンプルに説明すると、1年分まとめて代金を受領し売上とすることは税務処理としても認められており、その場合、「売上に係わる消費税額」は代金を受領した時点の消費税率を適用して計算していいというものである。
オーナー企業がある会計期間に利益が出すぎたとき(翌期は利益をあまり期待できない)、この仕組みを利用して、事務所家賃などを1年分先払いして法人税を少なくすることができる。
この問題で何より追求したいのは、NHKは“差額”として徴収したおカネを消費税として納付しているのかということである。
消費税制度及び会計処理の仕組みから言えば、追加徴収した金額は消費税増税後の売上となるから、その売上に係わる消費税額は、“差額”に8%が適用されて算出されることになる。
しかし、NHKは、「税抜受信料×8%−税抜受信料×5%」の金額を“差額”として徴収したはずである。
「“差額”−“差額”×8%」(すなわち“差額”の92%)は、消費税増税分の名目で徴収されたにもかかわらず、売上に係わる消費税として計上されずNHKの懐に残ることになる。
消費税制度に即せばそれでもかまわないのだが、NHKはそうは説明していない。
NHKは、このようにして“益税”を手にしているという指摘について、それは違うと言いたいのなら、会計及ぶ税務処理を説明して疑念を晴らしてほしい。
NHKの他に都電荒川線の回数券が俎上にのぼっているが、3月末までに購入した回数券を使う時に増税分の差額10円を支払わなければならないというのは誤った運用である。
回数券も販売した時点で売上が計上されているから、消費税額計算で適用された消費税税率は5%で不変である。
NHKや都電のような理屈が通用するのなら、逆に、スタジオ設備やテレビカメラ、そして車両や線路の大半が、消費税がゼロないし3%ないし5%のときに仕入れたものだから、受信料や運賃に8%の消費税を適用するのはおかしいという反論を受けることになるだろう。
公的機関であるNHKや都電が、おかしな理屈で“差額”徴収を真顔で行っているところに、日本における消費税制度の悲劇があるとも言える。
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。