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トヨタ自動車が発売した新型パッソ。国内最高燃費の新エンジンを搭載。
トヨタvsホンダ「コンパクトカー燃費戦争」の裏側
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140416-00012358-president-bus_all
プレジデント 4月16日(水)14時15分配信
■トヨタが国内最高燃費を実現!
世界の自動車業界では今、エンジンの熱効率を巡る戦いが過熱している。そのさなかの4月10日、トヨタ自動車が次世代エンジンに関してマスメディア向けの技術説明会を行った。
発表したのはいずれもコンパクトカー向けのもので、排気量1.3リットルの直列4気筒と、排気量1リットルの直列3気筒の2機種。うち1リットルは、14日発表のベーシックカー「パッソ」のマイナーチェンジを機に搭載され、JC08モード燃費は27.6km/リットルと、普通車の非ハイブリッド車のトップに踊り出た。
今回の新エンジンの熱効率は1.3リットルが38%と、ハイブリッド用を除く量産車用ガソリンエンジンとしては「世界トップレベル」(トヨタ関係者)、1リットルも37%に達しているという。従来型がどちらも35%前後であったことを考えれば、進歩の幅はかなり大きいと言える。この2つのエンジンを皮切りに、2016年までに14機種のエンジンを同様の高効率なものに置き換え、グローバルで3割のクルマに搭載する計画だ。
エンジンの熱効率とは、燃料を燃やして得られた熱をどれだけ運動エネルギーとして取り出せるかを表す数値だ。熱効率が高ければ同じパワーをより少ない燃料で出し、同じ量の燃料ならより大きなパワーを出すことができることを意味する。クルマの競争力を左右する重要な項目のひとつである。
昭和時代、その熱効率はせいぜい10%台であった。が、エンジン内部の摩擦によるパワーロスを減らしたり、ガソリンが燃え残らないよう燃焼状態を改善したりといった涙ぐましい努力によって、その値は年々上昇。とくにここ10年ほどの進歩は目ざましく、熱効率で30%を切るようなエンジンはほとんど見かけなくなった。
そして今日、世界の主要メーカーがガソリンエンジンの熱効率の当面の目標値として掲げているのが「40%」という数値だ。ディーゼルではとっくにクリアされている数字だが、ガソリン車の場合、普通のクルマのエンジンで30%台後半、ハイブリッド専用エンジンで38〜39%といったところまで来ている。
トヨタの常務役員で長年ハイブリッドカーの開発に携わってきた小木曽聡氏は昨年夏、アメリカで「次期プリウスで熱効率40%を達成する」と表明。ホンダも負けておらず、本田技術研究所社長の山本芳春氏は昨年春の懇談で「量産車40%一番乗りは何としてもウチが取れとハッパをかけている」と語っていた。
■トヨタが燃費競争に参入したワケ
熱効率は昔から自動車メーカーの技術競争の象徴だったのだが、ここにきて各社がこれほど前のめりになったきっかけとなったのは、マツダが2011年に「スカイアクティブエンジン」を投入したことだった。
ホンダは昨年9月に発表した「フィット」の1.3リットルエンジンで熱効率37%を達成したが、「当初の目標値はもう少し低かったのだが、マツダさんのスカイアクティブエンジンを見て戦略を修正した」(エンジン開発担当)という。今回のトヨタの新エンジンを開発したエンジニアも「38%という数値は、言うまでもなくマツダさん、ホンダさんも意識してのこと」と語る。もともと40%という目標は、エンジンの使い方が限定的ですむことから熱効率を上げやすいハイブリッドカー用エンジンを想定したものだったが、競争激化で今や、普通のエンジンでも40%を見すえた開発が本格化しているのだ。
トヨタがクルマの発表会とは別に新エンジンの技術説明会を行った目的は、まさにその熱効率戦争でトヨタがトップランナーの一社であることをアピールすることだった。このところライバルメーカーが次々に高効率エンジンを市場に投入したことでトヨタの技術イメージが薄められていることを懸念する声は社内からも聞こえていた。
にもかかわらず、これまでトヨタは、内燃機関単体の技術発表にはあまり熱心ではなかった。トヨタ環境フォーラムという自社技術の披露会を不定期に行っており、そこでエンジン開発に関するポリシーも発表してはいたのだが、あくまで主軸は得意としているハイブリッド技術で、エンジン単体では大したアピールをしてこなかった。
「原因のひとつは、ミスターハイブリッドを自任する内山田さん(内山田竹志会長)の現場に対する影響力が強かったこと。あくまで主役はハイブリッドで、エンジンは脇役。ガソリンエンジンはまだいいほうで、ディーゼル部門などは内山田さんの前では小さくなっていなければならなかった」
トヨタのエンジニアの一人は内情をこう語る。世界におけるトヨタのブランドイメージを大きく引き上げる原動力となったのがハイブリッド技術であったことに疑いの余地はない。内山田氏はその最大の功労者の一人で、豊田章男社長も商品、技術面については全幅の信頼を置いていた。本来、現場を離れた人材は次の世代へと権限を移譲していくものだが、内山田氏は存在感があまりにも大きく、技術担当副社長から副会長、会長へと昇格しても現場への影響力は強く残ったのだ。
が、現場を離れれば、肌身感覚は次第に薄れるもの。ハイブリッドはクルマの商品力を上げるのに非常に有効な技術のひとつだが、万能ではない。ハイブリッドカーの販売台数を見ると圧倒的に多いのが日本で、次いでアメリカ。その他の地域ではハイブリッドはシェア拡大のキラーコンテンツにはなり切れないでいる。とりわけ購買力の低い新興国では、普通のエンジン車のニーズが圧倒的に高く、ハイブリッドを早期に売り込むのは難しいということは、かなり早い段階で判明していた。
■ライバル・ホンダの次の一手
今回の技術発表で力説されていたのも、非ハイブリッド車の性能を高めることの重要性だった。内山田氏が昨年、経団連の副会長に就任し、トヨタの研究開発部門に対する圧倒的支配力が少し薄れたことが、バランスを少し取り戻させることにつながったとみることもできる。
トヨタがバランスを取り戻したことは、エンジンの熱効率向上技術で先行していたマツダ、ホンダにとっては少なからず脅威だが、より大きな影響を受けそうなのはホンダだ。マツダはエンジン技術だけでなく、デザインも含めて総合的な付加価値を高め、ブランドを強化しようとしているのに対し、ホンダはハイブリッドを含めた環境技術を軸に、トヨタと真正面から対抗する戦略を取っているからだ。
もっともホンダも、「排気量の小さなエンジンについてはターボを使った高効率化はやらない」(エンジン開発エンジニア)というトヨタと異なり、排気量1リットルで1.8リットル並みの性能と高効率を両立させるものなど、次世代ターボエンジンを遠からず出す計画であるなど、次の一手を準備中だ。今後、ますます激しさを増すエコカー戦争。今後の展開から目が離せない。
ジャーナリスト 井元康一郎=文
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