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財政健全化には、消費税10%よりも減税 狭い視野で、国の財政問題を論じるな
http://toyokeizai.net/articles/-/35155
2014年04月14日 村上 尚己 :マネックス証券 チーフ・エコノミスト 東洋経済
前回のコラム「消費増税を急げば、財政健全化はできるのか」では、どうしたら、税収が増えるかを説明した。すなわち、日本経済がデフレから抜け出し、同時に労働市場で人手不足が恒常化するような、「経済正常化」を実現する過程で、はじめて日本の税収は大きく増えるのである。
現在は、こうした正常な経済状況に戻す努力が、ようやく始まったかどうかというところだ。にもかかわらず、日本の財政赤字や公的債務が「深刻だ、危機的だ」と論じていいのかどうか。筆者は、そう簡単に判断できないと考えている。
■本当に消費増税は、必要だったのか
実際、2000年代の小泉政権による経済政策運営においても、「デフレからあと一歩で抜け出す経済状況」が実現しただけで、増税前の税収構造で財政赤字はかなり縮小した。
それは、税収と財政赤字を比較した右のグラフをみれば、明らかである。
また2011年の東日本大震災の後も、実は日本政府の歳出は相当抑制されていた。このため、インフレ実現と経済正常化による税収底上げで、仮に消費増税が実現しなくても、2013年からの脱デフレを伴う景気回復で、財政赤字は2000年代半ばと同様に改善する可能性は十分あった。
ただ、アベノミクスで公共投資を中心に政府の歳出が上積みされたため、徹底的な歳出抑制が続いた2000年代とは異なっている。実際には、4月に実施された消費増税は、公共投資上乗せなど、公的部門の権益拡張を伴う歳出拡大に充当されている面が大きいようだ。消費増税が決まってから、社会保障サービスの拡充などの具体的な歳出拡大は、ほんのわずかしか決まっていない。
アベノミクスにおける第2の矢を「財政政策全般」と考えれば、経済正常化につなげる政策として機能しているとは言い難い。1)消費増税が経済成長率を下押しし、脱デフレを妨げている、2)景気対策として、供給不足が明らかな建設業などへの偏った歳出(公共投資拡大)が実現した、という2つの点で、「第2の矢」は弊害の方が大きくなっている。
■公共投資に偏らず、減税や給付金などの財政刺激策を
結局、2014年もアベノミクスは第1の矢である金融緩和政策頼みの状況である。このように書くと、メディアでよく聞かれる、「金融緩和頼みでは、アベノミクスはもう限界」「成長戦略が必要」などと考える方もいるかもしれないが、筆者は全くそのように思っていない。
そもそも、2013年に普通の中央銀行になった日本銀行が目指すインフレ安定化は依然実現していない。マクロ安定化政策で最もパワフルな政策ツールは金融政策であり、インフレ安定化が実現していないのだから金融政策頼みというのは当然だ。2014年度は財政政策が景気回復を抑制する方向に作用するのだから、なおさらである。
もし、消費増税が後戻りできないなら、脱デフレを後押しするために、公共投資に偏らない、減税や給付金などの財政刺激策が2014年も実現するのが望ましい、と筆者は考えている。
ただ、いまは、「増税を既定路線化させようとする勢力」が発している、「日本の財政状況が危機的と断定する論調」が主流となっている。4月から消費増税が始まったばかりだが、すでに10%への税率再引き上げの決断を巡る攻防が水面下で活発になっている模様だ。
本来、メディアはこうした政策をめぐる議論を吟味しながら、国民に有用な情報を提供することが期待されている。だが残念ながら、メディアには真の情報を見分ける能力があまりない。財政状況に関する数字などを並べられ、「国の借金が多い」などと解説されると、それが説得力のあるように伝えてしまう。
本来なら、政府部門は、本質的に企業や家計などと全く異なる性質を持つ。でも、国は「債務超過」「借金過多」などと表現され、多くの国民は、それが深刻な問題と感じてしまう。
実際には一国の経済全体は、政府部門だけで成り立っているわけではない。家計、企業など民間部門の経済行動を合わせて、「国の借金」を考えなければ問題の本質は見えてこない。
政府部門が債務超過という診断があったとしても、税制の問題かもしれないし、家計・企業を含めた一国全体の経済状況の問題かもしれない。財政の専門家は、政府部門だけにフォーカスして財政赤字を論じるので処方箋はシンプルで、ともすれば、税制変更(増税)や歳出抑制だけになる。
一方、政府部門の財政赤字の問題は、一国経済全体の広い視点でとらえ、処方箋を考えることができる。日本の財政赤字をそう考えると、財政健全化が仮に必要としても、増税以外の政策(経済成長率押し上げ)がベストの政策選択である可能性が高い。先に示したように、財政赤字と税収の推移をみれば、民間の経済成長に大きく依存している税収が、増税なしで大幅に改善する余地があることは明らかだ。
一国経済全体のパフォーマンスは突き詰めると、民間の経済活動によって決まる。民間主導で経済活動が活発化することによって、政府の財政赤字を減らすことにつながる。そうした幅広い視点で、いわゆる財政の問題が議論されることが、最近は少なくなっているのではないか。
2000年代半ばに小泉政権下で経済財政政策が議論された時には、成長率・金利論争が繰り広げられるなど、幅広い視点で、真剣に日本の経済政策について議論が行われていた。消費増税の再引き上げが視野に入っているが、そうした幅広い視点で財政問題が再び議論されれば、日本経済の復活はより確実になるだろう。
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