01. 2014年4月14日 07:19:17
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http://diamond.jp/articles/print/51575 【第153回】 2014年4月14日 週刊ダイヤモンド編集部企業と消費者の騒乱招いた消費増税という「春の嵐」 1997年4月以来、17年ぶりとなった消費増税。直前まで対応に大わらわとなった企業の姿と、万全を期していたはずのシ ステム更新作業などで、トラブルが相次いだ現場の混乱ぶりを追った。 「申し訳ありません。20日に、いったん家の鍵をお渡ししたいのですが」 「完了検査の手続きは大丈夫なんでしょうか」 「実際はしない人も多いので、問題ありませんよ」 3月以降、こうした住宅の引き渡しにおける顧客と業者との間のやりとりをめぐって、実は全国でトラブルが相次いで いる。 背景にあるのは、4月1日の消費増税だ。住宅の購入は、昨年9月末までの契約であれば、4月以降の引き渡しであって も税率は5%のまま。だが、昨年10月以降の契約の場合、3月末までに引き渡しが完了しなければ、税率は8%になってし まう。 業者側が3月末までの引き渡しを条件に契約していた場合、建築の遅れによって余計に発生する3%分の負担は、通常 は業者側が負うことになる。 冒頭のやりとりは、業者が余計な負担を回避しようと、書類上だけでも建築が完了し3月までに引き渡したことにする ために、顧客に鍵をいったん手渡し、代金を振り込ませようとしたケースだ。 本来、住宅を顧客に引き渡すときは、建築基準法に基づき、役所や指定機関による建築の「完了検査」などが事前に 必要となる。 しかし、業者側はその手続きをあたかも不要のように説明し、顧客が知らぬ間に放置したことで、後日役所から「必 要な申請が来ていない」と指摘を受け、問題が表面化しているのだ。 では、なぜそれほどまでに住宅建築の遅延が発生しているのか。要因は大きく三つある。(1)想定を超える駆け込み 需要(2)慢性的な職人不足(3)建築資材の不足──だ。さらに今回は、寒波と大雪が追い打ちをかけた。 キッチンが届かない──。建築現場から、そうした悲鳴が上がったのは2月下旬。システムキッチン製造の主力拠点と なるLIXILの深谷工場が、大雪によって屋根が損壊。一時稼働できない状態になり、納期が大幅に遅れてしまったのだ。 キッチンが設置できないと、配水といったほかの工事も進められない。そのため建築がさらに遅れるという、一部の 業者にとっては悪い要因が重なってしまった側面もある。そうした増税に伴う混乱は、何も住宅業界に限った話ではな い。 ヤマト運輸は、「連休明けの3月24日から、駆け込み需要で荷物量が急激に増えた」ことで、大都市圏を中心に半日か ら1日の配送遅延が発生した。 同社では3月の需要増を見込んで、年明けから人員や車両の手配を進めていたという。その一方で、引っ越しの需要増 で業者の手配が難しくなった単身世帯などが、代替として宅配便を使うようなケースもあり、作業が煩雑化したことで 混乱が広がった。 鉄道など交通機関では、増税に伴う切り替え作業で、人為的なミスが相次いだ。 東日本旅客鉄道では3月下旬、東北本線の一部区間で、4月の増税以降の運賃を誤って表示。京浜急行バスや神戸市バ ス、宮崎交通など各地のバス会社でも、運行する一部区間で増税後の運賃を誤表示していたという。 3月に増税の「フライング」が起きたのは、どの会社もシステム切り替え作業における、設定ミスというお粗末なもの だ。 価格変更に伴うシステム更新で、大きなトラブルに見舞われたのが、食品スーパーのいなげや。 増税後の価格がレジに正確に反映されないという事態が1日に発生し、全137店舗のうち、106店舗で午前11時の開店に 間に合わず、44店舗が終日閉店するという事態を招いた。 4月以降、需要の「反動減」が見込まれる中で、来店した貴重な顧客に無駄足を踏ませた影響は、決して小さくない。 消費税が3%から5%に増税された17年前には、まだ普及していなかったインターネット通販でも、やはり混乱は見ら れた。 楽天は1日、サイト上で増税前の価格と、増税後の価格が一時混在する状況に陥った。出店者に、価格表記を変更する タイミングや変更作業を、ほぼ「丸投げ」したことで、対応にばらつきが出てしまったためだ。担当者があわてて出店 者側に表示変更を促すなど対応に追われたが、検索結果にも影響が及ぶ状態がしばらく続いた。 企業に襲いかかる 駆け込み需要の 反動減の恐怖 消費増税前後のドタバタに一息ついたのもつかの間、早くも企業には駆け込み需要の「反動減」が、試練として襲い かかっている。 ハウスメーカー大手の積水ハウスは、今年2月の注文住宅の受注金額が、前年同月に比べ32%も減少した。住宅の駆け 込み需要は、増税の経過措置の適用期限だった昨年9月までだったため、他の業界を先取りするかたちで、反動減が顕在 化した格好だ。 自動車業界も見通しは暗い。日本自動車工業会によると、2014年度の国内需要は、前年度比15.6%減の475万台を見込 む。リーマンショックで落ち込んだ需要が徐々に回復し、12年度、13年度と維持してきた500万台の大台を割ることにな り、「400万台市場を前提に経営しなければならない」(自動車メーカー幹部)事態になっている。 イオン幕張新都心店(千葉県千葉市)では、消費増税に伴って、約800人の従業員を総動員し、食品や衣料など約12万品
目で、値札の切り替え作業に当たった Photo by Masaki Nakamura 小売り大手のイオンでは、4月と5月の反動減は避けられないものの、駆け込み需要のあった3月を合わせた「3カ月間 の売り上げは、前年同期と同じ水準を見込んでいる」(北田稔・イオンリテールベイエリア事業部長)という。その後 も影響は長期化しないと、見通しは強気だ。 折しも、今春は大手企業で賃上げ(ベースアップ)の動きが広がり、消費の底上げで反動減が最小限にとどまること への、期待は大きい。その一方で、積極的にお金を使うほど、来年10月の消費増税が避けられなくなるという「矛盾」 を、消費者は徐々に抱え始めている。 (「週刊ダイヤモンド」消費増税取材班) |