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2014年04月10日
中村 繁夫:アドバンストマテリアルジャパン代表取締役社長
久しぶりに香港や深圳のレアメタルトレーダーと会って、旧交を温めている。
20年前はお互いにハングリーだった。彼らも、若さにまかせてスペキュレーション(投機)に近いことでも、マニピュレーション(市場操作)まがいのことでも、平気でチャレンジしていた連中である。
■旧友が断言「バブル崩壊は、まだまだ先の話」
香港のレアメタルトレーダーといえば、20年前なら知っている連中だけでも20社ぐらいは活躍していたものだ。だが、今や数えるほどしか生き残っていない。香港に残ったのは単なる金融機能だけで、貿易にかかわる機能は中国国内に移ったのだろう。それでもしぶとくサバイバルできたのは、専門性のある特殊な分野に特化して、グローバルに取引を展開してきた連中だけである。
彼らメタルトレーダーも、今や50代の半ばから還暦を迎えている。今までガッツリ儲けており、彼らの資産は、といえば、最低でも1億人民元(約16億円)以上はあるだろう。おきまりの話だが、息子や娘たちは、英国かカナダやオーストラリアなどに留学させ、すでに資産は国外に逃避済みのはずだ。すでに留学から帰ってきて親父の事業を引き継いでいる息子もいる。本人は、香港や中国内にあわせて5軒ないし6軒のコンドミニアムや不動産をもって、悠々自適の生活を楽しんでいる。
百戦錬磨の彼らは、いわば現場の景気の流れを最も敏感に感じている連中のはずだ。その彼らと意見交換では、「仮にあったとしても、『中国バブルの崩壊』はまだまだ先の話だ」との意見なのである。
彼らのような富裕層が例外なく強調するのは、「不動産の資産価値が崩れない限り、中国経済は安定している」ということだ。「中国政府は国家の威信にかけても、不動産の下落は阻止する。だから問題はない」と言い切るのだ。
当然ながら、彼らは、理財商品のデフォルトが起こっていることは重々承知だ。だがそれは小さな規模であり、中国経済全体に影響を与えるものではないという意見なのだ。彼らほどリスクに敏感なプロが、なぜこれほど楽観的になれるのか。これを深掘りしてみたい。
今回は2人の旧友に会ったのだが、まずはスティーブン・チュー(62歳仮名)からご紹介しよう。彼は、広州出身の香港トレーダーである。ゴルフ三昧で毎週2回は、香港の名門ゴルフコースで楽しんでいる。仕事はアメリカ帰りの息子に任せて自分はレアメタルの国際会議のはしごをしながら、世界各地の名門コースを回っている。彼に、中国の富裕層がどのように蓄財しているのかを聞いてみた。
彼によると、富裕層(一般的に1億元以上の資産家をさす)は、おおよそ4種類に分かれるという。1)まず政府関係者で利権を握って、賄賂をもらった連中。何もしなくても不動産でも家でも車でも手に入れることができる。こうした富裕層が約2%はいるという。
2)次に、これらの政府関係者に取り入って、安く国家の土地や資産を分けてもらう連中。これが5%くらい。
3)さらに、不動産会社を経営してきた連中が同様に2%くらいいて、4)最後に個人事業主で成功した連中が20%くらいいる、というのがスティーブンの分析である。合計すると、約30%近くになるので多すぎるのではないかと指摘すると、「大都市に住んでいる住民の中の、金持ちグループの比率だから」こんなものらしい。
「全国規模で言えば、その3分の1」だというが、それでも13億人のうち、1.3億人がお金持ちということになる。実に、日本の人口以上の金持ちが存在するという計算だが、にわかには信じられない。
さて、もう一人の友人はダニエル・チャン(52歳仮名)である。彼もレアメタルトレーダーでは立志伝中の人物だが、彼はケミカル分野で日本企業の代理店になって大儲けをしてから、レアメタルの世界に入ってきた香港トレーダーである。息子が英国の大学から戻ってきており、その息子に経営の勉強をさせている。
ダニエルは人柄が良すぎて今まで二人の部下に裏切られたので経営は身内だけで固めるようだ。彼にも中国人の資産家がどのように蓄財したのかを聞いてみた。
彼の見方は、大都市に住む富裕層には100億元(1600億円)以上の資産家が5〜8%もいて、10億元(160億円)以上の資産家は15%、1億元クラス(16億円)の資産家は20%、1000万元(1.6億円)クラスならば、あふれるほどいるというのだ。
彼のあげる数字も「大都市部(北京、上海、広州など)の有力者」に限った話だろうから、全国規模では話を相当割り引いて聞かなければならないだろう。が、それでも、ニューヨークタイムズが、中国の温家宝前首相一族が約2800億円もの巨額の蓄財をしているなどといった報道などを耳にすると、普通の富裕層など大したことではないという気がしてくる。
彼によると小金持ちの類なら、大都市部には限らない話だという。たとえば、深圳の農家でも家と土地とアパートをいれると、資産3000万元(4.8億円)程度の農家はザラにいるから、このレベルは「中国の資産家」としては、普通の話だとのことだ。10年前と比べると不動産の価値は、場所によっては約10倍前後にも膨れ上がっており、成金の中核は、2004年前後の最初の不動産ブームの時に土地を買った連中だ、という。
■年収の100倍のマンション!?
友人のチャンの推察は信憑性があるだろうか?わが愛する北京支店の、呉塵くん(過去のコラムにも何度か登場)にも、話を聞いてみた。中国でいう大金持ちとは、前出のように、一般的に1億元(16億円)の資産家を指すので、確かにこの程度の土地成金はザラに居るという。
10年前なら、たとえば北京の1平方メートルあたりの価格は5000元ほどで、130平米の物件を買うと65万元(約1千万円)であったが、この物件が場所によっては今や10倍の650万元(約1億円)になったというのが実態らしい。
運よく、値上がりの波に乗った成金たちは不動産物件を次々に担保にして、新規物件を手に入れるからスティーブン・チューやダニエル・チャンの様に5軒から6軒のコンドミニアムや不動産を所有しているのは、別に不思議なことではないだろう。
もちろん、北京の130平方メートルの物件(650万元、約1億円)など、普通のサラリーマンが簡単に買えるわけはない。一般のサラリーマンの現在の月給は、約5000元(8万円)だから年俸は約6万元(約100万円)である。
ということは、この物件を新たに買えば、100年間「飲まず食わず」で返済することになる。ここ数年の値上がりが異常であり、給料は上がっているとはいっても、土地バブルには到底追いつけない。ゆえに法人や政府の関係者などは別として、普通なら、高級新築マンションを買う人は、いないというわけである。
一方の富裕層は、カネを寝かせておいても仕方ないので、次々に不動産やアパートを取得するという繰り返しをしているだけで、資産が売れるか売れないかはあまり気にしてない金持ちが多いようだ。
いわば、彼らの発想は、典型的な成金のそれであり、10年で10倍になった不動産は「濡れ手に粟」のようなものだから、手元に現金があるわけではないが、多少のデフォルトがあっても大したことではなくて、自分に影響が及ぶとは、ほとんど考えていないようなのだ。
現在の中国の住宅や不動産の需給は完全にミスマッチなのだが、中国全体が浮かれているので、(自分だけは特別で)バブルの崩壊は中国では起こらないと自分に言い聞かせているようにも聞こえるのだ。
ただ、2008年のリーマンショックと違うのは、中国では国営企業の援助などがあり、キャッシュで不動産を買っているといわれる構造である。一般庶民も家を買う場合は、少なくとも形式的には最低でも2割以上の現金が必要だ。住宅を購入する際の一般的なケースは、「2割自己資金、5割が親類や会社からの補助、残りの3割が金融機関からのローン」だが、金融機関の信用の補完も柔構造になっているから、不良債権問題が深刻化するには、意外に時間を要するのかもしれない。
しかし、聞けば聞くほど、不思議な話であり、何か1980年代後半の日本の不動産バブルのころを思い出してならない。
バブルという代物は、必ずいつかは弾ける。遅れれば遅れるほど、風船は膨れあがり、爆発する時の影響は甚大である。これから次々に起こるであろう、社債や理財商品のデフォルトが中国社会にどのような影響を与えるのだろうか。一寸先は、暗闇である。このような状況は、嘆かわしいといえば嘆かわしいと憂慮せざるを得ないものの、「チャイニーズ・アズ・ナンバーワン」と中国人に言えば、彼らは本気でそれを信じるのが今の中国である。
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