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日本企業から最高のサービスが失われていくメカニズム〜クレーム対応向上の代償
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140413-00010000-bjournal-bus_all
Business Journal 4月13日(日)8時23分配信
米国企業では、最高のサービスを象徴する事例が社内で伝承されていることが多い。
百貨店のノードストロームでは、気に入った靴を購入しようとしたがぴったりのサイズを切らしていることを知った顧客に対する、伝説のサービスが伝承されている。その現場の従業員は、「ぴったりのサイズの靴を探してみます」と言って、近隣のいくつかの店舗に電話をして、そのサイズの靴を探した。その上で、「よろしければ今から取りにいって参りますので、その間、店内で別のお買い物を済まされてはいかがでしょうか?」と顧客に提案したという。感激した顧客は、他の売り場でたくさん買い物をしたうえで、もちろんこの靴も購入し、自宅に帰った。その後も、ノードストロームの大切なお客様であり続けているという。
米国のレンタカー会社ナショナルレンタカーには、こんな伝承がある。出張で空港のレンタカー事務所に到着したある顧客が車を借りようとしたのだが、残念なことに数日前に免許証の期限が切れていた。「申し訳ありませんが、免許証が切れているお客様に車を貸し出すことはできません」。法律面でも保険の面でも、できない規則なのだそうだ。しかし、アメリカでは車がなければ予定した出張がこなせない。困りきった顧客に対して、「しかし車で目的地までお送りすることはできます」と事務所のマネジャーが提案をした。
運がよいことに、この顧客の運転免許証を発行した場所と、この空港は同じ州にあったため、出張での最初のアポイントを済ませた後、ナショナルレンタカーのマネジャーはこの顧客を運転免許証事務所まで送った。無事免許を更新し、車も借りることができ、この顧客はそれから後の出張業務も無事にこなすことができた。これだけのサービスをしながら、マネジャーは、免許が無事ととのった後のレンタカー料金以外の請求をしなかったという。感激した顧客は、ナショナルレンタカーのCEOに感謝の手紙を書き、以来、この話は社内でことあるごとに伝承されているという。
●不満を感じるクレーム対応、その共通の原因とは?
さて、従来、日本企業は「商品は優れているが、サービスは米国企業から学ぶことが多い」といわれてきたが、最近はこの差が狭まるどころか広がる傾向がある。
実はあるメカニズムが理由になって、日本企業は最高のサービスを失いかけているのだ。
筆者個人の経験で、ここ数カ月の短い間に日本のいわゆる大企業の商品やサービスへのクレーム対応で、非常に不満が残る経験を3度もしている。最初は個別の問題だと思っていたが、あとから振り返ると、どのケースにも共通の原因がある。
どのような不満体験かというと、例えばある場所で宴会の幹事をしたのだが、あらかじめインターネットサイトで調べて申し込んでおいた割引サービスが受けられなかった。「なぜ割引が受けられないのか?」と訊ねたところ、どうやらサイトの記述を間違えていたのである。間違いなのだが、お店の現場では割り引くことができないので、申し訳ないが了解してほしいということを、店長が何度も頭を下げて私に謝ってくるのだ。
あるメーカーの商品を購入した際には、ホームページ上で確認した追加特典が実際にはついていないことが購入した後にわかった。カスタマーセンターとメールのやりとりをしたが、結局、この追加特典は提供することができないという。これ以上どうしようもないという話で、どちらも筆者は泣き寝入りをすることにした。どちらも1万円以内の損害なので、それ以上のコストはかけたくなかったという事情もある。
その上で、冒頭のノードストロームやナショナルレンタカーの例とは逆に、顧客としての筆者は、二度とこれらの企業は使わないと決めてこの話は終わりにしている。
●現場から奪われる権限
さて、以上の事例から、日米では何が違うのかを考えてみると、一言でいえば「現場に権限があるのかどうか」である。
世界で最高のサービスを提供することで知られているホテルのリッツ・カールトンでは、現場の従業員一人ひとりに1000ドル(約10万円)の決済権限があるという。ノードストロームやナショナルレンタカーがどういう規則になっているのかは詳しくは知らないが、どちらの例でも従業員が一人、お客様のために数時間も現場をあけて奉仕する判断が即断でできるようになっているわけだから、最低でも1万円相当のコストをお客様に対して判断できる権限を持っているということだろう。現場に一定の権限があるからこそ、感激を生むサービスが提供できる。
ひるがえって日本企業を見ると、現場判断の権限をはく奪する傾向がある。これはサービスを設計する側を知っている筆者は理解できるのだが、現場がうかつにサービスを提供してしまうと、それがインターネット上で話題になって、他の消費者が別の店舗で同じようなサービスを強要するようなことが起きるリスクがある。
ゲーム会社に対してクレームをすればポイントがもらえるという情報や、商品をレシートなしで返品してもらえるという情報などが瞬時に日本中に知れ渡る状況にある。だから事業責任者は、「そのような判断は現場ではせずに、本社に判断を仰ぐように」
と指示をするのである。結果としてモンスタークレーマーへの対応も上手になり、タダ乗りユーザーへの出費は減っている。
だが、同時に、会社の手違いで損を被った普通の顧客の不満は増えている。増えているだけでなく、そのことで離れていった顧客が何人いるのか、その数字は会社には見えてはいない。
鈴木貴博/百年コンサルティング代表取締役
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