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スカイマークの誤算〜競争激化で赤字転落、相次ぐ路線撤退と就航延期、ミニスカ制服不発
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140412-00010000-bjournal-bus_all
Business Journal 4月12日(土)7時38分配信
今、国内航空会社の中で何かと世間を騒がせているのが、中堅航空会社のスカイマークだ。
同社が昨年12月、今春から国内線に導入するエアバス社の中型旅客機「A330」のお披露目会で、A330が就航する路線で半年間、客室乗務員の制服にミニワンピースを採用すると発表し、賛否両論の議論を巻き起こした。ほとぼりが冷めかけた今年4月1日、今度はA330就航予定の3路線で、客室乗務員がいわゆる「ミニスカ制服」を1日限定で着用すると同社が発表。その姿を撮影しようとメディアが空港に殺到し、大騒ぎとなった。
この騒ぎに困惑しているのが、当のスカイマークだ。「ミニスカ制服」着用の本来の狙いがそれてしまったからだ。同社が導入するA330は全271席がシートピッチ(座席間隔)の広い「グリーンシート」で、エコノミー席はない。同社の通常の制服はパンツとポロシャツで、ミニスカ制服はA330のグリーンシート宣伝が目的。5月31日に就航予定の羽田-福岡線を皮切りに、9月からは羽田-那覇線、15年1月下旬をめどに羽田-札幌線と、今年3月末から新たに割り当てられた羽田発着枠3路線で、A330就航から半年間ずつの限定で着用する。
同社がグリーンシートのモデルにしたのは「クラスJ」。JAL(日本航空)の国内線エコノミークラスで、1000円の割増料金を払うと座れるエコノミー上級席だ。シートピッチと機内の快適度は正比例の関係にあるといわれる。エコノミークラスのシートピッチは31-34インチ(79-87cm)。対してクラスJのシートピッチは38インチ(約96.5cm)。グリーンシートのシートピッチもこれと同じだ。同社が現在運航中のボーイング社「B737」(177席)や、JALとANA(全日本空輸)が採用しているエコノミークラス席の31インチより広い。
供給過剰といわれる国内幹線で空席が目立つのはエコノミークラス席で、クラスJ以上の座り心地の良い席は満席になることが多い。「大手航空の快適さを半額で」がグリーンシートのキャッチフレーズだった。
しかし、同社より早く「安くて快適」を売りにし、革張りシートや座席の広さを打ち出した中堅航空会社のスターフライヤーは苦戦を強いられている。その原因が認知度の低さとされている。同社関係者は、「一般利用客が飛行機に乗る時、思い浮かぶ名前はJALとANA。スターフライヤーは実際に空港に行ってみて『こんな会社もあるのか』と思ってもらえる程度」と苦笑する。同社の売りは、なんらかのきっかけで実際に乗ってもらわないと、その良さが一般利用客にわかってもらえない。スカイマークは「それなら、一般利用客が乗りたくなるような仕掛けをすればいい」と考え、それが期間限定のミニスカ制服着用の狙いだった。
ところが、ミニスカ制服が狙い通り話題になったものの、肝心のグリーンシートはほとんど話題にならなかった。航空業界関係者の間では、早くも「13年3月の関西国際空港撤退に匹敵する誤算」との声も上がっている。
●相次ぐ就航延期と路線撤退
同社の見込み違いは、グリーンシートだけではない。A330の羽田-福岡線就航はもともと3月だったが、それを4月18日に延期したのも束の間、整備規定の不備が明らかになり、5月31日に再延期する事態となった。
同社は今年1月末、14年3月期としては2度目の業績見通し下方修正を発表した。同期決算の売上高予想は前期比微増の864億円だが、従来予想の911億円から47億円引き下げた。営業損益予想は20億円の赤字(前期は47億円の黒字)で、従来予想の23億円の黒字から一転、5期ぶりの赤字転落見通しになった。最終損益予想は10億円の赤字(前期は38億円の黒字)。こちらも従来予想20億円の黒字から5期ぶりの赤字転落見通しとなった。
赤字要因の1つはコスト高。円安の影響で燃料費などのコストが大幅に増加しているが、これは業界全体に言えることであり、同社だけの悩みではない。
それより深刻なのが競争激化だ。特に主力の成田路線が窮地に追い込まれている。12年からLCC(格安航空会社)3社が成田路線に相次いで就航し、スカイマークを下回る低運賃で同社利用客に攻勢をかけているからだ。このため、同社の成田路線は搭乗率も平均単価も悪化し、今年3月末で成田-旭川など5路線から撤退した。
●消耗戦脱出の切り札で痛手
さらに、昨春の羽田発着枠拡大により各社が増便を打ち出したため、「ドル箱路線」と呼ばれている羽田路線が供給過剰気味になっている。業界関係者は「ドル箱路線はもとより、今や国内線の大半が消耗戦状態」という。
スカイマークにとってA330は、この消耗戦から脱出するための切り札になっている。LCCは格安運賃で大手・中堅と戦うため座席数を最大にし、機内の快適性を犠牲にしているのに対して、スカイマークは大手の半額近い低運賃を堅持しつつ、大手のエコノミークラス以上の快適性を打ち出すことで、大手にもLCCにもない新たな優位性を獲得しようとしている。それだけにA330の就航再延期はかなりの痛手であり、ミニスカ制服着用の奇抜な宣伝も賞味期限切れになってしまう恐れがある。
ミニスカ制服の話題で良くも悪くもスカイマークの認知度は高まっているが、それを実際の利用者増へいかに誘導していけるのか。苦労してつくった話題もそれだけで終われば、今年中に予定している最後の頼みの綱、国際線進出(成田-ニューヨーク線)も空振りに終わりかねない。
同社はどこで誤算続きに終止符を打てるのか、今年はその正念場になりそうだ。
福井晋/フリーライター
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