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第一三共、失策続きの6年に終止符 印子会社を実質売却 [日経新聞]
2014/4/8 0:53
第一三共が子会社でインド後発医薬品大手のランバクシー・ラボラトリーズの実質売却を決めた。伸びる後発薬展開の切り札として5千億円で買収してから6年。肝心の「虎の子」は品質問題の影響で本格的な親孝行を果たせないまま、インドの後発薬大手に吸収される。失策続きの6年にようやく終止符を打つ格好だが、成長の青写真は描けないままだ。
ランバクシーは同じ印後発薬大手、サン・ファーマシューティカル・インダストリーズに年末をめどに吸収合併される。ランバクシーに約63.4%出資する第一三共は株式交換の形で、サンの約9%の株主となる。合併会社はインド最大の製薬会社、後発薬で世界5位の大手となるものの、第一三共の経営への関与度は大きく下がる。
「買収で得たものは大きい。取り返せると思っている」。7日夕に開かれた記者会見。第一三共の中山譲治社長は「買収は失敗か」との質問に繰り返しこう述べた。
買収で後発薬のビジネスモデルや新興国で事業展開するノウハウを学べたというのが、同社の見解。だが中山社長の言葉とは裏腹に、買収後の株価急落による評価損や、インド工場の品質問題による米政府との和解金など、計上した損失額は計約4500億円に上る。
第一三共によるランバクシー買収は出だしからつまずいた。2008年6月の買収合意直後に主力2工場の品質問題が発覚。米食品医薬品局(FDA)から米国への製品輸出禁止措置を受けた。社内で買収へ反対論も出たが、結局押し切った。
それだけではない。第一三共は経営陣を送り込むなどランバクシーの品質問題に対処してきたが、「現場レベルまで行き届いた指導がなされなかった」(同社幹部)。改善策の徹底が遅れ、FDAの不信を募らせた。
「窓からハエが飛来している」「錠剤に異物が入っている」。現地ではランバクシーの工場の品質問題を巡る報道が続く。FDAは昨秋に後発薬を生産するモハリ工場、今年1月には原薬を生産するトアンサ工場にも禁輸措置を出した。最大の米市場への供給を絶たれ、ランバクシーはいよいよ窮地に陥った。
サンとの交渉が始まったのはこの頃だ。
社内抗争も勃発
「うちにやらせてもらえないか」。かねてランバクシーとの連携を探っていたサンのディリップ・サングビ社長が中山社長に合併を打診。追い詰められた第一三共とランバクシーにとって「渡りに船」の提案だった。
第一三共側が受け入れたのには別の事情もある。社内の勢力変化だ。
今回サンとの合併を主導したのは中山社長、財務担当の坂井学取締役、研究開発担当の広川和憲取締役の3人。いずれも第一製薬出身だ。ランバクシーの買収を主導した旧三共の庄田隆会長は外されていたという。
「ランバクシーは旧三共案件」が社内の共通認識。「買収を決めた当事者は何をやっているんだ」(旧第一OB)。社内外からは庄田会長の責任論も高まっていた。
05年に「対等の精神」で合併した第一三共だが、実態は旧第一と旧三共の勢力争いが続いている。今回の幕引きを主導したことで旧第一主導の体制が明確になったが、意思決定を速めるまで6年の歳月を無為にした。
迷走の末にランバクシーの実質売却に踏み切った第一三共。会見では今後も後発薬事業を強化する方針を強調した。
後発薬見直し
中山社長は「年末までに(約9%出資予定の)サンと事業提携に向けた具体的な内容を詰めたい」と説明。インドで電話会見を開いたサンのサングビ社長も「第一三共との提携関係は維持し、重要な株主として関係を深めたい」と述べた。
米調査会社IMSによると、世界の後発薬市場は12年の1990億ドルから、17年に3360億ドルに膨らむ見通し。先進国の医療費の抑制や新興国の需要増などが背景だ。
ただ、特許や国の規制に守られ高い利益が見込める新薬ビジネスと違い、新薬の特許切れすれすれのタイミングで発売する後発薬は低コストの生産体制とスピードが成功のカギを握る。競合も多く、新体制で世界を攻略できるかは未知数だ。
FDAの禁輸措置の行方も予断を許さない。サンのサングビ社長は「新会社では法令順守を徹底する」と強調した。だが実はサン自身、3月に西部グジャラート州の工場がFDAから禁輸措置を受けており、品質管理の改善はなお不透明だ。
7日の東京株式市場で第一三共の株価は3%高の1813円で取引を終えた。「業績悪化リスクが後退した」(松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリスト)と、「止血策」にまずは好感した格好だ。
ただ新興国戦略の要を手放したことは、中長期の海外戦略を一から練り直せばならないことを意味する。製薬業界の競争環境が激変する中、いたずらに時を費やした第一三共。失った6年の痛手はあまりにも大きい。
(佐々木元樹、堀田隆文)
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDZ070FX_X00C14A4TJ2000/
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第一三共、インド後発薬を実質売却
事業拡大見直し、同業大手が吸収合併
第一三共はインドの後発医薬品子会社ランバクシー・ラボラトリーズを実質売却する。7日、同国最大手サン・ファーマシューティカル・インダストリーズによるランバクシーの吸収合併で合意したと発表した。2008年に約5千億円で買収したランバクシーだが品質問題で最大市場の米国に輸出できなくなっていた。実質売却で後発薬事業を大幅縮小する。日本の製薬大手の海外子会社のマネジメントの課題が改めて浮き彫りになった。
合併後のサン・ファーマの売上高は約3800億円で、世界5位の後発薬メーカーになる。合併は株式交換方式をとり、第一三共はランバクシーに約63.4%出資していたが、サン・ファーマへの出資比率は約9%に低下する。ランバクシーを通じて手がけてきた世界での後発薬事業の拡大戦略は転換を強いられる。
国内製薬大手は00年代後半から、海外製薬企業のM&A(合併・買収)を進めてきたが、企業文化や商慣行の違いからうまく生かせていない。武田薬品工業も11年に約1兆1千億円で買収したスイスのナイコメッドなどのコスト管理を徹底できず、本体の最高執行責任者(COO)に英医薬大手出身のクリストフ・ウェバー氏を招くことにつながった。
ランバクシーはインドの工場で低コストで生産した後発薬を米国など世界で販売し成長。第一三共は後発薬事業の世界展開のため08年に買収した。
だが直後に工場の品質問題で米食品医薬品局(FDA)から主力2工場が禁輸措置を受けた。インドで生産した原薬を米国に輸出し現地で最終製品にして出荷する施策に切り替え、米国事業の継続を目指した。さらに原薬工場と他の1工場も禁輸措置対象になり、主力の米国向けビジネスモデルが機能しなくなった。
第一三共は米国での事業再開に時間がかかることなどを踏まえ、早期解決は難しいと判断。連結対象から切り離し、問題が業績に与える影響を最小限に抑える。第一三共の後発薬事業は規模の小さい国内が中心になる。
ランバクシー買収についてサン・ファーマのディリップ・サングビ社長は同日の電話会見で「ランバクシーは東南アジアなどの新興国にも強く、サン・ファーマにとって補完性がある」と狙いを語った。
サン・ファーマは1983年創業で近年は毎年のように国内外で買収を繰り返し成長。13年3月期の売上高は約1123億ルピー(1932億円)。
米研究機関IMSインスティチュートによると、11年に2420億ドルだった世界の後発薬市場は、16年に4千億〜4300億ドルに拡大すると予想される。
第一三共の株価は、7日の東京株式市場で一時、前週末比5%高となった。ランバクシーの実質売却で「リスク要因が減る」との見方が強まった。
ランバクシー・ラボラトリーズとは
ランバクシー・ラボラトリーズ インド後発薬大手で2013年12月期の売上高は約1060億ルピー(約1833億円)。従業員数は約1万4600人。インド国内約10カ所のほか、米国にも工場がある。米ファイザーの脂質異常症治療薬「リピトール」など大型薬の後発薬で高いシェアを持つが、インドの4工場が米FDAから禁輸措置を受けている。
[日経新聞4月7日夕刊P.1]
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