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中古マンション市場急拡大に潜む落とし穴 「新築神話」が強い日本に中古が普及。だが課題も
http://toyokeizai.net/articles/-/34636
2014年04月07日 梅咲 恵司 :東洋経済 記者
全面改装中の物件を熱心に見る購入検討客。インテリックスはこうした見学会を毎月開催している
「中古物件のマーケットデータはありますか」。ある不動産調査会社では、このような問い合わせが今年に入り急増している。昨年までは1件もなかったという。依頼主は、大手から中小まで広範囲にわたる不動産デベロッパーだ。
中古マンション市場に本腰を入れるデベロッパーが、ここに来て増えている。三菱地所や長谷工コーポレーションは従来の中古物件の売買仲介に加え、中古を買い取ってリノベーション(全面改装)後に販売する「再生・販売」事業に参入した。中小やベンチャー企業もこの分野に数多く進出している。
デベロッパーがこぞって参入するのは、中古市場が急速に拡大しているからにほかならない。
「ちょっとしたブームだと思う」。中古マンション再生・販売の大手、インテリックスの山本卓也社長は現在の市場動向についてこう語る。同社が毎月開催する説明会や見学会は、30〜40代を中心に参加希望者が絶えない。特に昨年10月以降は、定員数を大きく上回る申し込みが続く。
東日本不動産流通機構の調べによると、2013年の首都圏における中古マンション売買成約件数は、前年比5035件増の3万6432件と、2年連続で過去最高を更新した。03年から12年までの増加件数は5113。つまり、過去10年分の伸びを昨年1年間だけで上回った格好だ。
「急成長した反動が出るかもしれない」と、インテリックスの山本社長は先行きを慎重に見るが、「市場の勢いは継続しそうだ」(東京カンテイの井出武・主任研究員)とする関係者も多い。
昨年から中古マンション市場が急成長している要因は、大きく三つある。
一つは、中古に対する消費者の抵抗感が弱まっていることだ。完成する前に契約するケースが多い新築とは違い、中古は事前に物件を確認できるため、実際の住み心地が想像しやすいという安心感がある。建物の外観や共用部分の管理状態もチェックできる。大手の本格参入などにより説明会が増え、こうしたメリットが認識され始めた。
二つ目は、金融機関による住宅ローンの拡充だ。昨年半ばごろから、住宅本体とリフォームを一体化したローンが本格的に出始めた。これまではリノベーションやリフォームに関する費用は住宅ローンの対象外だったため、中古物件の購入者はフリーローンなど金利の高い商品に頼らざるをえなかった。ところが、需要増を見込んだ都市銀行などが低金利の一体型ローンを取り扱い始めたことで、消費者の資金面の不安が和らいだ。
三つ目は、割安感である。首都圏の場合、リノベーション費用を含めても、おおむね新築より1〜2割、必要経費が抑えられる。なおかつ中古は、業者が仲介する個人間売買であれば、消費税の対象外。今後は、増税の影響をまともに受ける新築に対して、価格面での優位性がさらに高まる、というわけだ。
■手抜き工事の懸念も
一方で、急拡大に伴う“ひずみ”も表面化している。
その一つが職人不足の問題だ。リノベーションの場合、風呂場から工事を手掛けていくことが多いが、ユニットバスの施工職人が足りないため全体の工事が進まない。ほかにも、内装に携わるあらゆる方面の職人数が、需要急増に追いついていない。キッチンセットやトイレなどの設備は入ってくるものの、10日ほど現場に置かれたままで、納期に遅れる事例が続出。混乱は当面続く懸念がある。
もう一つの問題が、参入企業増に伴う中古再生・販売の競争激化である。大手であれば、取引先から物件情報が数多く寄せられるため、焦って高い値段で物件を仕入れなくてもよい。ところが、新規参入企業は情報量が限定されている中で仕入れなければならないため、「無理に高い値段で買い取るケースもある」(業界関係者)。
仕入れコスト増を賄うために、「手抜き工事で施工コストを下げようとしている業者もある」(別の業界関係者)という。中古再生・販売の大手であるスター・マイカの水永政志社長は「消費者は今後、仲介会社のネームバリューだけで判断するのではなく、リノベーションを手掛ける企業の実績などを見極める必要がある」と説く。
そもそも、中古再生・販売は回転率で稼ぐ薄利のビジネスだ。売上高に対して、仕入れ費が7割、リノベーション費が1割、そのほかの費用が1割弱、発生する。つまり、粗利率は1割程度。都心部に近い物件ともなると、仕入れコストがさらにかさむ。
採算の悪い仕入れを繰り返すと、やがては資金繰りに苦しむ業者も現れる。その結果、リフォームやアフターサービスの質に支障が出れば、活性化した中古市場に冷や水を浴びせかねない。
■築後25年で建物の価値がゼロに
中期的な課題もある。中古住宅に関しては、これまで適切な評価基準が適用されてこなかった。築年数のみを基準とする方法が一般的で、これだと築後20〜25年で建物の価値がゼロになる。リノベーションやリフォームを施しても、それが住宅の価値にプラスされることはない。
中古住宅市場の活性化を目指す国土交通省は、新たな評価基準作りに着手。現在、不動産業者や金融機関関係者などを交えて研究会を実施している。国交省に対して政策提言をしている、不動産コンサルタントの長嶋修氏は、「国交省は驚くほどのアグレッシブさで動いている。14年度には新しい評価基準が策定され、15年度には業界共通のデータベースが構築されるだろう」と語る。
市場が拡大しているとはいえ、日本の住宅流通に占める中古の割合は13%程度。米国の90%、英国の84%にはるかに及ばない。構造的な課題を乗り越え、巨大市場へと変貌を遂げるか。今年はその分岐点となるかもしれない。
(週刊東洋経済2014年4月12日号核心リポート01)
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