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[ニジネスTODAY]ソニー「公約」崖っぷち
「エレキ黒字へ」平井社長3年目 事業再編、実力参謀を起用
ソニーの社長兼最高経営責任者(CEO)に平井一夫(53)が就いて4月1日で3年目を迎える。主力のエレクトロニクス事業は米アップル、韓国サムスン電子などに押され2013年度まで3年連続の営業赤字。パソコン事業の売却とテレビ事業の分社、5000人の人員削減に追い込まれた。正念場の平井はソニー復活へ導けるのか。
「黒字転換を実現する」。3月28日、東京都港区のソニー本社20階で開かれた取締役会。平井は居並ぶ社外取締役を前に14年度の事業計画を説明し、強い意欲を示した。
パソコンの撤退が伏線
2年前、平井がまず掲げたのがエレキ事業の黒字化だった。スマートフォンやゲーム機ではヒット商品も出たが、不振のテレビ事業は04年度からの累積赤字が7000億円を突破。パソコンも不振で、エレキ事業は13年度も赤字見通しのまま。さすがに3度目の公約倒れは許されない。
崖っぷちに立たされた平井が白羽の矢を立てたのが、インターネット接続子会社、ソネット社長だった吉田憲一郎(54)だ。元CEOの出井伸之の秘書で、ベンチャー投資を成功させた実力者。一見温和な「気配りの人」だが、一皮めくると「冷静な合理主義者」だ。
伏線は昨夏にあった。
不振のパソコン「VAIO」の存続について平井が経営陣に問うと、当時の最高戦略責任者(CSO)の斎藤端(60)の提言は「存続すべき」。改革の必要性を痛感していた平井はその後、水面下で吉田に打診。すると「タブレットの普及などパソコン市場は激変した。ソニーは撤退すべき」との答えが返ってきた。
平井は動く。12月には斎藤に代えて、吉田をCSOに抜てき。進言通り、今年2月にパソコン事業売却を決めた。同時期に決めたテレビ事業の分社と5000人の人員削減も吉田が中心となってまとめたものだ。平井は4月1日付で、吉田をCSOの役割を任せたまま代表権を持つ最高財務責任者(CFO)まで一気に引き上げた。
「4月から本当の平井体制にかわる」。あるソニー幹部は指摘する。これまでの2年間は前CEOのハワード・ストリンガーが選んだ斎藤とCFOの加藤優(62)が平井の後見役だった。今後は同世代の吉田と二人三脚で辣腕を振るう環境が整う。
ソニーが次に目指す姿とは何か。それは実は米アップルでも韓国サムスン電子でもない。
「フィリップスを見習え」――。今、ソニー幹部が徹底的に調べあげているのは、蘭フィリップスの経営改革の手法だ。
テレビ売却観測も
フィリップスはかつてテレビなどAV(音響・映像)機器でソニーのライバル。だが最近10年で看板のAV機器からほぼ撤退した。今や収益の柱は医療機器だ。02年12月期に32億ユーロの純損失を計上した業績も13年12月期は12億ユーロの純利益を稼ぐまでに復活した。
ソニーの今の収益構造は年1000億円以上の営業利益を出す金融事業が稼ぎ頭で、映画、音楽などのエンターテインメント事業も安定収益源。お荷物のエレキ事業が足を引っ張る構図だった。
「多くの製品から撤退し、競争力の高いゲーム、映画、音楽、金融に縮小均衡するのでは」。有力OBは平井ソニーの3年目の戦略をこう読む。
今のところソニーはパソコン事業売却のほか、テレビ事業を7月をめどに分社し、コスト削減を徹底。14年度末までに国内外で5千人を削減するなどで、悲願のエレキ部門の黒字化を図る考え。
平井はテレビ事業について「売却プランは全くない」と否定する。だが、実は先生役のフィリップスはテレビを台湾企業や船井電機に売却した。関係者の間ではテレビ分社も「将来の売却への布石では」(金融機関幹部)との見方がくすぶる。
「全社一丸となり、ソニーを必ずターンアラウンドさせる」。平井は3月28日、全社員にこんなメッセージを発した。同時にコメントを送った吉田はエレキ再建のキーワードに「自立」と「選択と集中」を選んだ。そこには結果を出さねば、存続を冷徹に判断するとの決意と思いが透ける。
世界を驚かせる商品を1つでも世に送り出せれば再建の切り札になるのは間違いない。だが、まずはエレキ黒字化という公約を達成し、市場から失った信認を取り戻すことが再生の一歩となる。
=敬称略
(多部田俊輔)
[日経新聞4月1日朝刊P.13]
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