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http://www.zakzak.co.jp/economy/ecn-news/news/20140403/ecn1404031844003-n1.htm
2014.04.04
消費税率8%ショックで景気は一気に下降することが確実だが、麻生太郎財務相の公共事業前倒し策を聞いて、笑ってしまった。何だ、日本経済というのは「朝三暮四」の猿か、と。
朝三暮四とは中国の故事で、予算が乏しくなった猿の飼い主が餌の量を減らそうとたくらみ、「餌を朝に3、夕方に4やるがどうか」と言うと、猿が少ないと怒る。そこであるじは、「じゃあ、朝に4、夕方3でどうだ」と言うと、猿は大いに喜んだという。
さて、財務省は公共工事などの予算を9月末までに6割以上執行するよう、各省庁に指示している。景気の落ち込みを防ぐのが表向きの理由だが、麻生財務相は「7〜9月期に(景気の上向きを示す)数字が出るような結果にしたい」と本音を隠さない。7〜9月期の「数字」は、安倍首相が来年10月からの消費税率追加引き上げを判断する際の目安となる。公共事業に集中発注で夏ごろの景気が勢いづけば、財務省の思惑通り、安倍晋三首相は来年10月からの消費税率10%実施を年末までに決定することになる。
しかし、経済は消費者が主役である。中国故事の猿のように簡単に騙されると思ったら大間違いである。
まず、4月以降の経済だが、家計消費は増税前の駆け込み需要の反動減を経て、7月以降回復するかどうか疑わしい。消費者心理の代表的データである内閣府発表の消費者態度指数を見ればよい。ゴールドマン・サックスの日本経済アナリスト・リポートによると、雇用、賃金、株価と消費者物価動向の4大要因に左右されるが、最近では物価上昇による悪化が最大のマイナス要因だという。
春闘による賃上げ率は全産業平均で1%に遠く及ばない。消費税増税に伴う物価上昇を含めた予想インフレ率3%以上を大きく下回るし、「株価の鈍化ないし、消費増税後の経済下振れで雇用環境が悪化すると、消費者マインドはさらに悪化する可能性がある」(上記リポートから)。
グラフは最近の消費者態度指数推移を1997年4月の消費増税時と比較している。増税決定後から増税実施前まで、指数は急速に落ち込んだ点では今の増税局面と重なる。当時、増税実施後は若干の改善がみられたものの、9月以降は再び悪化し、翌年からはデフレ不況に突入した。消費者心理が弱くなった局面で、アジア通貨危機や山一証券の経営破綻が重なったことも響いたのだろうが、今回は上記の国内要因に加えて中国のバブル崩壊懸念など海外にも不安材料は多い。
前回の消費税増税時、緊縮財政で回復しかけていた景気を圧殺した。今回、大型補正を合わせた15カ月予算ベースでみると、来年度の公共事業予算は今年度を3兆円程度も下回る緊縮だ。前倒し、集中発注というカンフル注射での景況はしょせん、つかの間でしかない。簡単な算術計算でわかることなのに、主流派メディアのだれも指摘しないのは、異常というしかない。 (産経新聞特別記者・田村秀男)
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