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政治関連の記事と違い経済関連の記事は“安倍政権の提灯持ち記事”かどうかわかりにくいが、日経新聞編集委員清水功哉氏の「日銀が量的・質的金融緩和(通称、異次元緩和)の導入を決めてから4日で1年になる。毎月の新規発行額の7割に相当する長期国債を買うなど思い切った資金供給により円安・株高が進行。人々の心理好転を受けて物価にも上げ圧力が加わってきた」という評価は、知っていながらのゴマカシだとは思うが、ひどく間違った説明である。
添付したデータをご覧いただくとわかるように、円ドルレートは、昨年4月4日の異次元緩和政策の発表前までに既に、12年8月末の1ドル=78.60円から13年3月末の1ドル=94.05円へと20%ほど(19.6%)円安が進行している。
同じように、円ユーロレートも、2年8月末の1ユーロ=97.34円から13年3月末の1ユーロ=120.73円と24.0%もユーロ高(円安)が進行している。
ユーロ高のほうがより進行していることからも、円ドルレートは、円ユーロレートの変動に影響されるかたちで円安に向かったと考えるのが素直である。
円高の修正が始まったきっかけは、欧州中央銀行(ECB)がデフォルト不安の対象となっていた南欧諸国の国債も含めて無制限に買い入れると表明したことなのである。
12月末総選挙が明らかになった12年11月下旬以降は、安倍首班の自民党政権が誕生するとの見方が一般的になり、大々的な金融緩和策が実施されるという予測も広まったが、実際に金融緩和が行われたわけではないのであくまでも“期待”や“予測”であり、心理的に円売り(円安化)を支えるものでしかなかった。
株価も、「円安→輸出企業業績アップ」という見方から円安に連れ上昇したものであり、4月4日の異次元緩和政策が発表される前に、12年8月末の8,840円から13年3月末の12,398円へと40.2%も上昇している。
異次元金融緩和政策発表効果という観点でみれば、13年3月末12,398円から今年3月末の14,828円まで、上昇率は19.6%である(同期間に円ドルレートは9.4%円安に動いている)。
異次元の金融緩和策が円安をもたらしたと主張するひともいるが、せいぜい、円安を心理的に支えたと言えるだけで、金融緩和策が円安をもたらしたとは言えないのである。
株価の上昇やインフレ率の上昇も、公共投資増大の影響もそれなりにあるが、基本は円安効果(負を含めて)なのだから、日銀の異次元緩和政策が直接に奏功したものとは言えない。
円安傾向が終わったことから、さらなる円安を求めて日銀に追加緩和を求める声も増加しているが、12年秋以降の為替変動を顧みれば、追加緩和で円安が進むとは言えないのである。
逆に、異次元金融緩和政策が経済政策としてはほとんど意味がないことが露呈されたり、不足気味の国債がさらに品薄になることで金融活動を歪めたりする“リスク”のほうが大きいと言わざるを得ない。
[月末時点における円ドル・円ユーロのレート(TTM)及び日経平均株価推移]
(12年) ドル ユーロ 日経平均株価
5月 78.92 97.62 8543
6月 79.31 98.74 9007
7月 78.17 95.87 8695
8月 78.60 98.34 8840
9月 77.66 100.24 8870※9月6日:ECB国債無制限買い入れ政策発表
10月 79.66 103.29 8928
11月 82.12 106.55 9446
12月 86.58 114.71 10395
(13年)
1月 91.14 123.69 11139
2月 92.51 121.65 11559
3月 94.05 120.73 12398
4月 97.92 128.18 13861※4月4日:日銀新金融緩和政策発表
5月 101.18 131.96 13775
6月 98.59 128.53 13677
7月 98.08 130.05 13668
8月 98.36 130.24 13389
9月 97.75 131.87 14456
10月 98.51 135.27 14328
11月 102.42 139.46 15662
12月 105.39 145.05 16291
(14年)
1月 102.86 139.44 14914
2月 101.94 139.75 14841
3月 102.92 141.65 14828
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追加緩和のヒントも 黒田日銀総裁、表と裏の三大重要語録
編集委員 清水功哉
2014/4/3 6:00
日銀が量的・質的金融緩和(通称、異次元緩和)の導入を決めてから4日で1年になる。毎月の新規発行額の7割に相当する長期国債を買うなど思い切った資金供給により円安・株高が進行。人々の心理好転を受けて物価にも上げ圧力が加わってきた。今後、2%の物価上昇率目標が「期限」の残り約1年間で本当に達成されるのかが、追加緩和の行方とあわせて注目されている。そうした日銀の「今後」を読むうえで重要なのが、黒田東彦総裁の数々の発言だ。オモテ(公式の場)だけでなく、筆者の取材メモにあるウラ(非公式の場)の発言も含め、重要なものをそれぞれ3つずつ選んだ(重要度に応じて順位を付けてある)。多忙な日経電子版読者向けの「クロダ・イズム」のエッセンスといえる。
【オモテの発言】
▼第1位:2013年4月4日の記者会見
まずオモテの発言。何と言っても重要なのは、「これまでとは全く次元の違う金融緩和」だという異次元緩和を決めた昨年4月4日の金融政策決定会合後の記者会見である。
「2%の『物価安定の目標』について、2年程度を念頭に置いて実現する。そのために必要な措置は、ここに全て入っていると確信しています」
この発言は、そう簡単に追加緩和はしないという表明だった。実際、それ以降、いくつかの局面で追加緩和観測が広がってきたが、動かなかった。この姿勢は今後も維持するだろう。
一方でその後繰り返し口にする次のセリフもすでにこのとき述べている。
「経済も金融も生き物ですので、その時々の状況をみて、必要があれば躊躇(ちゅうちょ)なく調整していきます」
市場混乱時などには、「必要な措置はとった」という認識に教条的にとらわれないという宣言である。
さらに次のような発言も、動くべきときは思い切って動くという黒田日銀のスタンスを示したものだ。
「現時点でそのような(資産バブルが膨れ上がるような)重大な副作用が直ちに表れる可能性は、極めて低いと思います」「リスクが増えるから必要な金融緩和はしないということではなく、リスクを念頭に置きつつ必要な金融緩和は行うということであるべきだと思っています」「株価指数連動型上場投資信託(ETF)は、市場規模を踏まえると、まだ買い入れる余地がいくらでもあると思います」
▼第2位:13年9月20日の講演
13年4月4日の記者会見には異次元緩和に関する重要な考え方が数多く含まれていたが、十分に触れなかった点もあった。緩和策について「(目標とする物価上昇率)2%を安定的に持続するために必要な時点まで継続する」と約束したことの具体的な意味である。そこに踏み込んだのが、総裁就任半年となる13年9月20日の講演だった。こんな発言をした。
「(2%を安定的に持続する)ためには、現実の物価上昇率だけでなく、中長期的な予想インフレ率も2%程度になることが必要です。実際の物価上昇率が平均的に2%程度で変動し、『物価がだいたい2%くらい上がる』ことを前提に企業や家計が行動するようになれば、中長期的にも物価の安定につながると考えられます」「(それは)需給ギャップがゼロの状態にある時に、2%の物価上昇率が実現されることを意味します。『2%を安定的に持続する』」とは、こうした意味です。日本銀行は、これを実現するのに必要な時点まで量的・質的金融緩和を続けます」
日銀は現在はマイナスの領域にある需給ギャップを2年程度でプラスの領域に引き上げて2%の物価上昇率を実現する。ただそれでは満足しない。その後需給ギャップがゼロ近辺に戻っても物価2%が維持されるようでなければいけないと黒田氏は言っているのだ。とすれば、緩和政策が2年で終わる可能性は小さく、長期化しそうだ。
▼第3位:13年7月29日の講演
異次元緩和はアベノミクス(安倍晋三政権の経済政策)全体のなかでどんな位置づけになっているのか。その点を整理したのが13年7月29日の講演だ。
量的・質的金融緩和は、政府による様々な取り組みと相まってこそ、最大限の効果を発揮する、としたうえで2つの点に触れた。
「第1は成長戦略です」「金融緩和の度合いは、企業などにおける資産収益率と資金調達コストの差によって決まります。すなわち、成長戦略によって企業の収益率の見通しが高まれば、金融緩和の効果は一段と強まっていくことになります」
異次元緩和は主に企業の資金調達コスト引き下げに貢献する。一方、規制緩和など成長戦略は企業の収益率見通しを上げるので、両方があわされば設備投資が刺激される。すなわち緩和効果が強まるのだ。これは、アベノミクス第1の矢である金融緩和と第3の矢である成長戦略との関係の整理である。政府が6月にまとめる予定の新たな成長戦略の内容は、黒田氏の判断に影響を及ぼしそうだ。
では、第2の矢、財政政策についてはどうか。総裁はこう述べた。
「第2は、財政の信認確保です。(日銀が長期金利上昇圧力の抑制のために手掛けている)国債買い入れなどが、万が一財政ファイナンス(財政赤字の穴埋め)であると受け取られた場合、リスクプレミアムの拡大から長期金利が上昇し、量的・質的金融緩和の効果が失われる可能性があります」
緩和効果を維持するためにも、財政の信認確保が重要だと強調したことになる。第2の矢である「機動的な財政政策」が、安易な公共事業拡大などにつながるリスクに警鐘を鳴らしたともいえる。
こうした財政政策に関する考え方を踏まえれば、黒田総裁が後に14年4月の消費税率引き上げを予定通り実施した方がいいと語ったり、法人減税について慎重姿勢を示したりした理由がわかってくる。
【ウラの発言】
以上は公式の場での発言だが、ここから先は非公式の場での発言を紹介する。筆者がその場にいたわけではないので、正確な引用にはなっていないかもしれないが、趣旨としては間違っていないはずだ。
▼第1位:「私は欧州中央銀行(ECB)が今回動くような気がしますが……」
13年11月7日に、ECBが抜き打ち的な利下げに踏み切る少し前に、日銀内で語っていたとされる言葉だ。サプライズ的な政策変更を「予告」したことは、黒田氏自身がそうした発想で動く可能性があることを示唆する。実際、14年2月には、銀行貸出支援制度の延長・拡充をサプライズ的に決定、日経平均株価が1日で450円も上がった。「期待」を重視する今の政策では、「驚き」が一定の役割を果たすのだ。
▼第2位:「米国の量的緩和縮小開始は12月ごろでしょう」
13年7月上旬、ある会合で口にしたとされるセリフだ。5月下旬にバーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長(当時)が量的緩和縮小を示唆。早期の縮小開始を織り込む形でマーケットが混乱した。このため、その後市場で日銀の追加緩和観測が出たが、総裁があわてて行動を起こすことはなかった。背景には、米量的緩和縮小がすぐには始まらないという読みがあったのかもしれない。実際、縮小開始決定は12月だった(開始は14年1月)。
以上の2つは、欧米の金融政策の動きについて、かなり的確な予想をしていたことを示していて、興味深い。財務官OBで各国当局者に人脈を持つ黒田氏は、就任以来1年ですでに14回の海外出張を重ねる。月に1回以上のペース。それらを背景にした情勢分析が、日銀の政策運営に少なからぬ影響を与えているようだ。
▼第3位:「本当に頑固ですね」
13年10月、述べたとされる発言だ。「頑固」とされたのは、2%に向けた物価上昇率拡大の可能性をなかなか信じない市場参加者やエコノミストたち。日銀は2年程度で2%の物価上昇率を実現する決意を示してきたが、総裁が本心からそう思っているのか、あるいは人々のインフレ期待を強めるためのポジショントークなのかは謎とされるが、後者だと決めてかからない方がいいかもしれない。
http://www.nikkei.com/markets/kawase/kawase-focus.aspx?g=DGXNMSFK0202X_02042014000000
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