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世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第70回 植民地国家・中華人民共和国
http://wjn.jp/article/detail/9446764/
週刊実話 2014年4月10日 特大号
2014年2月10日。中国の経済専門紙「経済参考報」など、複数のメディアが中国全国の9割以上の都市で、1月の不動産成約件数が前月比で大幅に下落している事実を報じた。
中でも、大連の成約件数の下落ぶりは半端なく、前月比で53%減である。'13年12月と比べ、不動産の成約数が半分未満になってしまったわけだ(2番目に下落率が大きかったのは、深せんの44%減)。
成約数が減ると、当然ながら不動産価格も下がる。すでに、厦門、温州、洛陽などの地方中堅都市における不動産価格下落が始まっている。
特に、中国不動産市場に衝撃を与えたのは、2月18日に杭州の新築マンションが、当初の予定価格1平米当たり1万9500元(約32万円)から同1万5800元(約26万円)に大幅値下げされた件である。
そもそも、杭州のホワイトカラーの平均月収は月5000元(約8万2000円)程度だ。1平米当たり1万5800元、70平米のマンション価格が110万6000元(約1814万円)ということは、サラリーマン年収の18.4倍ということになる。平米単価1万9500元の場合は、22.8倍だ。
ちなみに、日本のバブルのピークであった1990年。住宅価格は年収の9.2倍であった(その後、5倍未満に下がった)。平米単価1万9500元であろうが、1万5800元であろうが、いずれにせよ中国の不動産価格は「高すぎる」。
さらに、2月19日には、杭州の別の不動産物件が、元々の販売価格である平米単価1万7200元から、いきなり同1万3800元に値下げ販売を開始した。
結果的に、値下げ前の価格で購入した顧客たちが反発し、販売センターで破壊行為を行ったという。
現在の中国は、グローバリズムの下で国内の所得格差が拡大し、低所得者層の不満がマグマのように溜まっている。
所得格差を示すジニ係数は、中国共産党発表の数字は0.47(2013年)となっているが(これでも高いが)、中国四川省の西南経済大学の調査報告書によると、何と0.717(同)にまで上昇しているという。
ジニ係数は、0.4を超えると「警戒ライン」、0.6を超えると「危険ライン」と考えられている。0.717に至っては、「革命ライン」とでもいうべき、とんでもない格差水準になる。
現在の中国は、冗談でも何でもなく、いつ「共産革命」が起きても不思議ではないという、笑えない状況にあるのだ。
しかも、所得格差「上位」の人々、すなわち共産官僚に代表されるノーメンクラツーラ(赤い貴族)たちは、中国国内の人民から「吸い上げた」所得を次々に外国に移し、自らも他国に逃げている。
2012年の調査によると、1000万元(約1.6億円)以上の資産を持つ人民の6割が、すでに外国に移民したか、移民を検討中とのことである。
また、国際調査報道協会のジェームズ・ボール記者によると、2000年以降、実に1兆〜4兆ドルの隠し資産が中国から流出したという。
2012年に温家宝前首相のファミリーが、27億ドルを超える海外資産を保有しているとニューヨークタイムズ紙が報じた。
温前首相は否定はしているが(それは否定するだろうが)、英紙ガーディアンは'14年1月21日に、温雲松氏(温前首相の息子)ら中国指導部の親族、少なくとも十数人が英領バージニア諸島などのタックスヘイブン(租税回避地)を資産管理のために活用していると報道。「中国指導部の親族」の中には、習近平現国家主席の義兄までもが含まれているという。
また、微小粒子状物質PM2.5に代表される大気汚染、さらには土壌汚染、水質汚染は、中国大陸全土を「人が住めない地」に変貌させようとしている。
中国は共産独裁国家であり、民主主義がない。環境保護のための法律はないことはないのだが、企業側は共産官僚との「コネクション(要は賄賂)」を利用し、環境を無視した生産活動を継続してきた。何しろ、中国人民側には選挙権がないため、彼らは環境問題を政治的に解決する術を持たない。
環境を破壊して達成された経済成長のツケは、全てが中国人民に押し付けられる。環境破壊を行った張本人である富裕層は、続々と外国に資本を移し、まずは家族、そして最終的には本人も国を捨てて逃亡する。
結局のところ、中華人民共和国が国土や「人民」を犠牲にし、自らの所得を最大化した上で他の国に「移る」という、一種の植民地国家なのだ。
帝国主義の時代、欧米諸国はアジア、アフリカ諸国を軍事的、政治的に支配下に置き、現地で植民地人の犠牲の上に自らの所得を最大化した「外国人」が、折を見て母国に「帰る」搾取型の植民地政策を実施した(台湾や朝鮮半島など、支配下に置いた国・地域の住民に教育を与え、律儀にインフラ整備を行ったのは日本だけである)。現在の中国は、太子党や共産官僚といった赤い貴族たちが、「同じ国に住む人民」から搾取するタイプの植民地国家なのである。
当然ではあるが、中国の支配層は「人民の反乱」を最も恐れている。中国人民解放軍が、中国人民ではなく「中国共産党」を守る軍隊であるのは、そのためなのだ。
また、中国共産党指導部は、「支配下」にある人民の不満を抑えるため、経済を成長させることで自らの権威を強化することを続けてきた。
中国の環境破壊が後戻りできないレベルに達してしまったのは、企業と共産官僚の癒着に加え、共産党が自らを守るために、経済成長を環境保護よりも優先せざるを得なかったという事情もあるわけだ。
'08年のリーマンショック以降、世界的に需要が縮小し、中国は「輸出」という経済成長のエンジンの一つを失った。
その後の中国は、国内への投資、特に不動産投資を中心に何とかGDPを拡大してきた。「最後の砦」である不動産バブルが崩壊するとなると、まさに中国の支配層は「共産革命」を恐れなければならない状況に追い込まれるわけである。
三橋貴明(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、わかりやすい経済評論が人気を集めている。
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