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アベノミクスで改善スピード5割増し!マスコミは「貿易収支赤字」で騒ぐより「失業率低下」に注目せよ
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/38821
2014年03月31日(月) 高橋 洋一「ニュースの深層」 現代ビジネス
4月1日から、とうとう消費税が8%に上がる。筆者は、増税なしで来たこれまでの経済運営は合格点であるが、この消費税増税は景気の良くなる前なので悲観的な見通しで、経済政策の失敗と思っている(2013年08月12日付け本コラム)。
それにしても、テレビ番組では、消費税増税に伴う「面白い」現象を報道している。例えば、コンビニでは零時から8%になるが、タクシーでは機械のセットが間に合わず明け方まで(機械セットが終了するまで)5%だとか、コンビニで零時前にレジで商品を入力すれば、レジ入力時間が零時を越えても5%で、その次の人は8%などと、事細かに取り上げている。
こうした報道は実に面白い。超短期的で身の回りの具体的な現象を追うマスコミならではである。しかし、やや中期的な話になって、経済統計を使うなど抽象度が少し高まると、マスコミ報道は急につまらなくなる。
多少の貿易赤字は健全ですらある
その典型が、貿易収支赤字で日本経済は危ないという類いの報道だ。もともと、マスコミは学問の不勉強な人が多く、経済統計などはあまりみていない。実際、経済統計の原典など読んでおらず、誰か(官僚が多い)の請け売りで、データを教えてもらって記事を書く人が多い。マスコミの記事ではほとんど図がないことからわかるが、原典データを図表にできる人はほとんどいない。まして、その統計を分析できるはずない。
2014年02月17日付け本コラムでも、そうした俗論を批判した。
消費税増税の経済への悪影響から目をそらすために、貿易収支赤字(経常収支赤字)が大変だというわけだ。この種のトリックは、「重商主義の誤り」という一言で終わる議論だ。これは、経済学をまじめに勉強した人なら誰でも知っていることだが、マスコミや一般経営者でもその水準に達していない人がいかに多いかが、いまだにこの種の妄説がまかり通っていることからもよくわかる。
2014年02月17日付けコラムの図ですぐにわかるように、世界全体を見ても経常収支赤字国は多いが、それらの国で成長率が低かったり、金利が高かったりということはない。経常収支赤字や黒字は、経済成長や金利にほとんど無関係なのだ。それでも、こうした海外の事情を全く知らないマスコミは、金融緩和で円安になっても貿易は増えていない、貿易赤字は○○ヶ月連続で大変だという。
筆者の書いたものをよく読んでいる読者ならわかるだろうが、筆者は、金融緩和すれば輸出は幾分伸びるが、貿易収支(=輸出−輸入)は改善するとは言っていない。景気が良くなると輸入は増えるので、多少貿易赤字になるのは健全ですらある。実際のデータでも、下図のように、金融緩和で輸出は伸びている。
ただし、ここでも、輸出の伸びが輸入の伸びを下回っているのが問題だと「思い込む」人は多い。そういう人は、2014年02月17日付けコラムを読み直して、「重商主義の誤り」を勉強してもらいたい。それでもわからないという人には、オーストラリアやイギリスの例を挙げておこう。何しろ、世界の中でも経常収支赤字国は多いので、こうした例は挙げれば切りがないが。
経常収支が赤字、それも数十年にわたっているが、それでも経済成長率は立派なものだ。
■人手不足閉店は失業率改善の表れ
経済成長が重要なのは、それが賃金の上昇を同時にもたらすとともに、失業率を低下させるからだ。経済成長と失業率の関係は、オーカンの法則(Okun's law)としてよく知られている。日本でもその法則は比較的よく成り立っている(下図)。
この関係を見ると、だいたい成長率を1%高めると、失業率が0.3%程度下がることになる。失業率は経済統計の中では、GDPと並んで重要なものだ。このため、FRBは失業率を適切なところまで下げる責務を持っている。他の先進国の中央銀行も、失業率は明示的ではないものの重要な指標として認識しているし、マスコミもそれをわかっている。
ところが、日本のマスコミの経済音痴は、貿易収支赤字(経常収支赤字)には過剰に反応するものの、失業率の報道はきわめて少ないところにも出ている。
失業率が下がれば、自殺率や犯罪率が低下することが知られている。さらに、生活保護率も下がる。今話題のブラック企業も求人が大変になって、自ずと淘汰されるだろう。いずれにしても、失業率は最も重要な経済指標の一つだ。
2月の完全失業率は3.6%に改善した。この数字は第一次安倍政権の時の最高の数字(2007年7月)と同じであり、その前になると1998年2月という、ここ16年間で一番いい数字である。筆者は、ここくらいまで下がると予測したが、意外に早く達成した。これだけでも、これまでの経済政策がうまくいっていることを示すには十分である。自公政権になってから、失業率の改善スピードが増している(下図)。
改善スピードは5割増しぐらいなのだが、見た目にはわかりにくいかもしれない。就業者数の推移で見れば一目瞭然だ(下図)。
ブラック企業として話題になっていた某企業が、人手不足から閉店しているところが多くなっているという記事をみた。これこそ、金融緩和によって、失業率が低下してきた結果である。筆者は、金融緩和によって非正規雇用やサービス・飲食業で早くから人手不足になると予測してきたが、まさにその通りの結果である。
マスコミは、経済学を今さら勉強してわかるようにせよとは言わないが、せめて、「貿易収支赤字(経常収支赤字)が大変だから日本経済が大変」という意味不明の記事を書くのではなく、身の回りの具体的な話に特化した方がましだろう。
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