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【警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識】通電火災も適用外、火災保険の問題点 免責条項を都合よく拡大解釈
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20140327/dms1403271757007-n1.htm
2014.03.28 夕刊フジ
火災保険が地震には使えないことを知っている人は多い。だが、阪神淡路大震災(1995年)のときに、延焼ではなくて9日もあとに発生した火事でも火災保険が下りなかったことを知っている人は少ない。
阪神淡路大震災では、約290件もの出火があった。そして水道管が破損して水は出ず、消火能力をはるかに超えていたために火はその後何日も燃え続けた。燃えた総面積は約66万平方メートルにもなってしまった。火災で被災した世帯は9300以上にもなったが、このほとんどは延焼による被災だった。
消防庁の調べでは出火件数のうち、当日の出火が205件といちばん多かった。しかし当日ではなくて1日後のものが21件、さらに2日目以降9日目までの出火が58件もあった。
あとからの出火の多くは原因不明とされている。だが電力会社が送電を再開したために発火した「通電火災」もかなり含まれていたと考えられている。
地震後、電力会社は一刻も早く復旧しようとする。そして住民が住んでいるいないにかかわらず、電力会社は区域ごとに一斉に通電する。電気を流したときに、スイッチが入ったままだった電気器具や、壊れたり押しつぶされていたストーブやレンジ、傷ついた電気配線から出火することがある。
これが「通電火災」なのだ。米国でも地震のあとの多くの火災の原因になっている。
しかしこれらに火災保険は下りなかった。たとえ「地震後」の発火でも、被災者の要求に対してどの損保会社も火災保険金(や共済金)の支払いをしなかったのだ。
損保会社が支払わなかった根拠は火災保険に「地震免責約款」があることだった。
この約款は虫眼鏡を使わないと読めないような小さい字で書いてある。
そこには「(地震によって)延焼または拡大して生じた損害または傷害は除外する」とある。
だがこの規定は、具体的にどんな場合がこれに当たり、どんな場合がこれに当たらないのか、はっきりしていないのだ。
それゆえ、この地震免責条項は損保会社の判断で、損保会社の都合のいいように拡大解釈されることにもなりかねないのである。
阪神淡路大震災のときにも「地震直後に火が出たのならともかく、何日もたったあとでの原因不明の出火なのに火災保険を支払わないのは納得がいかない」「損保会社は地震免責とそれ以外の火災の線引きをどこでするのか合理的に説明してほしい」といった不満が多くの被災者から上がった。しかし保険会社は明確な説明をせず、火災保険は1件も支払われなかった。
地震保険に入っている人はまだ少ないが、火災保険に加入している人は全国どこでもずっと多い。火災保険には問題があることをよく知っておくべきなのである。
■島村英紀(しまむら・ひでき) 武蔵野学院大学特任教授。1941年、東京都出身。東大理学部卒、東大大学院修了。理学博士。東大理学部助手を経て、北海道大教授、北大地震火山研究観測センター長、国立極地研究所所長などを歴任。『直下型地震 どう備えるか』(花伝社)など著書多数。
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