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森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 設計を誤った買い取り制度
http://wjn.jp/article/detail/5431384/
週刊文春 2014年4月3日 特大号
再生可能エネルギーを電力会社に買い取ることを義務づけた、固定価格買い取り制度の来年度分の買い取り価格が決まった。4月から非住宅の太陽光発電の買い取り価格が時当たり36円から32円に引き下げられる。
太陽光の買い取り価格を大幅に引き下げるのは、業者があまりに乱立したからだ。現行の制度は、高値で買い支えて将来の主要電源に育てることを目指す制度で、2012年7月から始まった。認可を受けると、原則として運転開始から20年間、認可時点の価格で電力会社が電力を買い取ってくれる。技術革新で太陽光発電パネルの値段が下がっていっても、一度認可を受けた買い取り価格は変更されない。
すぐにわかると思うが、この制度の下では、できるだけ早く太陽光発電による売電の認可を得て、できるだけ遅く発電設備を完成させるのが有利だ。太陽光発電パネルの値段は、技術革新や大量生産の実現でどんどん下がっていくから、後になって設備を作れば、コストが安く済むからだ。
実際、そう考えた業者は多かったのだろう。経済産業省は2月14日に、太陽光発電の固定価格買い取り制度適用を認めたにもかかわらず、建設を始めていない事業者最大672件(発電能力303万キロワット)の認定を取り消す方針を発表した。制度開始以来、認定取り消しは初めてだ。
認定取り消しの対象となったのは、発電施設用の土地も太陽光パネルなどの資材も準備していなかった業者だ。そんな業者が672もあったこと自体が、この制度の欠陥を物語っている。しかも、実際に認定を取り消される業者はずっと少ないとみられる。
経済産業省は、3月中をめどに、各業者から事情を聞いた上で、取り消しの判断を行うからだ。業者は、建設するつもりだと弁明するに違いない。
また、建設用の土地と資材のどちらかしか準備していなかった業者も971件(発電能力435万キロワット)あり、8月末までに両方の準備が整わなければ、経産省は認定を取り消す方針だという。
非住宅の太陽光発電は、昨年10月までに認定を受けた施設が2249万キロワットに上る。瞬間風速では、原発22基分の太陽光発電を認可してしまっているのだ。いまのところ、実際に発電しているのは5分の1以下だが、これがすべて動き出したら、天気に左右される不安定な電力が、既存の電力会社を振り回すことになる。しかも、そのコストは火力発電の3倍以上で、それがすべて電力の利用者に降りかかってくるのだ。このまま太陽光発電の買い取りを拡大すれば、電力料金はうなぎ上りに上がっていく。
私は、民主党政権の残した最大の負の遺産は、再生可能エネルギー買い取り制度だったのだと考えている。もちろん、太陽光の普及促進策そのものが間違っていたのではない。本来なら、太陽光発電に補助金を与える形で計画的に普及させるべきだった。ところが、財政負担を嫌がり、将来の電力利用者にコストをつけ回す形を取ったことが、野放図な太陽光発電拡大をもたらしたのだ。
将来の莫大な国民負担を避けるため、固定価格買い取りを一旦やめて、補助金方式に切り替える。政府は、いますぐその決断をすべきなのではないか。
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