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女性の活用を促すための「配偶者控除見直し」という欺瞞
http://bylines.news.yahoo.co.jp/ogasawaraseiji/20140320-00033741/
2014年3月20日 15時17分 小笠原 誠治 | 経済コラムニスト
安倍総理が19日に、配偶者控除の見直しを行うように関係閣僚に指示したと報じられています。
配偶者控除、何のことかお分かりでしょうか?
配偶者控除とは、配偶者に収入がないか、或いは収入が少ない場合、本人の所得から一定金額を控除する制度であるのです。
具体的に言えば、現在我が国においては、自分の配偶者である妻が、収入が殆どない専業主婦であったり、或いはパートなどをして働いている場合であって、その年収が103万円以内の場合には、旦那は、自分の年間所得から38万円分を差し引くことが認められているのです。つまり、配偶者控除があるために、支払わなければいけない所得税が少なくなる制度なのです。
所得税が少なくなる。何と有難いことか!
でも、その有難い配偶者控除の制度を、安倍総理は見直せと関係閣僚に指示したのです。何故でしょうか?
例えば、配偶者である妻が、パートで働いていて、年間103万円以内の収入を得ているとしましょう。この場合は、上で説明したように配偶者控除が適用され、旦那は自分の年間所得から38万円を差し引くことができるので、支払うべき所得税が少なくて済みます。一方、仮に、その妻が、年間103万円を超える収入があったら、そのときには、配偶者控除が適用されなくなってしまい‥つまり、旦那は自分の所得から38万円分を差し引くことができなくなるので、その分支払う所得税が増えてしまうのです。
ということで、幾ら勤労意欲の高い女性でも、103万円を遥かに超える収入を稼ぎ出す人は別ですが、そうではなく1年間働いて100万円程度の収入しかない主婦の場合には、この配偶者控除を利用するためには自分が年間103万円を超えないようにする方が、夫婦合わせてみたら得になるという判断が働き、女性の就労にブレーキをかける一因になっていると言われているのです。
では、どうすべきなのか?
配偶者控除が女性の社会進出を阻害しているというのが本当であるとしたら、そのような配偶者控除は撤廃した方がいいのか?
そこで、安倍総理は、次のように言ったのです。
「女性の就労拡大を抑制する効果をもたらしている税と社会保障制度の見直しなどを検討してほしい」
皆さんは、この安倍総理の発言をどのようにお感じになるでしょうか?
安倍総理の言うことに納得できるでしょうか?
恐らく賛成する人は極めて少ないでしょう。
何故ならば、配偶者控除を撤廃したり、縮小するということは、その分、増税になるということと同意義であるからです。どこの世界に増税を歓迎する国民などいるものか、と。
しかし、また、だからこそ安倍総理は、それが女性の社会進出につながるからと、女性にとって耳触りの良いことを言っているのでしょう。
しか〜し‥私は、安倍総理の言っていることは、いろんな意味で論理の一貫性がないように思えて仕方がないのです。
確かに、安倍総理は、常々、女性の社会進出を推し進めようとしてきた。それはそのとおり。しかし、安倍総理が言う女性の社会進出とは、例えば、民間会社で中間管理職以上のポストに付くとか、或いは、国の組織や政治の世界で男並み、否、男以上に活躍するようなことをイメージしていたのではないでしょうか。
従って、そのようなキャリアウーマンを増やすことが女性の社会進出を促す政策であると考えるのであれば、年収が100万円程度の女性が、さらに働く時間を増やそうと増やすまいと、殆ど関係がないと思われるのです。そんなこと、この配偶者控除が撤廃されたり、或いは引き下げたりした場合、どのような影響が考えられるかを考えれば分かるのです。
配偶者控除の見直しによって、女性の社会進出が格段に進むのか?
そんなバナナ!
考えられるのは、今まで1年間で100万円程度パートで稼いでいた主婦がもう少しパートに精を出すようになるだけの話なのです。
そのようなことしか起こらないと思われるのに、それが女性の社会進出を支援する改革であると言えるのでしょうか?
余りにもセコイ話です。確かに、103万円の壁があるので、パートで働く主婦たちは、その壁を意識して、働く時間を調整しようとするのはそのとおり。しかし、だったら、逆にその配偶者控除の額を引き上げて‥つまり、103万円の壁を153万円の壁にでもしたらどうなのでしょうか?
そうなったら、もっとパートで働いても配偶者控除が受けられるからということで、「女性の社会進出」が進むのではないでしょうか?
それに、そもそも女性の社会進出を促すような政策が、アベノミクス流の考え方と整合性が取れていると言えるのでしょうか?
安倍政権は、どうにかして賃上げを実現したいと考えている。今やそれが目玉の政策だと言ってもいい位。しかし、今ここで大勢の主婦たちが労働市場に流れ込んで来たらどうなるのか? 労働者の数が増えれば、当然のことながら、それに応じて賃金には下押し圧力がかかってしまうのです。つまり、賃金は益々上がりにくくなる、と。
そうでしょう?
もちろん、だからと言って、女性の社会進出は進めない方がいいとは言いませんが、それにしても、安倍政権は、女性の社会進出が進むことと、賃金を少しでも引き上げる政策の関係をどのように調和させようというのでしょうか?
それに、確かに女性の社会進出が進むということは、先進国の証のようにみられるので、国としてもこれまで積極的に推進してきたことは理解できるのですが、ただ、実際には、女性の社会進出が進むのに応じて少子高齢化が進んできた訳ですから、女性の社会進出と少子高齢化を食い止める政策の関係についても、これまた考え方を整理する必要があるのです。
いずれにしても、女性の社会進出を支援するために配偶者控除を見直すというのでは、国民の理解を得ることは大変に困難でしょう。
以上
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