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タックス・ヘイヴンへの「資産逃避」がガラス張りに・・・ photo gettyimages
資産の海外逃避は不可能に!? 「非居住者口座オンライン化」で国税が富裕層を“丸裸”にする
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/38719
2014年03月20日(木) 伊藤 博敏「ニュースの深層」 現代ビジネス
3月17日で確定申告が終了。今、国税関係者が気を揉んでいるのが、新しく導入された国外財産調書制度に伴い、どれだけの人が正直に申告したかである。
■国税と「確信犯」の資産家のせめぎ合いが始まった
昨年12月末の時点で、海外に5000万円以上の株、預金、不動産などを持つ人は、確定申告の期限までに税務署に申告しなければならなかった。
海外に5000万円以上といえば、資産数億円以上の富裕層が大半だろう。そういう人が正直に申告しただろうか。
なかには、国税当局の補足を逃れるために、香港などで銀行口座付きの会社を買い、ケイマン諸島などタックス・ヘイヴンに登記、投資などを名目に資産を海外逃避させている人がいる。また、資産家相手のプライベートバンカーには、そうした租税回避スキームを幾通りも用意、顧客に勧めているケースもある。
いわば確信犯で、彼らはこれまで課税を逃れてきた。海外法人への最初のカネの流れは国税も追えるが、そうした資金が、未公開株、絵画など変動相場商品に投資されていたり、幾つかのファンドを経由していれば“お手上げ”だった。
制度創設によって、故意の調書不提出や虚偽記載は1年以内の懲役か50万円以下の罰金となった。これから「不提出」の資産家と国税当局とのせめぎ合いが始まる。
国税にとっての追い風は、タックス・ヘイヴンやプライベートバンク利用の資産逃避に対する姿勢が、先進国共通になっていること。経済のグローバル化や情報技術の高度化によって、租税回避だけでなく、犯罪収益も巧妙に海外に隠匿される。
そこでまず、犯罪収益資金と目される口座については、各国が「守秘義務」の殻を破って捜査協力するようになった。
■「ゴルゴ13の世界」は過去のもの
「オレオレ(振り込め)詐欺」の考案者で「ヤミ金の帝王」といわれた元暴力団幹部のカネ約50億円を、スイスの銀行が日本の捜査当局の要請で資金凍結したのは10年前。
今は、もっと積極的に捜査協力、情報開示するようになった。殺害資金をスイスの銀行に振り込ませる「ゴルゴ13の世界」は、もはや過去のものである。
そうした意識の統一が、OECD(経済協力機構)各国による個人や法人の情報共有を通じた課税逃れや資産隠しの防止策策定につながった。
OECDは、2月13日、個人や企業が海外に開設した金融機関の口座情報を定期的に交換する統一ルールを導入することで合意。2月22〜23日、シドニーで開かれた主要20ヵ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議に報告され、了承を得た。
その国に住んでいない「非居住者」の口座情報を、オンラインネットワークで各国の税務当局が共有する。ルール作りはこれからだが、怪しい口座の動きを、日本にいながら追える。
20カ国のなかには、OECD未加入の中国やインドも含まれる。また、英国が参加しているため、ケイマン諸島など英領タックスヘイヴンも含まれる。
租税回避スキームは、国のカベで情報が遮断されるところを利用して作られた。オンラインでつながれ、入出金口座を洗われれば、回避スキームは壊れる。
犯罪収益、租税回避、マネーロンダリング……。
ガラス張りによって、海外利用の犯罪や脱税はかなり防げることになる。犯罪を目的としない正常な企業活動や投資活動のプライバシーをどう確保するかという問題はあるが、意思統一がなされた以上、後に引き返すことはない。
■マイナンバー制度で資産家も一般国民も「丸裸」に
5000万円以上の海外資産の申告、海外に持つ非居住者口座の開示といった動きは、資産家に限った話である。一般国民にはあまり縁がない。
だが、すべての国民の預金を税と社会保障の共通番号(マイナンバー)で把握しようという動きが始まった。
基礎年金、健康保険、パスポート、運転免許証、納税者番号など、全てバラバラな状況を改め、国民ひとりひとりに12ケタのマイナンバーを付与、個人情報をこれに帰属させることで行政効率をあげるというマイナンバー制度は、2015年秋ごろ、個人番号が決まり、カードが付与される。
従って、まだ先のことではあるが、脱税、不正受給、マネーロンダリングなどの防止を目的に、政府は個人の預金を一体で把握する方針である。
銀行口座をひとつだけ、という人は少ないだろう。人は、用途によって、あるいはカードやローンの都合によって、幾つもの預金口座を所有する。それをマイカードでの登録を義務付けることによって行政が掌握、脱税や脱法の“穴”を塞ぐわけである。
■それでも「穴」はある
個人情報保護の問題があり、捜査当局や国税当局がすべて覗き見できるようなものにはならないだろうが、これもマイナンバー制度が決まった時からの既定路線で、開示の流れは変わらない。
資産家から貧乏人まで、資産、預金といった個人情報をガラス張りにされる。それが嫌でも、海外に逃げることもできない。国内外がネットワーク化されている。
ただ、ほとんどの国民にとって実害はない。サラリーマンも公務員も給与は振り込みで、今もガラス張り。しかも、何か事件があれば、捜査当局や国税当局が口座を開かせ、チェックしており、それを拒否する金融機関などない。
そういう意味で、本当に困るのは、確信犯的に資産を隠し、飛ばしている富裕層である。カネがある人ほど、国家の収奪を嫌い、国内外に隠匿しようとする。
どんなに制度化を進め、各国が歩調を合わせても、“穴”はあり、確信犯は抜け出そうとする。国税は、当然、そうはさせまいとする。両者のせめぎ合いが、今後、本格化することになりそうだ。
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