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「景気の好循環」理論には全く根拠がない!
http://bylines.news.yahoo.co.jp/ogasawaraseiji/20140319-00033705/
2014年3月19日 13時29分 小笠原 誠治 | 経済コラムニスト
甘利大臣が、政府の賃上げ要請に協力しない企業は、経済産業省の方から追って沙汰があるから覚悟しておけと言った自分の発言について弁解しています。
まあどれだけ甘利大臣が弁解しようと、経営者からすれば、そのような時代錯誤とも言えるような発言を歓迎する筈がないのは明らかです。経営者の多くがそのような発言に対して敢て反発しないのは、今、そのようなことを言えば、それこそどんな嫌がらせがあるかもしれないと懸念するからなのです。
ただ、その一方で、甘利大臣がそこまでしてベアを実現したいと考えていることはよく分かります。恐らく、安倍総理やそれ以外の閣僚も、少しでも賃金が上がることを切望しているのでしょう。
何故ならば、4月1日からは消費税が上がるので、そして、消費税が上がれば必ず国民が不満を漏らすのが分かっているからなのです。つまり、どんなに不合理な行動であっても、逆に不合理であるが故に人々の記憶に残るほど安倍政権は賃上げに全力を尽くしていたということを印象付けたいのでしょう。
労働者の立場に立てば、確かに賃上げは願ってもないこと。だったら、もう少し表現方法を替えて企業経営者に訴えたらどうだったのでしょう?
例えば、甘利大臣が土下座して賃上げをお願いしたらどうだったのか?
仮にそのような態度に出るのであれば、それなら表だって批判はできないのです。何故ならば、大臣が単に希望を述べているのに過ぎないからなのです。
しかし、彼らは下手に出てお願いするようなことはしない。繰り返しますが、甘利大臣は、経済産業省が何らかの対応を取るからと脅かした。そして、麻生大臣などは、これは昨年の話ですが、お金は眺めるものではないと、説教を垂れた。
そんなところに、これまでの人生の経験が表れるということなのでしょう。
いずれにしても、こうしたことによって、安倍政権の面々が、賃金が上がれば、経済は好循環を起こすと本気で信じていることが窺えるのです。
この論理、ケインズの財政出動の論理と似たようなものなのです。最初に財政が出動して需給ギャップを埋めてやると、呼び水が井戸の水を吸い上げるのと同じように、経済は動き出す、と。
そうなのでしょう?
賃金が上がる → 消費が拡大する → 企業の売上が増える → 企業の利益が増える → 賃金が上がる
以上のような循環が始まると考えているということですよね。
では、仮にそうした循環が始まったとして、本当に労働者の生活ぶりは楽になるのか?
賃金が仮に10%アップし、そして、消費がそれによって10%増加すれば、売り上げも10%伸び、そうなると企業の儲けも増えるでしょう。そして、企業が儲かったからまた賃上げに踏み切れば、さらに売り上げが伸びる、と。
しかし、そうして賃金が上がるのと同じ割合で物価が上がったら、どうなるのでしょうか?
結局、何も変わらないのです。だって、幾ら賃金が上がっても、それと同じ率で物価が上がる訳ですから労働者の生活水準が上がる訳がない。だから大切なことは、賃金は上がっても、物価の方はなるだけ上がらない方が望ましいのです。それならば、労働者の生活水準は上がるでしょう。
でも、アベノミクスの現実は、一方で賃上げを迫りながら、他方では、物価も上がるように異次元の緩和策を日銀にやらせている、と。
賃金が上がるのであれば、本当は物価は上がらない方が労働者にとっては有利になるのにも拘わらず。
何故なのでしょう?
それは、そもそも賃上げを実現するためには、物価が上がることが必要だと考えたから、先ず物価を上げることを考えたからなのです。しかし、物価は円安のせいで少しずつ上がり出したが、賃金は上がらなかった。そして、そうこうしているうちに消費税が増税になる4月に近づいてきたので、なりふり構わず賃上げを迫っているということなのです。
要するに、アベノミクスがまともな論理構成になっていないのです。
それに、これまで何度も言っているように、そもそもデフレの定義をはっきりとさせていないので、議論の進めようがないのです。
いずれにしても、幾ら賃金が上がることが望まれようとも、無理やり賃金を上げても意味がないのです。
例えば、どうしても企業が政府の賃上げ政策に協力をしないので、政府が日銀にお札を増刷させ、国民1人当たりに100万円を渡したと仮定しましょう。そして、仮にそれによって国民の1人当たりの消費が100万円分増えたとしたら、どうなるのか?
恐らくそうなれば、モノの価格が上がる、つまりインフレになるだけでしょう。
生産数量は増加しないのか? 生産数量が増加して景気が良くなりはしないのか?
そうはならないでしょう。何故ならば、働くなくても政府から毎年100万円もお金が支給されるのであれば、多くの人が働こうとしなくなることが考えられるからなのです。つまり、幾ら消費が旺盛になっても、働こうとする人が少なくなるので、モノ不足が起き、インフレが起きる、と。
もっとも、経済は生きものですから何とも言えない面があることも否定はできないのですが‥でも、そのためにそのような危険な実験などできないのです。
一方、仮に労働者が今までよりも生産性を上げることによって時間当たりの生産量を増やすことができたら、経営者側としても賃金を上げてもいいと思うようになるでしょう。そしてもし、そのようにして経済全体として、労働者の生産性が上がるのであれば、それに応じて労働者一人ひとりが享受できるモノやサービスの量が増えることになり、つまり、生活水準の向上が実現できるのです。
それに、以上のような議論は別として‥仮に賃金が上がることによって日本の輸出企業の競争力が低下してしまえば、日本の輸出は益々奮わなくなってしまうのです。それなのに、どうして賃金の上昇が必ず経済の好循環を引き起こすと言えるでしょうか?
ということは、賃金の引き上げによって経済が好循環を起こすためには、海外との取引を考えない、鎖国状態に日本があることが必要となるのです。
その場合には、賃金が上がっても、国際競争力の低下という事態を心配する必要がないからです。但し、そうして賃金が上がることによって、それによって人々の消費が活性化したとしても、今度はその旺盛な需要を満たすべく人々が労働に励まないと、結局、モノ不足に陥るだけのことで‥つまりインフレが起きるだけで、やっぱり無制限に労働者の生活水準が上がり続ける訳ではないのです。
経済の好循環という言葉は、何かこれから先、半永久的に生活水準を向上させてくれる魔法のシステムのように聞こえる訳ですが、そのようなシステムなど最初からある訳がないのです。
自民党のなかにも、現政権が言い続けている「好循環の理論」が根拠のないものであることに気が付いている人はいると思うのですが‥
やっぱり今は安倍総理にモノを言うことが難しいということなのでしょか。
以上
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