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昨年末の大納会ではご機嫌だった安倍首相だが、市場の警鐘に第3の矢は放てるのか photo gettyimages
震災直後以来の危険な指標も! 「第3の矢」放てぬ安倍首相に「株式市場の警鐘」続々
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/38694
2014年03月18日(火) 町田 徹「ニュースの深層」 :現代ビジネス
年初からの世界的な株式市場の動揺が一向に収まらない。日経平均株価も先週末の14日、今年3番目の下げ幅(前日比488円32銭安、3.3%の下落)を記録、週末の終値は1万4327円66銭と2月14日以来1ヵ月ぶりの安値圏の水準に逆戻りした。
■日経平均が東日本大震災以来の「週間騰落幅」に
株価下落の直接の原因は、なんと言っても緊迫化するウクライナ情勢だ。しかし、これ以外にも、シャドウバンク問題に揺れる中国をはじめとした新興国経済の失速懸念や、消費増税に伴う需要の先食いの反動、福島第一原発事故の抜本的処理の先送りといったリスクが根底にあり、市場の弱気に拍車をかけている。
政府には、市場が鳴らし続けている警鐘を無視したり、その意味を読み違えたりせずに、適格に対応することが求められている。
日本が現在置かれている危機的な状況を最も端的に示す動きを見せた指標は、日経平均株価の週間騰落幅だろう。先週(10〜14日)は前週比で946円安と、東日本大震災の翌週(2011年3月14〜18日、1047円68銭安)以来の大きな下げを記録した。
株価水準そのものも年初からの最安値圏にある。東日本大震災の後、2012年11月に野田佳彦前首相が解散・総選挙発言をするまで1年8カ月あまりにわたって日本株が低迷を続けたことを勘案すると、先週の下落幅は、軽視できない市場の警鐘とみるべきだろう。大きな節目になる可能性を秘めている。
下げの大きな要因は、自国領への編入を目論むロシアが推し進めるクリミア半島の住民投票が現地時間の16日に迫り、緊迫の度合いが増していたことだ。
日米欧の主要7カ国(G7)と欧州連合(EU)の首脳が12日、問題の住民投票には法的効力がなく「結果を承認しない」としたうえで、仮に編入を強行すれば制裁すると警告したにもかかわらず、ロシアは一歩も引かない構えを見せた。
この結果、市場は、春闘で多くの大手企業が基本給を底上げするベースアップ(ベア)に応じたという明るいニュースに見向きもしなかった。ベースアップと言っても上げ幅はまちまちだし、そもそも中小企業に波及しなければ効果は期待できないものの、本来ならば、もう少し関心を持たれてもおかしくない材料だったはずだ。
■中国経済低迷は世界に波及する!?
世界的な市場の動揺の原因は、ウクライナ情勢だけではない。もうひとつ、大きなかく乱要因になっているのが、新興国、特に中国のリスクの高まりだ。
中国は、13日に閉幕した全国人民代表大会(全人代)で、当面の苦境を乗り越えるため、高めの経済成長率目標(7.5%)を採択せざるを得なかった。これは、総額4兆元に達したリーマン・ショック後の景気浮揚策の副作用でしみついた過剰投資体質の是正という従来の国策を事実上、棚上げすることに他ならない。
それでも、李克強首相は、全人代の閉幕後の記者会見で、「個別の状況では避けがたいものがある」と、今後、金融市場で理財商品などのデフォルト(債務不履行)が発生するリスクを認めざるを得なかった。
今後、中国政府は、金融緩和や政府支出の拡大を通じて成長目標の達成に腐心することになるが、そんな無理がいつまで続けられるのか、あるいは、どれほど矛盾を抑え込めるのか大いに疑問が残るところだ。市場では、日本が1980年代のバブル経済崩壊の傷跡をいまだに癒せずにいるように、中国経済のリカバリーは容易でないとの見方も出ているという。
そもそも、新興国と中国に対する市場の関心は、米モルガン・スタンレーが3月6日に経済危機到来の可能性とその影響を探るレポートを公表したことがきっかけに、ここへきて大きく高まっていた。
その内容は、先進国にはびこる「新興国危機は対岸の火事に過ぎない」という楽観論を諌めるものだ。
1990年代後半の経済危機の時と違って、現在は新興国の世界経済における存在感が飛躍的に高まっており、1990年代後半のような形で新興国経済がひとたび危機に陥れば、先進国も深刻な打撃を受けると指摘した。
「米経済は4四半期にわたって実質の経済成長率(GDP)が平均1.4%ずつ押し下げられ、日本とユーロ圏はいずれもマイナス成長に陥る」との試算も示していた。
■「消費増税」と「東京電力」が足を引っ張る
仮にこうした海外発の危機が現実にならなくても、日本には固有の懸念材料がある。2週間後に迫った消費増税の影響だ。
生鮮食料品のような買いだめがしにくいものは別として、住宅や耐久消費財など旺盛な駆け込み需要に支えられて3月末までに売り上げを伸ばした分野を中心に、消費が大きく落ち込むのは確実とみられる。
ほとんどの民間シンクタンクは、今秋には次の消費増税の実施が正式決定されることを念頭に、7月以降は再び駆け込み需要で消費が回復するとの予測に基づいて、年間の成長率の落ち込みを小さく見積もっている。
だが、そもそも安倍政権がすんなり2度目の消費増税を決定する保証はない。首相の経済政策の指南役らがしきりに先送りを迫っているという情報が後を絶たないのが実情だ。消費増税の正式決定が遅れれば、国際公約である財政再建に黄色信号が灯る懸念もある。
さらに、巨額の損害賠償責任を抱えて、すでに実質的に破たんしている東京電力に対して、様々な国策支援を講じて延命させることによって、国民負担が増大するリスクを膨らませ続けている問題もある。
政府が昨年末に決めた追加支援策のうち、5兆円から8兆円に拡大した東電に対する政府の直接支援は、柏崎刈羽原発の再稼働が早期に認められて、東電の収益力が回復することが原資返済の前提になっている。
また、政府が肩代わりを決めた2兆5000億円の除染費用の回収は、実質的に破たんしている東電の政府保有株を高値で売却することが前提とされている。
最終的に、これらの資金が増税や電気料金の引き上げでしか回収できなくなって、われわれのくらしや経済成長の足を引っ張る可能性は決して小さくない。
こうした中で、当面の幕間繋ぎ策でしかない異次元の金融緩和(第1の矢)と機動的な財政出動(第2の矢)にばかり依存して、いまだに有効な成長戦略(第3の矢)を打ち出せないアベノミクスの問題を、政府は決して軽視すべきではないだろう。
アベノミクスの誤算も目立っている。
円安が引き金になった化石燃料の輸入代金の高騰や、円高が是正されても製造業の輸出数量が伸びない問題だ。これらは、いびつな形で物価が強含みとなる原因や、貿易収支と国際収支の赤字が歴史的な水準に膨らむ原因になっている。
成長戦略に実現容易な即効薬はないが、立案が遅れれば遅れるほど、国際収支と財政の双子の赤字は膨らみ、日本経済が世界的な動揺の渦中にある市場の攻撃目標にされるリスクが高まってしまう。市場は待ったなしで、政府に対応を迫っている。
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