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ビットコインの生みの親と報じられたナカモト氏(ロイター)
http://www.zakzak.co.jp/economy/ecn-news/news/20140313/ecn1403131741003-n1.htm
2014.03.14
米ニューズウィーク誌が、電子空間で創造されるビットコインの発明者と目される日系米国人の「サトシ・ナカモト」氏の身元を突き止めたという。報道通りとすれば、技術オタクの初老の日本人頭脳が国際通貨情勢に大きな衝撃を与えていることになる。
戦後の国際通貨体制は米国の1971年8月の金ドル交換停止以来、どの通貨も漠然とした「政府の権威」以外の裏付けを欠いている。ビットコインはそれ自体が価値を持つので、紙切れのドル、あるいはユーロや円にとって代わるのではないか、と考える向きもいるが、そうはならない。
原油などの国際商品、さらに金融商品の大半がドル建てである限り、ビットコインはドルなくしては普及しえない。そのドルと自由に交換できる円やユーロも巨大な金融資産市場を背景にしているから、ビットコインにとって代わられる恐れは少ない。
ドルを筆頭とする3大通貨は、むしろビットコイン取引が拡大すればするほど需要が伸びる可能性がある。従って、日米欧の通貨当局はビットコインに鷹揚(おうよう)でいられるし、ルールを定めるとしても不正取引の監視を名目に課税しやすくするのが主眼だ。
対照的に、中国やロシアはビットコインつぶしに躍起となっている。両国国民とも、自国通貨をあまり信用していない。昨年3月にキプロスの金融危機が勃発すると、同国金融機関へのロシアの大口預金者が一斉にビットコインに殺到したために、1ビットコイン=60ドル前後だった相場は3倍以上に高騰した。
そのあと、ビットコイン取引が急増してきたのが中国である。13年夏から秋にかけて、中国では高利回りの理財商品の焦げ付き不安が出始めた。すると、中国国内にあるビットコイン取引所は大いににぎわうようになり、一時は世界のビットコイン取引の3分の1を占めるようになった。人民元を売ってビットコインを買い、資産を第3国に移す。これに引きずられてビットコイン相場はみるみるうちに急上昇し、10倍、1000ドルを突破した。
あわてた中国人民銀行は金融機関に対してビットコイン取引を厳禁した。このショックで、ビットコイン相場はいったん暴落したが、間もなく回復。すると、東京のマウント・ゴックスなど世界の主要なビットコイン取引所が一斉にサイバー攻撃を受け、ダウン。ビットコイン相場は再び急落した。
ところが、ロシアのウクライナ軍事介入が伝えられると、ビットコイン相場は反転した。「無国籍」通貨ビットコインは中国人やロシア人などにとってみれば最後のよりどころなのだ。
香港、カナダ、シンガポールなどでは中国人向けのビットコイン・サービス拠点がどんどん増え、北京当局の規制の手は届かない。米国ではビットコインの後を追って新たな仮想通貨が相次いで登場し、新ビジネスが生まれている。日本はビットコイン取引システムを整備し、円の国際化促進を図るチャンスにすべきだ。(産経新聞特別記者・田村秀男)
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