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竹中平蔵:貿易赤字が長引く日本経済
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140313-00000003-fukkou-bus_all
nikkei BPnet 3月13日(木)10時1分配信
経済の話というのは、どうしても目先のものになりがちだ。日本の株価は昨年1年間で57%上昇したけれども、今年はどうなるのか。昨年は株価が上昇したわりには、国内総生産(GDP)は1.6%しか増えていない、今年は大丈夫なのか……など。
■貿易赤字が定着する日本、財政と貿易収支の赤字を改善する米国
もちろん、目の前のことも重要だが、少し視線を変えて鳥瞰的に今の日本経済、世界経済を見てみよう。すると、いろいろな変化が起きていることがわかる。
一番大きな変化は、日本の貿易赤字が定着してしまったことだ。近い将来、経常収支も通年で赤字になる可能性がある。
一方で、米国がものすごい勢いで財政赤字を改善させている。また貿易赤字も減少している。米国の財政赤字は半分になり、貿易赤字は3分の1にまで減っている。
株の変化や為替の変化というのは価格の変化だが、財政収支と貿易収支の変化は貯蓄・投資バランスと実体経済の変化である。実体経済の変化の方が、われわれの生活に与える影響ははるかに大きい。価格の変化による影響は間接的だが、実体経済の変化は生活水準に直結する。
■ネガティブな変化でも悲観的になることはない
そういう目で見てみると、日本の実体経済の変化には、ポジティブな変化とネガティブな変化の両面が観測される。ただし、ネガティブな変化についても、その評価に当たってはそれほど悲観的になることはないと考えている。
わかりやすいのは貿易だ。「日本は貿易赤字になってしまった。大変だ」というネガティブな声が目立つけれども、貿易収支というのは、どこかの国が黒字になれば、どこかの国は赤字になる。もし貿易統計がすべて正しければ、世界中の赤字と黒字を足せばゼロになるはずだ。大相撲の星取表と同じで、10勝5敗の人がいれば5勝10敗の人もいる。
先進国というのは、貿易の星取表では赤字になるのが普通である。貿易収支の赤字を所得収支の黒字で補うというのが、先進国の標準的なスタイルだ。貿易収支(輸出額から輸入額を差し引いた額)が赤字になっていること自体を大きく騒ぎ立てる必要はない。
ただ、どうしてこうなったかを分析することは大切だ。ついこの間まで、GDPの2%くらいの貿易黒字を出していた国が、一挙にどうしてマイナスになってしまったのか。その原因はきちんと考えなくてはならない。
■貿易赤字に大きく影響する産業空洞化
貿易収支が赤字になったのは、いくつかの理由が重なっている。政府が強調しているのは、原発が止まったことにより鉱物性燃料の輸入が増えているから、というものだ。しかし、それは必ずしも大きな原因にはなっていない。
貿易赤字の原因は二つある。一つは、輸出が増えないということだ。これだけの円安になっても輸出が増えないことは、多くのエコノミストが見誤っていた。すでに実体経済の生産能力が海外に移転しているため、円が安くなっても輸出余力がない。むしろ、円安で収益が増えて国内景気が良くなった分、海外生産拠点からの「逆輸入」が増えている。
もう一つはやはり、円安によって円建ての輸入価格が高くなったということだ。それにより、円建ての貿易収支が悪化している。
このように実体経済からいうと、ここ3〜4年の日本の産業空洞化が大きく影響していることがわかる。これを元に戻すには、相当の長期にわたって日本の経済成長が強くなるという確信を生じさせる必要がある。
長期にわたる日本の成長を確信させるには時間がかかる。結局、貿易赤字という現状は比較的長く続くと見ておいた方がいい。
■財政赤字を削減しながらも経済成長する米国
ただし、だからと言って、それほど日本は困るわけではないということも、理解しておくべきだ。「貿易収支が赤字だと困るからすぐに原発を再稼働させろ」といった乱暴な議論が出てきては困る。
貿易赤字になったといっても、依然として日本は世界最大の債権国だ。貿易収支だけに振り回されず、冷静に状況を見ていかなければならない。
一方、米国が財政再建をうまく進めているという実例からは、多くを学ぶ必要があるだろう。米国の財政赤字は2013年度に6800億ドルとなり、09年度のピーク時(約1.4兆ドル)の半分以下まで減らしながらも経済は成長している。
米国の今年の経済成長率は3%に達すると見込まれている。やはり、米国の実体経済の成長力が依然として強いことをあらわしている。
また、米国が貿易赤字を3分の1に減らしたのは、シェールガス革命の影響が大きい。エネルギー面で実体経済の変化が起きている。
■内需が増えるというポジティブな変化
では、日本の実体経済について、ポジティブな変化はどういうものがあるだろう。注目すべきなのは内需の強さだ。昨年のGDP成長率1.6%の内訳を見てみると、内需は3%も増えている。
内需の成長は、二つの要因が考えられる。一つは財政拡大による需要創出である。しかし、それ以上に大きいのは、株価が上昇したことによる資産効果だろう。
なぜなら、内需で何が増えているかを見ると、圧倒的に個人消費が伸びているからだ。個人消費が増えたのは、資産効果の影響が小さくない。
このように、内需が意外に強いということについては、ポジティブな評価ができる。日銀短観にもこのことはあらわれている。昨年12月の日銀短観は、非製造の中小企業についても景況判断がプラスになった。これは約21年ぶりのことだという。
アベノミクスについては、「輸出に頼った製造業の大企業はよくなるけれども、中小企業や地方まではそれが浸透しない」という批判がよく聞かれる。しかし、輸出に頼った製造業は、為替差益こそ出せたものの、輸出余力がないのでそこまでは儲かっていない。むしろ、中小企業や地方こそが、アベノミクスの恩恵を受けつつある。
■イノベーションを生む経済社会を追求
大企業、中堅企業、中小企業、製造業、非製造業とマトリックスで見てみると、どのジャンルも経済はよくなっている。輸出偏重が目立った過去の景気回復とは違う、大きな変化が日本経済には起きている。
もっともその裏には、貯蓄率の低下という現実もある。日本は貿易黒字の国でもなければ、貯蓄率の高い国でもなくなっている。
そうした変化にふさわしい新たな経済構造を早く身につけなければならない。「破壊」だけではなく、「創造的破壊」にしていくことが重要だ。
米国の例を見てもわかるように、最後はイノベーションが成長力を作り出す。日本も、イノベーションを生む自由な経済社会をますます追求していく必要がある。
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