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対外純資産300兆円が当てにできない理由
http://bylines.news.yahoo.co.jp/ogasawaraseiji/20140311-00033451/
2014年3月11日 11時57分 小笠原 誠治 | 経済コラムニスト
昨日、2014年1月の経常収支が単月で過去最大の赤字になったことを材料として記事を書きましたが、案の上というかネット上では様々なご批判を頂きました。「いんちき経済学に踊らされた日本経済の行く末」なんて書いたことも原因かもしれません。
しかし、同時に結構多くの方々の支持も得ています。だから、私に批判的なコメントを寄せた人々も、喜び過ぎない方がいいと思います。
もちろん、私の意見を支持してくれる方々が、どこまで私の主張を理解してくれているかどうかは定かではありませんが、その一方で、そうした人々は、どうも最近耳触りの良いことばかり言う経済評論家や経済学者の類が多いことに大いなる疑問を抱いているのではないのでしょうか。
「経常赤字の何が悪いのか?」「増税などしなくても埋蔵金がある!」「景気を良くするためには財政出動して当然だ!」
多くの人々は、そのようなイージーな考え方に対して本能的に警戒心を抱いているのでしょう。
確かに、増税なんて受け入れたくない。それは私だって同じなのです。しかし、その増税を受け入れた場合の痛みと、増税を受け入れずに将来日本がデフォルトに至った場合の痛みを考えたら‥どちらを選択すべきかは、分かるのではないでしょうか。
でも、現在の痛みと将来の痛みを比較すると、現在の痛みを避けることを考えるのが人間の常。
日本がデフォルトに陥るなんて、ある筈がない、と。多分、そう思いたいのでしょう。
本日は3月11日。過去、何度も大津波を経験していた東北の人々でさえ、今回のような大規模な津波が来ると予想していた人は極めて少数ではなかったのでしょうか。
福島の原発事故にしたってそうなのです。原子力村の人々は、理科系の優秀な人々経済産業省のエリート官僚たちによって主に構成されているのですが、その原子力村の人々が、原発は5重の壁で守られているから絶対に安全であると言っていたではないですか?
本当に大丈夫なのかと、質問することさえ憚れるような雰囲気だったのです。そのようなことを質問すると、赤のレッテルが貼られかねなかったと言ってもいいでしょう。
でも、事故は起こったのです。
だとしたら、可能性は未だ小さいものの、日本がこの先、デフォルトに絶対に陥らないと誰が保証できるのでしょうか?
私は、年間で見ても経常収支が赤字に陥る可能性があると感じています。そして、だからこそ、将来デフォルトに至る可能性を少しでも小さくするような努力をすべきだと訴えているのです。
さて、そのような私の警告をあざ笑う多くのコメントが寄せられているのですが、その中には、日本は、純資産が300兆円もあるのだから大丈夫だと言う意見がありました。
皆さんは、どのようにお思いになるでしょうか?
本日は、その考え方について検討したいと思います。
日本の対外的な純資産が300兆円もあるということは、仮に毎年5兆円の経常赤字を記録しても、その純資産を全て食いつぶすには60年かかる、と。だから、経常収支が今年赤字になったからといって、急に慌てる必要はないと言いたいようなのですが‥
こういうのを机上の空論と言うのです。
ただ、だからと言って、特に計算が間違っている訳ではないのです。純資産が300兆円あって、年間5兆円規模の経常赤字がずっと続いたら、確かに300兆円がゼロになるには60年かかるでしょう。
では、60年後になって、初めて我が国はデフォルトという事態に遭遇するのか?
ここで質問をしたいと思います。その300兆円もの純資産の所有者は誰なのか、と。
これが全て政府の蓄え、つまり埋蔵金でも何でもいいのですが、政府が自由に使える金だったら、確かにあと60年はデフォルトを心配する必要はない。というような言い訳が成立するかもしれません。
しかし、その300兆円は、企業や国民‥国民といっても裕福な国民が、所有しているものなのです。
政府はその300兆円をどうしたら当てにできるのでしょうか?
日本には愛国的精神の持ち主ばかりで、皆、日本のためであれば、どんな増税にも協力するのでしょうか?
そんなバナナ!
そうでなくても、所得税を上げるというような議論が起こる度に、そんなことをすればお金持ちは国外に逃げ出すぞ、と脅かされるのが普通。法人税にしても、上げるどころか下げないと海外に移転すると言い張る企業の経営者たち。
そのような企業やお金持ちが保有している300兆円を、どうやったら政府は当てにできるのでしょうか?
もちろん、300兆円の純資産がゼロになるまでは、日本はれっきとした債権国家です。決して債務国ではありません。
しかし、日本の経常赤字の体質が定着したとして、そして、上のような計算がなされるようになったとして、そのときに、海外の投資家は日本経済をどう評価するのでしょうか?
簡単ではないですか。
要するに、沈みゆく太陽みたいなものなのです。確かにあと60年あるかもしれない。しかし、60年後には太陽が沈むのは確実である、と。海外がそのように判断したとき、誰が日本政府に喜んでお金を貸すでしょうか。
日本の国民が貸すのですか? 日本の銀行が貸すのですか?
確かに、バブル崩壊以降、銀行には優良な貸出先が限られていたこともあって、国債による運用を増やしてきたことは事実。でも、そうしたことが可能であったのは、貿易収支と経常収支の双方の黒字を背景として、日本が資金余剰の状態にあったからなのです。
その前提が、今崩れ去ろうとしているのです。だから、今後は、幾ら優良な貸出先が限定的であるとは言っても、銀行も国債による運用を幾らでも増やすことはできないと思っていた方がいい。
そのようにして、政府が銀行に頼ることが難しくなった時、政府は、どこからお金を調達するのでしょうか? つまり、誰に国債を買ってもらうのか?
だから、最近また財務省が海外の投資家に対して国債のPRを行っているのです。
いずれにしても、日本の企業や裕福な人々が増税に対抗して、海外に脱出しようとするとき、どうしたら政府は今ある300兆円の純資産を当てにすることができるのでしょう?
結局、国内であろうが海外であろうが、国債を買ってくれる人に売るしかないのです。
但し、そのような投資家も、日本が今後も財政の立て直しに成功する見込みがないと判断したら、恐らく日本の国債を保有することを敬遠するようになるでしょう。
ということなのです。
これで、日本は300兆円も純資産があるから、デフォルトを心配する必要はないのだという論理が如何に根拠薄弱であるかお分かり頂けたかと思うのです。
最後に念のために言っておきますが‥私は、何も直ぐデフォルトが起きる可能性が高いと言っているのではないのです。ただ、気が付いてから行動していたのでは手遅れになること多いので、早めの予防が大切だと言っているのです。
以上
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