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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140310-00000005-wordleaf-pol
THE PAGE 3月10日(月)15時0分配信
政府は、少子化対策の一環として、所得税の課税対象を個人単位から世帯単位に見直す検討を開始しました。これは何を意味しているのでしょうか?
現在、日本の税制では個人単位で所得税を徴収することになっています。例えば夫婦共働きの家庭であっても、夫の所得税と妻の所得税はそれぞれの所得に応じて個別に徴収されます。今回、検討の対象となるのは、徴収単位を個人ではなく世帯とし、夫婦の所得を合算した金額に応じて所得税を課すというやり方です。これはフランスで実施されている制度ですが、この際、子供の数が多ければ多いほど、税金を優遇することで、少子化対策に活用しようというわけです。
ただこの制度については、様々な観点から疑問の声が上がっています。子供の数が多い方が税金が優遇されるということになると、世帯収入が同じであれば、共働き世帯より専業主婦世帯の方が有利になります。安倍政権では成長戦略のひとつとして女性の活用を掲げていますが、この制度を導入すると、女性の職場進出を抑制してしまう可能性があります。麻生財務大臣はこういった観点から制度の導入には慎重な構えを示しています。
既存の制度の中にも、専業主婦を優遇する制度があるのですが、この制度との兼ね合いをどうするのかという問題もあります。現行の制度では、配偶者控除と呼ばれるものがあり、妻が専業主婦の場合、夫の所得税は優遇される仕組みになっています。この制度は現在、廃止する方向で検討が進んでいるのですが、一方では専業主婦を優遇し、一方ではその逆を行うことになってしまいます。そもそも何のために制度を変更しようとしているか分かりません。
また徴税における実務上の問題を指摘する声もあります。日本のサラリーマンの所得税は、源泉徴収という特殊な制度が採用されており、給料を支払う段階で企業が国に代わって税金を徴収するシステムになっています。税務署が本来やるべき業務を企業に負わせているわけですが、世帯全体の所得を公平に捕捉するためには、家族全員の所得を正確に把握する必要が出てきます。従来の年末調整の延長でこれを行うのか、確定申告を行うことになるのか、詳細は明らかではありませんが、企業側もしくは税務署側にかなりの事務作業増加が予想されます。
しかし何と言っても最大の問題は、政府として採用する戦略に一貫性がないという点に集約されるでしょう。経済成長や年金など社会保障制度の維持という観点では女性の社会進出は重要なテーマといえます。しかしこうした政策は従来の家族形態を前提にした上での少子化対策という意味ではマイナスになります。従来型の家族形態を維持し子供を増やすことを優先すべきなのか、男女は対等に働き、子育ても夫婦が対等に行う社会を目指すべきなのか、まずはこの部分をしっかり議論する必要があるでしょう。こうした大事な部分を議論することなく、表面上の制度だけを個別に検討しても、根本的な問題解決にはならないのです。
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