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〈日曜経済講座〉無国籍通貨「ビットコイン」の台頭 編集委員・田村秀男(ZAKZAK) 
http://www.asyura2.com/14/hasan86/msg/260.html
投稿者 かさっこ地蔵 日時 2014 年 3 月 10 日 12:01:33: AtMSjtXKW4rJY
 

http://www.zakzak.co.jp/economy/ecn-news/news/20140309/ecn1403091803000-n1.htm
2014.03.09


 ■中国人民元の最大脅威に

 電子空間で創造される「ビットコイン」。その本質は史上空前の無国籍通貨である。ビットコインは金(きん)並みの希少価値があると思わせるうえに、保有者は身元を知られずに、安いコストで瞬時に資産を国外に移す手段になるのだから、自国通貨に信用が置けない国民にとってはまさに最後のよりどころとなる。当然、最大の攻防の場はバブル不安の中国となる。

 ビットコインは2009年、「サトシ・ナカモト」と名乗る人物のインターネット論文の賛同者によって開発され、10年7月からインターネット上で各国通貨との取引が始まった。ビットコインの入手(「採掘」と呼ばれる)は複数のコンピューターを駆使してきわめて複雑で高度な数式を解くことが条件となる。総量は限られ、採掘者が多くなればなるほど、入手量(供給)は少なくなる。利用者(需要)が増えるに従って相場が上昇する仕掛けだ。

 最近ではビットコイン専用の現金自動預払機(ATM)も登場し始めた。ビットコインでの支払いを受け付けるレストランや商店も世界各地でぼつぼつ増えている。それでも、通貨としての使い勝手はいまいちだ。モノを買ったり、一般の人の手から手へと流通するには限度があるし、そのままでは国債や株式にも投資できないし、融資も受けられない。

 各国の紙幣や硬貨にないビットコインの強みはそれ自体が国家の保証がなくても価値を持つ点だ。ビットコインは国境を軽々と越え、アフリカの紛争国から鎖国状態にある北朝鮮の通貨ウォンまでも交換できるというから驚く。

 昨年3月に勃発したキプロスの金融危機はビットコインの存在価値を飛躍させた。同国金融機関に資産を預けていたロシアの大口預金者が一斉にビットコインに殺到し、1単位あたり60ドル前後だった相場は3倍以上に高騰した。

 そのあと、ビットコイン取引が急増してきたのが中国である。世界最初のATM設置場所は、多くの中国の富裕層とその一族が永住権を取得しているカナダ、次いで香港、さらにカナダに次ぐ移民先のオーストラリアといたれりつくせりだ。グラフを見よう。

 13年夏から秋にかけて、中国では高利回りの理財商品の焦げ付き不安が出始めた。すると、中国国内にあるビットコイン取引所は大いににぎわうようになり、世界のビットコイン取引の3分の1を占める最大の市場になった。人民元を売ってビットコインを買い、資産を第三国に移す。ビットコイン相場はみるみるうちに急上昇し、2カ月間で10倍だ。

 中国でのビットコイン熱は単なる富の逃避では済まされない。何しろ、中国への投機マネー(熱銭)の出入りの規模が大きい。不動産相場が高騰していた2011年秋には年間ベースで3千億ドルの熱銭が外部から流入し、不動産価格が下落に転じた翌年には同2千億ドル以上の資金が国外に流出した。厳しい政府の資本流出入規制をものともせずに熱銭を動かせるのは共産党幹部ら既得権者以外になく、いびつな中国の金融構造は変えようがない。

 理財商品には熱銭が大きくかかわっているうえに、中国国内の預金者が投資している。理財商品で調達された資金の多くは不動産開発に投じられている。不動産バブルが崩壊すれば3兆ドル規模の不良債権が発生しかねない。その不安からビットコインが買われ始めたわけで、ビットコイン熱が高まれば高まるほど、人民元資産が売られて、バブル崩壊を加速しかねない。

 危機感を募らせた中国人民銀行はそこで12月5日、「人民元の法定通貨としての地位を損なうのを防ぐ」として、金融機関に対しビットコインを使った金融商品や決済サービスの提供の禁止を発表した。金融機関の関与を封じれば、大口の資金逃避は防げると判断したのだ。このショックでビットコイン相場は暴落したが、今年1月に入ると相場は反転した。理財商品の焦げ付き不安が再燃したのだ。そこで中国政府は非公式に介入して理財商品を救済したが、モグラたたきに近い。

 2月に入ると、大手のビットコイン取引所「マウントゴックス」(東京・渋谷)がハッカーによる攻撃を受けて払い戻し停止に追い込まれ、世界のビットコイン愛好者が衝撃を受けた。

 が、それにもめげず香港では2月末にビットコインの世界初の対面型販売所がオープンした。ビットコイン相場はロシア軍のウクライナ介入を機に、持ち直しつつある。中国当局は次にはどんな手を打つのだろうか。


 

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