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田原総一朗:リコノミクスとアベノミクスに共通する「壁」
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140310-00000000-fukkou-bus_all
nikkei BPnet 3月10日(月)10時13分配信
中国の国会にあたる全国人民代表大会(全人代)が3月5日に開幕したが、李克強首相の進める経済政策「リコノミクス」が事実上、否定されたような状況になっている。日本経済新聞の3月6日付朝刊は、「色あせるリコノミクス」と表現して全人代の開幕を報じた。
■金融危機後の投資ブームで歪んだ中国経済
リコノミクスとは、李首相の名前とエコノミクスの結び付けた造語だ。行き過ぎた景気刺激策でバブルを招いたため、過度な投資から脱却し、中国経済を中長期的に安定した成長へ導こうというのがその狙いである。
中国はリーマンショック後、景気浮揚策として約4兆元(約56兆円)の大規模公共投資を行おうとした。しかし実際に中央政府が投じた資金はそのごく一部で、地方政府や国有企業は自ら資金を調達しなければならなかった。
地方政府や国有企業は巨額の資金を集めたが、実はそこには簿外で高利の資金を調達して信用の低い借り手に貸し付ける「シャドーバンキング(影の銀行)」の問題がからんでいた。高利回りの「理財商品」で集められた巨額の資金が不動産開発プロジェクトなどに流れていたのだ。
ところが不動産開発をはじめ大型プロジェクトは次第に行き詰りを見せる。需要をはるかに上回る供給が行われるなどしたためだ。それに伴い理財商品の債務不履行(デフォルト)懸念が相次ぎ、地方政府が水面下で巨額の不良債権を抱えていることも明らかになってきた。
■既得権益に突き当たるリコノミクス
こうした経済の歪みを正そうとしたのがリコノミクスなのだが、それには痛みを伴う改革が必要になる。地方の無駄なインフラ建設、不動産投機への金融機関の融資、需給バランスの崩れた過剰な生産設備など、様々な問題に切り込まなければいけないからだ。
だが、中央から地方に連なる共産党組織や政府幹部があらゆるジャンルで既得権益を握っており、リコノミクスを進めようとすれば、どうしてもその強大な既得権者と衝突せざるを得ない。リコノミクスが色あせてしまったのは、中央と地方の政治家がもつ既得権益という大きな壁に突き当たり、身動きがとれなくなってしまった、ということなのだろう。
政治家という既得権者に改革を阻まれるのは、日本の経済政策「アベノミクス」でも言えることだ。
2012年12月に誕生した安倍政権は「アベノミクス」を掲げ、金融緩和でお金を市場に流し(第1の矢)、公共事業で需要をつくり(第2の矢)、そして企業の競争力をうながす成長戦略(第3の矢)を説いた。
その結果、大胆な金融緩和により2013年は非常にうまくいった。12月30日の大納会となった東京株式市場は、日経平均株価が1万6291円となり、1年間の上昇率は56.7%を記録した。為替レートも1ドル=104〜105円と円安が進んだ。
■円安で貿易赤字が大幅に拡大
ところが2014年に入ると、米金融緩和縮小に伴う新興国経済の不安定化懸念などから株価が下落。日経平均は最近1万5000円を回復したとはいえ、昨年末から見れば大きく値を下げている。
たしかに大企業の業績は大幅に改善されたが、誤算もあった。行過ぎた円高を是正して円安になれば、日本企業の輸出は増えると考えられていたが、実際には輸出は増えていない。
いま貿易収支の悪化が問題になっている。輸出額から輸入額を引いた貿易収支(通関ベース)は今年2月に2.8兆円の赤字となり、過去最大を記録。しかも19カ月連続で貿易赤字となった。その原因は円安にともない石油や石炭、LNG(液化天然ガス)などの燃料代が増えたこと、情報機器や部品の輸入代金が増えたことが指摘されているが、輸出が増えていないことも大きい。
グローバル化にともない、日本企業は海外移転を加速させた。自動車産業をはじめ日本の製造業は生産拠点を海外に移してきたため、日本から輸出するものが減ってしまったのだ。
輸出を増やすには日本国内に新しい産業を興し、付加価値の高い製品をつくらなければいけない。そのためにも成長戦略が重要なのだが、その成長戦略を見る国内外の目が次第に厳しくなっている。
とくに外国人投資家たちは、「魅力的な成長戦略は打ち出せないのではないか」と見始め、日本株を手放す動きが広まり、これが一つの要因となって株価をじわじわと下げてきた。
■行き着く先は「一票の格差」
成長戦略の目玉となっている「岩盤規制」改革は、医療や農業をはじめ様々な分野で期待されている。しかし、岩盤のように強固な規制を打ち破る改革は思うように進んでいないとの見方が徐々に増えているのだ。
既得権者と岩盤規制という問題を考えていくと、実は、その最たるものとして国会議員と「一票の格差」という問題に行き着く。
2012年の衆院選では最大格差は2.43倍だった。小選挙区ごとの有権者数は、最多が千葉4区の49万7601人、最少が高知3区の20万4930人。千葉県民の発言権は高知県民の半分もないということになる。最高裁は昨年11月、こうした小選挙区の区割りを「違憲状態」とする判決を下している。
「一票の格差」は憲法が保障する選挙権の平等に反するもので、民主主義の土台を揺るがす事態と言ってもいい。しかし、その構造改革がなかなか行われない。
有権者数に対する議員の人数は地方ほど多くなる。地方の力が強く、あまり必要性の高くない公共事業も行われることになる。しかし、人口の少ない地方では利用する機会も少なく、公共事業の成果は思うように上がらない。つまり無駄な公共事業が増えてしまうのだ。
■構造改革に取り組まない政治家
無駄な公共事業を減らすには「一票の格差」の是正が必要になる。しかし、現役国会議員の反対が強く、その抜本的な改革はなかなか進まない。
最近では、「『一票の格差』こそ、最大の『岩盤規制』であり、アベノミクスを阻んでいる」という声すらある。
アベノミクスへの期待が薄れ、色あせているとすれば、その根本には既得権益にしがみつき、構造改革に取り組まない政治家たちの存在が考えられるのだ。
アベノミクスも、それに対抗して使われだしたリコノミクスも、最大の「壁」は既得権益を握る政治家たちだと言わざるを得ない。
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