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アベノミクスは海外投資家から見捨てられたのか
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/38584
2014年03月10日 原田武夫「ジャパン・ラッシュへの道」 :現代ビジネス
「いわゆる『アベノミクス銘柄』は売られ始めましたね。海外勢と見られる投資家たちが旺盛に買い始めているのはむしろ素材系など我が国を代表する技術に関連した銘柄です」
2月末になるとそんな声が、精緻なデータ分析を行うことでマーケットでは定評のある向きから私のもとに届き始めた。ここでいう「アベノミクス銘柄」とは、要するにこれまで第二次安倍晋三政権が励んできた円安誘導によって裨益を受ける株式銘柄を指す。
ところがこれまで米欧が甘受してきた「円安」も徐々に綻びが見え始めている。それもそのはず、そうやすやすと円安に誘導され続けてしまっては米欧からすると自らの対日輸出が不利になってしまうからだ。
いくら「20年余り平成バブル不況でした」と強弁したところで、円安誘導による近隣窮乏化策をいつまでも認めるほどの余裕は米欧にもはや無いのである。したがって米欧からは「これまで円安にしてやったのだから『倍返し』してもらう」ということに必ずなってくる。
ヘッジファンドや投資銀行たちはそのことを事前に察知して逃げ始めたのである。そうした中で、そもそも国際展開力のある我が国の屈指の技術を抱える企業が選ばれ、為替レートとは直接関係が無い形でその株式が盛んに買われるようになっているというわけなのである。
■「デフォルト処理」を始めることは許されない!?
「アベノミクスは見捨てられた」---そう、マーケットでは語る向きが多く、またそうした論調をマスメディアが面白がって増幅している。だが、私の目から見るとこうした意見こそ、まったくもって事情を知らない素人考えに他ならないのだ。
なぜならば、こうした議論を述べる者は必ずこう言うからだ。「異次元緩和やそれに伴う円安誘導で生じた日本株高までは良かったが、結局、安倍政権は『成長戦略』を打ち出していないではないか」
なぜこれが"素人考え"なのかと言うと、下手に緩慢な形で経済成長してしまうと、実は国債の長期金利が上がり始めてしまうことが国際的な統計分析で知られているからだ。このことを私は他ならぬ財務省の資料に基づいて小著『ジャパン・ラッシュ---「デフレ縮小化」で日本が世界の中心となる』(東洋経済新報社)や私の研究所の公式メールマガジンで論じたことがある。つまり裏を返せば、財務省としては「変に努力して経済成長されてしまっては金利負担でデフォルト(国家債務不履行)になりかねない」とあらかじめ吐露しているというわけなのだ。
「そうであるならば安倍政権はなぜ今、成長戦略の策定をやらされているのか」
読者はそんな疑問を持たれるに違いない。だが、そんな読者に私はこう答えたいのである。---「全てはポーズ、しかも外国に対するポーズである」と。
つまりこういうことだ。わが国政府として本当のところはまったく経済成長など関心がないのにその「ふり」をしているのは、そうでもしなければ外国が許してくれないからなのである。何を許してくれないのかというと、他でもない、我が国自身が「デフォルト処理」を始めることである。
■「やるべきことはすべてやりました」と言うための準備
もっとも可能性があるのはある意味、我が国らしく「なし崩し的に」デフォルト処理を行うことである。経済成長策をまともに打ち出さないのに、異次元緩和だけを日銀に行わせている背景には「ハイパーインフレの手前まで行き、恐怖におののく人々が金融機関から現金を引き出そうと取り付け騒ぎが発生する中、破綻処理として金融機関から国債=すなわち国としての借金証文を取り上げてしまおう」という戦略が見え隠れしている。
だが、ここで日本国債を持っている外国人投資家たちから「待った」をかけられては困るのである。そこで、わが国政府としては平たく言うと「やるべきことは全部やりましたがダメでした」と言うための準備を着々と進めるべしということになってくるのだ。特別なアイデアもないのに「経済成長策」を打ち出そうとしているのも、要するに「やるべきことはすべてやりました」と申し開きをするための作戦だというわけなのである。
海外の投資家たちからすれば実に悩ましいところだろう。一方ではわが国政府のこうした隠された意図は、プロである彼らの目にはありありと見えている。だが、そうした処理を施す過程で「言い訳づくり」のためであってもわが国が異次元緩和を続け、「バブル」を是が非でも起こし続けることも明らかだ。短期間とはいえそこにカネの匂いがする以上、彼ら越境する投資主体たちからすれば日本マーケットにマネーを入れ続けないわけにはいかないのだ。
しかも厄介なのは、わが国が一体誰によって本当のところ統治されているのか、外側から見ると分からないのである。明確な成長戦略を安倍晋三総理大臣本人が打ち出せないのは、そもそもそうした分野に定見を持った政治家ではないことによる。「知らないものは知らない」のであって、いくら官僚たちの尻を叩いたところで知恵の源である自分の頭に何もイメージがなくては何らの経済成長戦略が生まれないのも当然なのだ。
それでは官僚たちが何か自律的に決めているのかというと、決してそうではない。「情報公開」の時代に彼らが好き勝手に出来る余地は、一般に思われている以上に限られている。
他方でそうした官僚たちを批判するのを生業としているメディアはどうかというと、新聞・ラジオ・テレビのいずれをとっても影響力の劇的な低下に悩み続けている。これらメディアがわが国の意思決定を下しているということはまったくあり得ない。
そして同じことは、いわゆる「財界のリーダー」がいなくなって久しい経済界についても言える。あと思いつくのは「象徴天皇制」しか残されていない中、米欧のリーダーたちはこう言いながら、ただひたすら溜息をつくしかないのだ。「日本は謎(エニグマ)だ」と。
原田武夫
株式会社原田武夫国際戦略情報研究所(IISIA)代表取締役(CEO)
東京大学法学部在学中に外交官試験に合格、外務省に外務公務員T種職員として入省。12年間奉職し、アジア大洋州局北東アジア課課長補佐(北朝鮮班長)を 最後に自主退職。在任中は、六ヶ国協議や日朝協議等に多数出席した。「すべての日本人に“情報リテラシー”を!」という想いの下、情報リテラシー教育を多 方面に展開。自ら調査・分析レポートを執筆すると共に、国内大手企業等に対するグローバル人財研修事業を全国で展開する。 最新刊『ジャパン・ラッシュ――「デフレ縮小化」で日本が世界の中心となる』(東洋経済新報社)を2013年12月6日に上梓。 公式Facebookページ:https://www.facebook.com/iisia.jp
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