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スマホに背を向ける任天堂は間違っていない [日経新聞:フォーブス]
2014/3/6 7:00
最近の任天堂に関する世間一般の見解――逆説的とも聞こえる言い方ではある――はこうだ。ゲーム機製造事業から撤退しソフトは携帯端末向けに切り替えるか、またはゲーム機製造事業は死守しながら、マリオやその他、知名度を生かした版権で稼げるゲームやキャラクターをできるだけ早くアプリストアやグーグルプレイで売るべきだ。
これが世間一般的な見方だ。一方、この件に関してこれまでに書いた多くの記事で、私は賛同しかねるという率直な態度を取っている。
しかし、任天堂は専用ハードウエアを捨て、スマホで遊べるモバイル戦略を取るべきだという見解を多くの人が信じており、その中には任天堂に投資している人も含まれる。
「しっかりした開発チームによりゲーム内で収入を得る仕組みを作れば、任天堂は収益性の非常に高いゲームを創出できると信じている」。ヘッジファンドのマネージャーであるセス・フィッシャー氏は任天堂の岩田聡社長に宛てた手紙の中でこう述べた。「マリオをあとちょっと高くジャンプさせるために(利用者が)99セント支払うと考えてみてほしい」
■投資家望む「スーパーマリオ・ワールド・モバイル」
投資家にとっては、夢のような提言かもしれない。マリオを(ゲームから)取り出して、小さくして、「一口サイズ」のアプリ内課金に適したパッケージにするのだ。
いわば「スーパーマリオ・ワールド・モバイル」。マリオを手に入れるのは無料だが、ルイージやピーチ姫、キノピオなどで遊ぶのに少額を追加課金するイメージだ。ジェム(プレーを延長できる仕組み)や、ファイアフラワー(マリオシリーズに登場するアイテムの一つ)やタヌキスーツ(同)などにお金を払う。マリオの世界には、現実社会のお金を支払ってもらえそうな多様なアイテムがたくさんあり、人々はそうしたアイテムを買うだろう。フィッシャー氏はその点については正しい。
もちろん、この手法では任天堂という会社を表すすべてと、ビデオゲーム業界における信頼を勝ち取るため同社が長年努力してきたことをすべて破壊するだろう。完全に、徹底的に、台無しになる。
任天堂ブランドは据え置き型ゲーム機の最新版「Wii U(ウィー・ユー)」の低迷から回復することはできるだろうが、課金制を導入したら、立ち直れるのかどうか私は分からない。それこそがマイナス面だ。
■アプリ内課金が成功するゲーム、しないゲーム
アプリ内課金の仕組みは多くの携帯端末向けゲームや無料MMO(大人数が同時に参加するオンラインゲーム)で非常にうまくいっているのは事実だ。基本料金を無料にするモデル(F2P=free to play)は特に携帯端末向けのゲーム市場で、多種多様なタイプのコンテンツに有望だ。適切に設計すれば、ゲームの楽しみの一部になる。
例えば戦いながら村を発展させていくスマートフォン(スマホ)向けゲーム「クラッシュ・オブ・クラン」はF2Pをかなり巧みにつくっている。キャンディーを並び替えるパズルゲーム「キャンディークラッシュサーガ」はかわいらしいながら非常に高い収益を誇るゲームだ。その他複数のスマホゲームでは逆に悪くなっている。その例がエレクトリック・アーツの新しい「ダンジョンキーパー」だ。
「キャンディークラッシュサーガ」の画面。同じ色のキャンディーを並べたら消え、別のキャンディーが現れる。欧州を拠点とする開発元のキング・デジタル・エンターテインメントは2月、ニューヨーク証券取引所にIPOを申請した=AP
「まるで冷笑するように、あなたのお金を持ち去ってお返しに何もくれない、ゲームではなく詐欺」。ゲーム評論家のジム・スターリング氏はこう記した。「最も心なく、ワガママでぞっとするような人間たちがゲーム業界をダメにするために、この評判の良いゲームシリーズをねじ曲げ、悪用した」。
もしマリオがこの道筋をたどったら、同じような話を何度も読むはめになるだろう。
そのうえ、クラッシュ・オブ・クランのようなゲームは、この(アプリ内課金)モデルを念頭に徹底的に設計された。このモデル以前には、クラッシュ・オブ・クランのブランドは存在していなかった。マリオをはじめとする任天堂の長く愛されてきたゲームシリーズは、絶対にこのモデルでは同じようにならない。
私はゲーマーであり、マリオで遊んできた。マリオはパソコン以外で遊んだ最初のビデオゲームだった。私の世代にとって、マリオは最初に出会ったゲーム(あるいは、その一つ)でもあった。これまで数十年にわたりマリオはいつも身近にあった。ロールプレイングゲームから2D、3Dと様々な形ではあるが、我々ゲーマーにはなじみのあるものだ。
これまでずっと、たくさんのマリオのゲームで遊ぶ中で、私たちは一度だって、マリオにちょっと高くジャンプしてもらうためにお金を払うよう求められたことはない。
■無料プレーヤーが締め出される
ゲームの設計という視点で見た場合、どのような意味があるだろうか。料金を支払わない人には手に入らないアイテムやシーンを大量に残すようなレベル設計をする必要が任天堂にあるだろうか。プレーヤーが99セント払ってジャンプさせないと到達できないエリアが必要だろうか。
これがF2Pゲームの仕組みだ。こうしたゲームは、ゲームの多くの部分から無料プレーヤーを締め出すように設計するか、ゲーム内での進み方を非常にゆっくりとつまらなくして、料金を支払うことが唯一の理にかなった選択肢であるかのように作り上げる。こうした仕組みにあらがい、特に素晴らしいアイテムだけに課金するゲームは非常にまれだ。
もし任天堂が課金制を検討するのなら、採用すべきなのはこのアイテム課金だけだ。
例えばチーム連携で戦う「チームフォートレス2」風にマリオ兄弟向けの新しい帽子のような素晴らしいアイテムなら、ゲームで遊ぶことそのものや操作、バランスを損なうことはないし、ゲームをうまく達成したかどうかと関係なく、プレーヤーに報いることになる。任天堂のオリジナルゲーム内の特別アイテムは実際、よく売れるかもしれない。
ピーチ姫の新しいスタイルの服? 色とりどりのキノピオ? マリオとルイージ兄弟の特別版マスク? こうしたアイテムが登場しても誰の反感も買わず、任天堂ブランドを修復不能なほどに損なうこともない。ファイアフラワーは、ユニコーン型のような特別なファイアボールを打ち出すかもしれない。
■F2Pへのアンチテーゼ
しかし、それでもリスクがある。任天堂はゲーム業界において、ゲームの完璧さで称賛されている。洗練され、バグがなく、最初から最後までしっかり設計されたゲーム。利用者にジェムやアップグレード、パワーアップできる権利などを購入させるためにコンテンツの多くが遮断されていたり、利用者が不利な状況に置かれていたりする携帯端末向けF2P型ゲームに対するアンチテーゼである。
それが売り上げを伸ばす手段であることは疑う余地がない。しかし、ゲームを作る正しい道だろうか。
今のところ、任天堂は私と同様、その点で懐疑的だ。同社は携帯端末を、自社のプラットフォームを使ったゲームの販促のためのマーケティング手段として活用しようとしているだけのようだ。最近の任天堂のマーケティングがあまりさえないことを考えると、これは正しい考え方といえるだろう。
そのモバイル活用で十分かについては、今後を注視する必要がある。
By Erik Kain, Contributor
(2014年2月27日 Forbes.com)
(c) 2014 Forbes.com LLC All rights reserved.
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK0500S_V00C14A3000000/?dg=1
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クラウド時代に迷う任天堂(真相深層)[日経新聞]
過去の成功体験、足かせ
2014/2/26 3:30
任天堂の不振が続いている。2014年3月期は3期連続の営業赤字となる見通し。ゲームを楽しむハードとしてスマートフォン(スマホ)が台頭し、クラウド配信技術も高度化が進む。激しく変化する事業環境に対応するか、中興の祖、故・山内溥氏が築き上げた事業モデルを継続するか。任天堂は揺れている。
■ドラクエの変心
「なんか泣けてきた」
2月22日、ソニーが新型ゲーム機「プレイステーション(PS)4」を発売。これに合わせるかのように任天堂が始めた割引キャンペーンがネット上で話題となっている。目立つのは哀れむ声。2〜3割引きのゲームソフト群には昨年9月に発売したばかりの主力タイトルも含まれるからだ。
1月17日の大幅な業績下方修正の発表時に、任天堂の岩田聡社長は業績立て直しに向けた抜本策を示すと表明した。しかし、その後の施策に目を引くものはなく、株価は軟調なままだ。
ハード、ソフトの販売は悲惨な状況だ。今期の販売見込みは12年末に投入した主力の据え置き型機「Wii U」が当初計画比7割減の280万台、対応ソフトも同5割減の1900万本。携帯型機「ニンテンドー3DS」も不発に終わり、当初1000億円の黒字を掲げていた営業損益は350億円の赤字に沈む。
年末商戦のさなか、任天堂の戦略の根幹を揺さぶる出来事が起きた。有力ソフトメーカー、スクウェア・エニックスの「ドラゴンクエスト」。国民的ゲームの第10作が、タブレット(多機能携帯端末)でも遊べるようになったのだ。
もともと第10作は13年3月、Wii U向けに発売された。しかしクラウドでゲーム内容を逐次配信することで、急速に普及するスマホやタブレットでも楽しめるようになった。あるソフト大手首脳は「我々はもはやゲーム機専用のソフトメーカーではない」と語る。
任天堂のライバル、ソニーは昨年11月、PS4を欧米で先行発売。3カ月弱で530万台を売った。今期の目標としていた500万台はすでに上回った。
PS4の価格は399ドル(約4万円)。PS3より100ドル安い。加えてスマホとの連携や、ネットを通じた友人との交流機能が充実しているのが人気の理由だ。ソニーは今夏から米国でゲームのクラウド配信を始める。まずは自社のゲーム機向けの配信だが、その後にスマホやタブレットへも広げる方針だ。
クラウド時代のゲームソフトはネットでつながった先の大容量コンピューターが動かす。手元にあるゲーム端末の性能向上はあまり意味を持たない。「将来はゲーム機そのものが必要なくなるだろう」(ソニー幹部)
しかし任天堂の岩田社長は「ハードとソフトを一体にした戦略が経営の中核であることは変わらない」と強調。ハードとソフトの両輪で稼ぐ従来の事業モデルに固執する。
岩田社長はもともとゲームソフト開発者。先端技術にも精通し、クラウドの破壊力も知る。あるソフト大手首脳は「ネットに懐疑的だった山内さんや旧世代の任天堂幹部への配慮で、ネット対応が不十分なWii Uを発売せざるを得なくなった」と解説する。
■手元資金は豊富
任天堂はかつて、現在と同じように苦境に立たされたことがある。後発のソニーが発売した「PS」がヒットし、追い込まれて出したハードの「NINTENDO64」などが不発となった時だ。
窮状を救ったのは8千億円にのぼる手元資金だった。浮沈が激しいゲーム業界で生き残るために山内氏が蓄えた資金で食いつなぎ、岩田社長の下で04年に「ニンテンドーDS」、06年に「Wii」を発売した。
2画面の携帯ゲーム機「DS」、従来機とコントローラーの使い方が全く異なる「Wii」は、ユーザーに家庭用ゲーム機の新しい遊び方を提案。その結果、多くの企業がリーマン・ショックの影響を受けた09年3月期には最高益を達成した。
山内氏が築き上げた事業モデルを続けると宣言し、クラウド時代に立ちすくむ任天堂。再びDSやWiiのような大ヒット商品が出る気配は今はない。潤沢な1兆円規模の手元資金に頼らざるを得ない「ゲーム業界の盟主」は悩みの中にいる。
(北爪匡)
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