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スマホ値引き 年1兆円
3社、乗り換え客優遇 利用料は割高、顧客に不満も
スマートフォン(スマホ)の安売り競争で利用者の不平等感が強まっている。他社からの乗り換え客に1台当たり7万〜8万円ものキャッシュバック(現金還元)を出すなど顧客争奪戦は過熱気味。NTTドコモなど携帯大手3社が値引きに投じた資金は合計で年1兆円に達した。利用料は高止まりし、そのコストを長期ユーザーが負担するというゆがんだ競争に陥っている。
「家族3人なら最大24万円還元」。都内の携帯販売店にはこんな集客文句があふれる。MNP(番号持ち運び制度)で一緒に携帯会社を乗り換えると多額の現金や商品券がもらえる。春商戦で金額は増えつつある。
人気のスマホ、米アップル「iPhone(アイフォーン)」の価格をゼロ円とする店も多い。これまでローンを組まない一括払いの価格は1台約7万円。発売からわずか半年でただになった。
安売り合戦のカラクリはこうだ。値引き原資は携帯大手が販売店に「手数料」などの名目で支払う販促費。店は値下げで目減りする売り上げの大半をこれで穴埋めする。資金力がある携帯大手が販促費を出すから、小規模の販売店でも値引きを続けられる。
一体どのくらいの手数料が販売店に支払われるのか。ソフトバンクの2012年度の財務資料によると、新規顧客の獲得手数料は1台当たり2万6100円、既存客の機種変更1台当たり2万8300円。総額で3545億円になる。算定方法は異なるが、NTTドコモも総額3600億円前後だったもよう。携帯大手3社が値引きに1兆円規模の巨費を投じているのは確かだ。
さらに携帯大手は別の形でも乗り換え客を優遇する。2年契約を条件に毎月の利用料から金額を割り引く。ドコモは「月々サポート」、KDDI(au)は「毎月割」と呼ぶ。この春商戦では一括ゼロ円のスマホでも月々の割引が受けられるケースが多い。
このサービスは携帯各社の毎月の収入を押し下げる。その金額はドコモだけで年5千億円(13年度見込み)。大手3社でこちらも計1兆円に届く可能性がある。
各社が乗り換え客の獲得に血眼になっている陰で、長期利用者が置き去りとなる。端末の値引き競争が激しい分、各社は携帯の料金体系全体の引き下げには及び腰だ。収益へのマイナス影響が大きいためで、MNPの優遇コストを事実上負担している長期利用者の不満につながっている。
需要一巡で安売り過熱
過剰とも見える安売り競争の主因はスマホ需要の一巡だ。携帯大手3社の2013年度の携帯販売台数は4年ぶりに前年を下回りそうだ。契約者増にはライバルの顧客を奪うことが不可欠だ。
MNPで獲得した契約者が最初の2年間にもたらす利益は少ないが競争上優遇策は欠かせない。この商法を逆手に取り2年ごとに携帯会社を渡り歩いて割安にスマホを使い続ける人もいる。
業界からも危ぶむ声が上がる。「安売りの過熱で(携帯大手の)ブランド価値が低下しかねない」。携帯販売大手ベルパークはアナリストにこんな分析を示した。過去にも「ゼロ円携帯」はあった。07年に総務省が各社に価格を是正させたが、そのあおりで販売が急減した。この「官製不況」の経験も各社が戦略転換をためらう理由だ。
激しい値引き競争でも3社の13年度の営業利益見通しは計2兆円を超すなど財務は安泰。しかし割高な国内携帯料金への風当たりは強まりつつある。大手から回線を借りて割安なスマホサービスを提供する仮想移動体通信事業者(MVNO)を選ぶ人が増えているのも不満の表れとされる。
料金引き下げのためには個々の企業のコスト削減に加え、端末の極端な安売りの見直しは避けては通れない。顧客をつなぎ留める独自サービスなど賢い稼ぎ方が問われる。
(小谷洋司)
[日経新聞3月3日朝刊P.11]
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