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世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第66回 人手不足の解消方法(後編)
http://wjn.jp/article/detail/2056893/
週刊実話 2014年3月13日 特大号
2月17日に'13年第4四半期(10月〜12月期)の経済成長率(実質GDP成長率)の速報値が公表された。非常にまずいことになっている。
エコノミストの事前予測の中央値は、前期比0.7%、年率換算2.8%であったにもかかわらず、現実は前期比0.3%、年率換算1%。エコノミストたちの最低予想値まで下回ってしまった。
すなわち、アベノミクスによる経済成長路線は失速しつつある。
そして、前期比わずか0.3%という経済成長率の速報値も、確報値で下方修正される可能性が極めて濃厚なのだ。
理由は、GDPの需要項目の一つである公的固定資本形成(公共投資から用地費などを除いたもの)の統計手法にある。
2013年における経済成長の柱の一つであった公的固定資本形成は、第4四半期は2.3%増と、第3四半期(7.2%)、第2四半期(6.9%)と比べ、明らかに失速してしまっている。結果、財務省が地方自治体に対し、
「予算を繰り越しても使ってほしい」
と、異例の予算繰り越しを呼びかけていることは前回触れた。すなわち、公共事業について、自治体に単年度主義の返上を促しているのだ。
公共事業予算が消化されない理由は、人手不足および公共調達に際した予定価格が低すぎることである。人手不足で人件費が高騰し、それにもかかわらず予定価格が(十分には)上がらず、応札不調が増えてしまっているのだ。
さらに、財務省は補正予算の早期実施について、各官庁に「数値目標」を設定するという、これまた前例がない要請をしている。財務省が「カネを使え!」と、自治体や諸官庁に呼びかけているわけだ。前代未聞の事態と言っても構わないだろう。
問題なのは、第4四半期の2.5%という公的固定資本形成の統計が、速報値段階では「受注ベース」という点である。
第4四半期の公共事業の進捗が人手不足で遅れると、業者が受注、着工している公的固定資本形成が、確報値の段階でGDP統計にカウントされないことになってしまう。
公共事業が当初の目論見通り進んでいない場合(その可能性は極めて高い)、前期比で0.3%増だった'13年第4四半期のGDP成長率は、ゼロに近づく。
現在のGDP統計の速報値は、人手不足がそれほどでもなかった'06年の調査結果をベースに進捗率を計算している。「このくらいは進捗するだろう」という目安が、'06年の調査結果に基づいているのだ。
'13年後半以降、公共事業の需要が増えたこともあり、'06年よりも労働者不足が進んでしまっている。確報値における経済成長率の下方修正は、ほぼ間違いないだろう。
ところで、安倍政権は原発再稼働に踏み切ろうとしている。理由の一つは、原発を動かさないため、LNG(液化天然ガス)の輸入が激増し、貿易赤字が拡大しているためだ。
貿易赤字は、GDP統計上は「控除項目」になる。すなわち、貿易赤字分、わが国のGDPが減る。日本は原発を稼働させないため、LNGの売り手たちに足元を見られ、国際市場において「最も高い価格」でガスの購入を強いられているのだ。
さらに、懸念されていた人手不足が深刻化し、公共投資、公共事業を「予定通り消化できない」事態になっている。
財務省は(珍しく)予算消化を叫んでいるが、現実に働き手が足りない以上、公共事業の消化はなかなか進まないだろう。
「公共事業の消化が進まない」
とは、日本国民にとって他人事ではない。
何しろ、現在の人手不足問題が解決しない限り、東北の復興は進まず、防災や耐震化、老朽インフラのメンテナンスといった国土強靭化も軌道に乗らず、さらには東京五輪に向けたインフラ整備すら遅滞せざるを得ない。
アベノミクスが失速する中、安倍政権はいかなる策を打つべきか。
人手不足解消のための「王道」は、まずは低賃金に嫌気がさし、生活保護に流れた元鉄筋工、左官の方々に、労働市場に戻ってもらうことだ。
そのためには、公共調達の予定価格を十分に引き上げ、高騰していく人件費に企業側が対応できる環境を整え、生活保護に流れた「技術者」たちが、
「労働市場に戻り、働いた方が豊かな生活が『継続的に』できる」
と確信できる環境を整えなければならない。
ポイントはやはり「継続的」という部分で、政府が公共事業について長期計画を立て、残事業費を示し、土建企業のワークシェアリング(いわゆる談合)を認め、労働者側はもちろん、企業側も「将来も需要が継続する」という安心感を与える必要があるわけだ。
一応、安倍政権は上記の「王道」の政策も推進している。
筆者が各地を回り、土木、建設の経営者たちに聞いて回ったところ、誰もが「外国人労働者」に難色を示す。理由は(これまた口をそろえて)、「危ないから」とのことである。土木や建設の現場では、各人の能力に加え、「コミュニケーション」が極めて重要になる。コミュニケーション能力に乏しい外国人労働者が現場に入った場合、不慮の事故が起きる確率は間違いなく高まる。
そもそも、自然災害大国のわが国において、インフラ整備を「外国」に頼ることは、安全保障上の問題が生じる可能性がある。
「日本国の人手不足は、日本国民の手によって回復されなければならない」
これらの原則を守った上で、政府には早急に人手不足解消の政策を推進して欲しいと考えるのである。
三橋貴明(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、わかりやすい経済評論が人気を集めている。
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