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ビットコイン仲介業者であるマウントゴックスの「夜逃げ」についてです。
ビットコイン全体に対する影響や、そもそものビットコインの「正体」など、書くべきことは山ほどありますが、本日はマウントゴックスの「夜逃げ」だけです。
2月25日にビットコイン仲介業者のマウントゴックス(本社・東京渋谷)がサイトを突然閉鎖し、預かっていた全世界100万人以上の顧客のビットコインもろとも「消えて」しまいました。コンピューター時代の「夜逃げ」は簡単なようです。
マウントゴックスは昨年夏頃までは全世界シェアの7〜8割を占める世界最大の仲介業者で、今でもそれなりの大手でした。「消えた」ビットコインの時価総額は400億円以上で、これは全世界のビットコイン総額の6%に相当します。マウントゴックスの「公式発表」では、ハッカーの攻撃をうけて顧客のビットコインがすべて「盗まれた」といっていますが、まあ「たわごと」でしょう。
問題はマウントゴックスが、ビットコインの取引所・決済機関・保管機関をすべて兼ねていたことですが、これは世界のほかのビットコイン仲介会社でも似たようなものです。
そもそもマウントゴックスは、2月7日に「技術上の問題」と突然にビットコインの引出(換金)を停止しており、直前の1ビットコイン=900ドル台から2月21日には一時100ドルを割り込むまで価格が急落していました。
ところがその間もマウントゴックスはビットコインの購入だけは受け付けており、また「すぐに引出(換金)を再開する」との繰り返しの予告を信じて、かなりの顧客がビットコインを新たに購入していたようです。まさに「夜逃げに餞別」となってしまいました。
つまりマウントゴックスではビットコインの引出(換金)を停止していたので「売り物」があるはずがなく、しかしその間もマウントゴックス以外の仲介業者のビットコイン価格は500〜600ドルだったので外部から手当てすると「逆ザヤ」になるため、顧客の購入代金をすべて「夜逃げ資金」にしていたことになります。さらに「夜逃げ」までに預っていた顧客のビットコインを(一部はハッカーに盗まれたのかもしれませんが)外部の仲介業者を使って換金し、これも「夜逃げ資金」にしていた可能性まであります。
そもそもマウントゴックスとは、2009年にジェド・マケイレブなる男が設立したゲームカードの交換サイトで、2010年7月にビットコインの仲介業務を始めました。当時のビットコイン価格は1ドルくらいで取引量もわずかでした。要するに大した儲けにもならず2011年にマウントゴックスを売却してしまいます
それを買ったのが日本在住フランス人のマーク・カルプレス(28歳のコンピューターオタクで猫好きらしい)で、その後はビットコインの価格と取引量の急拡大により2012年には早くも世界最大のビットコイン仲介業者となりました。そし2月25日に400億円相当のビットコインもとろも「夜逃げ」してしまいました。
まだ東京にいるようで「解決に努力している」とコメントしているようですが、被害にあった顧客を「もう一度嵌める」仕組みを作っているだけでしょう。顧客は日本人だけではありませんが、ビットコインは日本では「通貨」ではないため金融庁も動けず、完全に泣き寝入りとなります。
ただマーク・カルプレスに対してはNY連邦検察が召喚状を出しており、日本としては早くカルプレスの身柄を拘束して米国に協力の姿勢をみせておかないと、マウントゴックスは東京が本社の会社なので米国から巨額罰金(あるいは賠償金)が日本に課せられる恐れがあります。金融庁には監督責任がないでは通用しません。
本誌では、昨年12月24〜25日付け「ビットコイン狂騒曲に潜む本当の恐ろしさ 1」、「同 2」で「ビットコインは現在の国際通貨体制、世界の銀行システム、世界の金融監督・捜査・税務当局すべてに対する挑戦」と誉めすぎたのですが、ここまで実務がお粗末でモラルが低いとは思っていませんでした。
マウントゴックスの「夜逃げ」は、ビットコイン全体に影響が波及することはなさそうです。しかしビットコインそのものに問題がないかというと、それも違います。
ビットコインと米国政府との「戦い」は水面下で激化しており、ビットコインそのものの犯罪性、さらには今まで一切明らかではなかったビットコインの「黒幕」が炙り出される可能性もあります。またマウントゴックスは日本にある会社なので、日本にとっても決して「対岸の火事」とはなりません。
(略)
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