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http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYEA1R03R20140228
2014年 02月 28日 13:28 JST
[東京 28日 ロイター] -金相場が活況を呈している。背景には、米経済の先行き不透明感や、紙幣や有価証券などの「ペーパーマネー」に対する不安感や不信感があるとみられ、現在の国際金融秩序を支える基盤的要素にも様々な観測が浮上している。
また、新秩序を模索する中国による需要の急増もあり、金相場の上昇は、昨年の大幅下落からの単純な揺り戻しでは説明しきれない構造変化の兆しが見え隠れする。
<中国の金需要急増>
金現物は26日、一時1オンス=1345.35ドルまで上昇し、昨年10月末以来、4カ月ぶりの高水準に達した。
昨年1年間では、ニューヨーク金先物(中心限月)は28%下落した。一方、ダウ平均株価.N225は26%の上昇となり、2013年は欧米投資家による金から株式への資金シフトが見られた年だった。
昨年の金相場急落局面で、買い向かっていたのが中国やインドだ。
ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)によれば、中国の2013年の総需要は1065トンとなり、インドを抜いて初めてトップに躍り出た。
中国は、それまでの金に対する政策を2009年末に転換し、輸入規制を取り払い、国内投資家の保有を促す方向にカジを切った。外貨準備に占める金の割合(公的金保有)も増加している。
他方、中国は基軸通貨である米ドル建ての資産保有拡大には慎重な姿勢を保っている。
「中国は、外貨準備の拡大に呼応して、金輸入を積極的に増やす政策をとる一方で、米国債については、1兆2000億ドル台から増えないように調整している」とマーケット・ストラテジィ・インスティチュート代表で金融・貴金属アナリストの亀井幸一郎氏は指摘する。
外貨準備で金を持つことにより、オペで供給した資金を不胎化する効果があるほか、新たな通貨秩序の布石として、米国債の保有を一定限度に抑えこみ、金を増やしている可能性もある、と同氏は分析する。
米財務省の統計では、中国は昨年12月に米国債の保有高を478億ドルと大幅に削減し、過去最高だった11月末の1兆3167億ドルから、1兆2689億ドルまで圧縮したことが明らかになった。
中国人民銀行(中央銀行)によると、中国の外貨準備高は2013年末時点で3兆8200億ドルとなり、2012年末から15.4%上昇した。
<ペーパーマネー不信>
外為市場では「中国の真意は測りかねるが、中国に限らず、世界的な気象異変や、ペーパーマネーに対する不安感や不信感が、金を含む現物の需要を高めていることは確かだろう」(機関投資家)という。
原油など19商品の先物相場で構成されるロイター/ジェフリーズCRB指数.TRJCRBは1年ぶりの高水準となる301―302ポイント台を推移。コモディティ全般に資金が流入しているのがわかる。
折しも、現物のアンチテーゼで「究極のペーパーマネー」とされるインターネット仮想通貨・ビットコインでは、混乱が発生している。
ビットコインの大手取引所で東京に拠点を置く「マウント・ゴックス」は今月7日、引き出しの無期限停止を発表し、25日にはウェブサイトが突然アクセス不能になった。
麻生財務相は28日の会見で「ビットコインは通貨として誰もが認めているものではない」とし、ビットコイン問題の表面化が思ったより早く来たとの見方を示した。
市場では、「ビットコインは中銀など公的な後ろ盾がないが、後ろ盾があっても、異次元の量的緩和によって、通貨を極限まで希釈化している現状では、米国債にしろ、日本国債にしろ、本質的には、ビットコインと大差が無い」(国内金融アナリスト)と、ペーパーマネーのバブル崩壊を危惧する声も上がっている。
<ファンドと金相場>
昨年の金相場動向をより細かく見ると、海外ファンド勢は8月末まで、米国の量的緩和やユーロ圏での債務危機に備えて金を購入していた。しかし、その後は、米景気回復やユーロ圏の安定を先読みする形で売りに回ったため、「年末のニューヨーク金先物市場で短期筋は、これ以上は売れないほどショート(金の売り持ち)に傾いていた」(市場参加者)という。
2014年に入って、米連邦準備理事会(FRB)がテーパリングを開始すると、金相場が一段安になるとの市場の思惑は外れた。原因は、金市場のショートが飽和状態に達し、新たな売り手が現れなかったことだ。
焦った参加者は、渋々ショートの巻き戻しにかかった。その足元では、アルゼンチン、南ア、トルコなど新興国市場が不安定になったため、ショート・ポジションがさらにあぶり出され、金相場は上昇のピッチを加速した。そこへ米国の弱い景気指標が並び始めたため、もう一段の上昇モメンタムが発生して現在に至っている。
最近の金融市場では、規制によるコスト上昇を嫌った大手金融機関がトレーディング部門を縮小・撤退する動きが目を引く。
しかし、金は例外で、短期筋の関心は依然高いようだ。
「金融商品に比べ、規制のゆるい金にファンドの資金が戻ってきている」と亀井氏は言う。
金市場ではETF(SPDRゴールド・シェア)の残高が前週末21日、週明け24日と連続で、合計6トンも増加した。ニューヨークCOMEXの金ロングも増加傾向であり、金市場に資金が回っているのは間違いない、と同氏は指摘する。
金相場の見通しについては、米国の景気動向とFRBによる金融政策のかじ取りが鍵を握るが、1350ドル、1370ドルのテクニカルラインを超えれば、1400ドルが照準に入ってくるとみられている。
<金の値決めと中国のプレゼンス>
金市場における中国のプレゼンスが、今後も一段と高まりそうだ。
ドイツ銀行グループは、長期契約価格などの指標に使われるロンドン市場での金の値決め(London Gold Fixing)業務から撤退することを決めた。
世界の主要銀行5行が協議し金を売買して決めるLondon GoldFixingは世界の鉱山業者、宝飾業者、金融機関、中央銀行が金を売買する際の指標となっている。
約100年にわたって採用されている指標価格の設定方法については、人為的な操作が行われた可能性について、英米独の規制当局が目下調査中で、Fixingに携わる主要行は設定過程の改善に向けて運営委員会を設置した。
市場では、ドイツ銀行が手放す「金の値決めの会員権」を引き受ける可能性があるのは、南アフリカのスタンダード銀行であるとみられている。同行には中国工商銀行(ICBC)の資本が入っており、金の価格設定においても中国のプレゼンスが高まりそうだ。
(森佳子 編集:田巻一彦)
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