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(回答先: ビットコイン、国会で議論へ−民主党の大久保議員が質問書提出 (Bloomberg) 投稿者 五月晴郎 日時 2014 年 2 月 27 日 04:50:08)
http://agora-web.jp/archives/1580708.html
慶応大学特任講師である斉藤賢爾さんのこの記事(ビットコイン、この怖がらせ方は違うのでは?)に深く頷いたので、賛同の意味でこのエントリを書いている。
多くのひとが、ビットコインについて基本的な部分で、誤解している。斉藤さんの指摘どおり、
「謎の通貨」「相場が乱高下」「違法取引や資金洗浄への利用」といった言葉が飛び交っている。しかし、ビットコインはオープンソースソフトウェアである。原理は論文に載っているし、多くの技術者たちがオープンな環境で開発に関わっている。(斉藤賢爾)
そう、ビットコインは、オープンソースソフトウェアなのだ。つまりLinux やJavaといったソフトウェアと一緒。
その動作原理は、サトシナカモトというひとが、「ビットコイン:P2P 電子マネーシステム」という論文の中で発表したものだ。だれでもコレは読むこともできるし、努力すれば理解することができる。
ビットコインは、この論文に示された理論を、実際のソフトウェアとして実装したものに過ぎない。それもオープンソフトウェアでLinuxなどと一緒だ。ソースコードはすべて公開されており、もちろん、だれでも疑わしいことがあればそれを指摘できるし、疑わしいものは使用しない権利がある。
誰かがコインを発行して胴元になっているわけでもない。そしてビットコインのシステムとは、このソフトウェアを使っているユーザーからなるP2Pのネットワークのことであり、誰かの手によって恣意的に運用されているわけでもない。
匿名性についても、多くの人が誤解をしている。ビットコインは追跡可能なのだ。
また、違法な取引に関しては、ビットコインではすべての取引情報がネットワーク上で共有され、ウェブでも公開されている。法整備は必要だが、捜査当局が取引情報をモニタリングすれば、現金よりもはるかに追跡が容易だろう。
そもそも、現金以上に違法取引や資金洗浄に向いている支払い手段はない。だが、「日銀券で麻薬が買われることもある。だから日銀券は怖い」と主張しても、だれも耳を貸さないだろう。自分が適法に使っている限り、犯罪とは無関係だからだ。(斉藤賢爾)
このようなことは、すくなくとも、サトシナカモトが発表した論文を読めば、原理が書かれている。
もちろんテクニカルな論文なので、一読して理解することは難しいだろうが、わからないならば人に聞くなりして理解に努めたほうがいいと思う。
基礎的な理解の上に、じゃあ、どういう問題がおこるのか、どういうことに対処していかなくてはいけないのかというのがあるはずである。それを飛ばして議論するのは、議論にならない。
ビットコインは単なるデジタルマネーとは根本的に異なる。その技術的、社会的な意味は、マーク・アンドリーセンのこれらの言葉に集約されているだろう。
「ビットコインは、これまでの関係や、センターハブや、信頼できる権威なしで、インターネット上でのビジネスを可能にする最初の実践的な手法だ。これまでの電子商取引や支払いは、すべて既存の中央権力に、なんらかの形で依存しなければならなかった」
「インターネットのような信頼の置けないネットワーク(untrusted network)で、見も知らぬ相手(unrelated parties)と取引する場合、一体、どうやって一定の信頼を確保するのか?
その問題こそが「東ローマ帝国大将間の問題」に他ならない。ビットコインは初めてひとりのインターネット・ユーザーが別のインターネット・ユーザーに固有のデジタル・プロパティを譲渡することを可能にしたという点だ。
その譲渡は安全かつセキュアーであることがシステム上保証されており、全てのユーザーが「所有権がAさんからBさんに移ったのだ」ということをたちどころに認知でき、誰もこの委譲の正統性に疑問を挟むことは出来ない仕組みになっている。このブレイクスルーの持つ意味は深遠だ。」
このポイントへの無理解は目を覆うようなものばかりだ。
たとえば、今日の日経新聞電子版(発行者なき通貨ビットコイン 世界で「採掘」続々)でも、ステレオタイプが繰り返されている。引用しよう。
「国も企業も発行しないビットコインはどこから誕生するのか。実は数式をコンピューターで解析すれば誰でも入手できる。地中から掘り出す金になぞらえ、作業は「採掘」と呼ばれる。日本でも自宅にコンピューターを並べ、解析にいそしむ「採掘者」が増えている。ただ、発行量が増えるほど採掘は困難になり、最終的には2100万ビットコインという上限がプログラムされている。
もっとも、こうした採掘の仕組みも上限額も誰かが保証しているわけではなく、永続するとは言い切れない。記者が試しに2000円を出して購入した0.026ビットコイン。スマホを見ながら「あした、このビットコインが消えていたら」と少し不安になった。」
太字にしたが、単なる記者の無理解による不安で記事を書いている。まったく呆れるとしかいいようがない。
ビットコインの本質的なイノベーションは、誰か特定のひとの保障がない環境、信頼できる権威付けがない状況なのに、偽造不可能で安全に取引を実現する仕組みであるということだ。
この記者は、信頼できる保障がないから、信頼できないというトートロジーを述べている。それがなくても信頼できる取引を実現するからイノベーションなのだ。
テクノロジーには当然、良い面と悪い面がある。そのイノベイティブな面を理解し、そのイノベーションを社会の役に立つように育てていくとともに、問題点は解決していく。そのようにイノベーションの良い方にポジティブに目をあてて、未来を開いていく視点が必要だろう。
ビットコインも同様、完璧な仕組みではない。米国では、多くのベンチャーが立ち上がり、より安全に使える仕組や、ビットコインをベースとした拡張レイヤーなどの開発にしのぎを削っている。
ビットコインは怪しいとして静観しているのと、テクノロジーの本質を理解し、イノベーションを広めていくのではだいぶ違う。私は、ビットコインの仕組みを理解して、これはインターネットの発明以来の本質的なイノベーションだと直感した。なので、いろいろツッコミをうけようが、ビットコインについては書き続けて行くつもりである。エヴァンジェリストとして、イノベーションを広めたい。
なお、ビットコインの論文については難解で理解できないという声が多い。そこで、この論文の概要を、予備的な知識がない人にとっても理解できるように解説するということは、大事だとおもう。その一環として、先日、日本デジタルマネー協会で、セミナーを行ったところ、非常に好評だった。急遽2回めを企画したので、ビットコインの仕組みに興味があるひとは参画ねがいたい。
サトシ論文を元に、ビットコインの取引の仕組みや暗号技術、ハッシュや、ブロックチェーンというP2Pで取引の正当性を保証する仕組みなどについてわかりやすく話す。ビットコインの採掘やセキュリティといった話も、これを理解すれば見通しがたつはずだ。
- 技術としてのビットコインと、経済としてのビットコイン。 (アゴラ) 五月晴郎 2014/2/27 05:58:40
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