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2014年02月26日
2014年1月、ジョージ・ソロスが日本株は「売り局面、探し」と云う趣旨の発言をしたの、しないの噂が駆け巡って以降、安倍晋三登場以降、日本株の上げ相場を牽引してきた海外資金の動きに方向感がなくなったのは事実だ。必ずしも、売り一辺倒ではないが、以前のように全面買い越しムードは沈静化している。日経平均の上げ幅、下げ幅を観察していて思うことは、日経平均であるにも関わらず、仕手株のような値幅で、上下する点が目につく。
個人株主たちの力量で、日経平均がこのような動きをすることは考えられないので、何らかの資金が株価を一定のレンジで買い支えているのではないか、と云う疑問が生じる。当然のことだが、巷にあって、このメカニズムの仕組みをあからさまにする能力は持ち合わせていないが、海外勢の買いでもなく、個人の買いが原動力と云うこともあり得ないとなると、その行為の主体がどちらの方向を指し示しているか、消去法に頼ることになる。証券会社の自己売買部門が動いている可能性もあるが、根拠なく彼らがリスクを負うと云うのは、地合いから考えてあり得ない。
政府にせよ、金融当局にせよ、公的資金にせよ、株価が一定のレンジで安定的に動くことは好ましい状況である。しかし、法律上の問題点はクリアしているとしても、金融当局や政府が、その手持ち資金で株式投資が出来ると云うメカニズムには、何とも釈然としないものを感じる。倫理的な立場から眺めれば、このような行為はインサイダー取引の典型のようなものだろう。自ら、次に打つ経済政策を知ったうえで、株式投資をしている点では、個人の犯罪とされるインサイダー取引と構成要件は同じなのだ。
勿論、相違点もある。個人のインサイダー取引による、ゲインは個人の懐に入るわけだは、政府や金融当局の行うインサイダーは、何らかの形で国家または金融当局の金庫に収まるので、まぁ国の財産が増えたともいえる。しかし、だから、そのような手法は正当性がある、と云う主張にも疑問はある。なぜなら、自由に民間資金が株式の売買を行うことを提供するために存在する株式市場の透明性や自由度を痛く傷つける惧れがあるわけで、市場の原理に公的な影響力が反映するのだから、本質を歪めることは確実だ。
実際問題、どこの資金が、どれだけ株式市場に流れているか、的確に指摘する証拠はないが、仮にそのような流れで日本の株式市場が自由度を失った場合、国際的信用において、疑念を持たれるのは当然だろう。実際には、日本に限らず、多くの自由主義国家でも、なされている行為だとして、投入できるだけの資金が潤沢でない限り、その行為は出来ない。その点では、日本の金融当局、特に日銀は使い道のない資金が「ブタ積み」されているのだから、資金は無尽蔵と云う理解しても良い。投資信託系の資金も、NISAの運用開始以降、日本株に有利に働いているのも事実だ。
しかし、日本国内経済の体質は、総体的に低下の一途を辿っているのは事実で、最終的に、此処の企業利益と株式価格の間に、大きな齟齬が生まれ、最終的には、大暴落と云う憂き目に遭う可能性は大いにある。この時、公的機関の株式投資の損害は、概ね国民の身に見えない財布に響くわけである。利益が国民の隠れた富であるなら、損害も隠れた瑕疵として残るのである。そして、このような仕組みにおいては、誰一人、その責任を負う者は不存在で、ただ虚しく損害だけが、取り残されるのである。
以上の推測は、あくまで筆者の憶測にすぎないが、日銀であれ、各種投信扱い金融機関では、一定のルールのもと、そのような投資が可能なものになっているので、公に定めたルールに則って、運用がなされているかまでは、中々実体は掴みきれない。ゆえに、現実は日銀が大量に日本株を購入することは可能なのである。なにせ自己増殖させた「ブタ積み」の資金が日銀には眠っているし、民間金融機関が、突如必要だと騒ぎ出す心配などない場合は、如何様な運用も可能になる。ある意味で、このような裏ルールが、暗黙の了解事項になっているとすれば、民間投信機関も安心して株式に資金を流せるし、穿った観察力を持つ個人も参入可能となる。誰も損を蒙らないように見えるが、個人は、最終的に損を自己責任で消化しなければならない。
日銀は、いまだに日本の経済成長は順調に推移していると強弁に努めている。まぁアナウンス効果への期待も含まれているのだろうが、そのアナウンスに踊った個人が馬鹿を見ると云うのも罪な話だ。自己責任だから、それはそれで構いやしないが、イケイケどんどんを喧伝するには、あまりにもお粗末な、貿易収支であり、経常収支を曝け出したうえでも、この強気姿勢には、ほとほと愛想が尽きる。しかし、国民の多くが「景気と雇用」に興味の殆どを集中させていると云う、阿保らしい世論を形成してしまった以上、今さら引くに引けない情勢なのだろう。
26日に、日銀の石田審議委員は、わざわざ講演で「4月の消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動減などで4─6月の経済成長率が一時的にマイナスに落ち込んでも景気回復トレンドが失われることはない」と強調している。一時的消費税導入の反動はあるが「基調的には緩やかな回復を続けていく」と強調している。あれだけの円安にも関わらず、輸出の回復が思わしくないのはタイムラグであり、「これまで今一つだった輸出や設備投資が伸びてくることが期待される」と語った。どうも、日銀の頭脳には、日本の製造業の地殻変動がかなりの規模で起き、定着している事実から目を背けているように思える。
たしかに、為替の影響を受ける輸出産業の伸びにタイムラグがあるのは事実だ。しかし、その理屈が通用するのは、製造業が同一の生産構造においての話で、近時の製造業の生産構造の変化を過小評価している疑いがかなりある。最近の急激な円安誘導により、天然ガスの輸入額の増大が貿易収支の元凶のように喧伝されているが、将来的に見れば、再生エネルギーや水力の活用ひとつで、いずれ解決し得る問題であって、時節柄の要因と位置付けることが出来る。しかし、解決が容易ではない問題の方が元凶になろうとしている。これこそが、大問題なのだ。
この1月の日本の貿易収支で目を引くのが、電機関連の輸入の急増なのである。太陽電池、半導体、スマートフォンなどの輸入が前年比34%も伸びていることだ。エネルギー関連の輸入が2.8兆円はさておき、電機関連の輸入が1兆円を超えていることは、今までの日本の産業構造上、あり得ない出来事なのである。貿易赤字額2兆8千億の中で1兆円の電機関連の輸入は、日本の製造業の構造変化を如実に表している。太陽電池や半導体の輸入が拍車を掛けたわけだ。面白い点は、この輸入が必ずしも、海外へ単純外貨が出ていくに構造ではなく、日本企業の海外生産地からの逆輸入の要素も大きく含まれるので、本当の貿易赤字なのか?と云う側面もある。
半導体などは、日本企業が中機能半導体の生産を抑えていることにより、純然たる海外製品を購入しているのだが、数量はさして伸びていないのに、円安により、金額は大きく伸びる結果になっている。このように、日本の製造業の生産過程の構造的変化も為替政策を行っていかないと、思わぬ円安のマイナス効果が表れるような時代になっている。どうも、日本の金融関連の携わる人々は、口々に“グローバル化だ”と言う割には、その選択において、必ずしも、その口にした“グローバルに展開する企業実態”を考慮しない、ロジックで政策を行おうとしている惧れが多分にある。
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