http://www.asyura2.com/14/hasan85/msg/844.html
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笑坊さんが転載してくれた「世界の消費税と最低賃金(きっこのブログ)」への批判を投稿させていただく。
※ 対象スレッド(当該投稿文の末尾に「軽減税率」関連部分のみを引用)
「世界の消費税と最低賃金(きっこのブログ)」
http://www.asyura2.com/14/senkyo161/msg/787.html
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「きっこのブログ」については、福島第一原発事故に関わる政府・東電・メディアによる隠蔽工作やゴマカシに痛烈な批判を浴びせたことを記憶している。また、インターネット愛好家のなかでそれなりに影響力を確保している発信者とも聞き及んでいる。
消費税に関する投稿では説明能力の欠如のせいでメゲる状態が続き打たれ強くもなったが、そのような「きっこのブログ」が、「食品や医薬品にまで贅沢品と同じ税率を課すようなバカな国は、先進国の中で日本だけなのだ」と息巻き、「軽減税率」を早急に導入するよう煽っていることにビックリするとともにがっかりさせられた。
「軽減税率」は、日経新聞を超える大きな発行部数を誇る聖教新聞や公明新聞を抱える創価学会・公明党とその動きを利用して自己の利益を追求する新聞各社の強い要望を受けるかたちで、消費税税率が10%にアップされる時点で導入という流れができつつある。
一昨年の消費税増税スケジュール化法案をめぐっては増税タイミングの問題を含め賛否が入り乱れたが、不思議なことに、「軽減税率」の導入については、財務省や自民党税調が税収減や適用品目問題などを理由に慎重な姿勢を見せているだけで、制度そのものに反対する声がほとんどといっていいほど聞こえてこない。
(※ 財務省は、軽減税率が、大規模な減収をもたらすこと(それは消費税の一般税率引き上げや他の税目での増税を意味する)、建前の低所得者対策とは違い高所得者の恩恵のほうが大きいこと(建前論も財務省の説明もともにデタラメ)、事業者にコスト増を強いることなどを理由にあげて慎重な姿勢をみせている)
新聞を“民主主義の糧”と位置づける日本新聞協会が新聞への軽減税率適用を強く求め、主要新聞社が社説でその早期適用を主張していることを考えるとあながち誤りではないと思うが、「社会の木鐸」とも世論形成装置とも自負している主要メディア(雑誌や書籍を含む)は、「軽減税率」の適用で自らが大きな利益を手にする可能性があるため、軽減税率に関するまともな説明さえ封印しているようだ。
増税のみならず消費税そのものに強く反対している共産党からも、「軽減税率」に反対する声は聞こえてこない。共産党の「軽減税率」に対する黙認的姿勢が、思考力の不足に由来するものなのか、「しんぶん赤旗」という軽減税率の適用が濃厚な事業を抱えているせいなのかはわからない。どちらであれ、恥辱か醜悪かという違いしかない。
結果として国民の「軽減税率」に対する賛否比率がどうなるにせよ、現在のようなウソやゴマカシの説明によるのではなく、「軽減税率」の内実が明らかにされたうえでの判断でなければならないと思っている。
■ 「きっこのブログ」に書かれた「世界の消費税と最低賃金」の何が問題なのか
きっこさんは、財務省官僚や政府寄り学者のように、悪意(わかっていながらわざと)で政治的意図を秘めた「軽減税率」の宣伝をしているわけではなく、生存と税の関係性や低所得者への配慮から「軽減税率」のメリットや必要性を叫んでいるはずだ。
だからこそ、「軽減税率」に関するきっこさんの文章を読むと、「地獄への道には善意が敷き詰められている」という言葉を思い出さずにはいられない。
支配欲や経済的どん欲さを隠さない人たちの言動は、多くの人が疑いの目を向けるが、自分にとって好ましいと思っている人たちの言動はあまり吟味されることなくそのまま受け容れてしまう傾向がある。
アジア太平洋戦争(敗戦)への道を突き進んでいった戦前の日本についてもそう言えるし、少数派でしかないが、共産党員を筆頭とする左派や愛国保守気分の右派の精神活動に対してもそのような指摘ができるだろう。思い込みともいえるこのような精神情況は対処がきわめて困難である。
「軽減税率」に関する「きっこのブログ」の主張に対し何より言いたいのは、きっこさんなら、主要メディアがこぞって導入を主張している「軽減税率」制度だからこそ、何か“秘密”やどこかに“落とし穴”があるのではないかと疑うべきではなかったかということである。
巷間言われている「軽減税率」に関する“通説”的説明を検証してなお結論が同じならそれはそれでかまわないと思っているが、文章からはそのような検証を行った跡が見えない。
自分自身を含め、思い違いや判断の誤りは珍しいことではないから、それ自体を批判するつもりは毛頭ない。
「食品や医薬品にまで贅沢品と同じ税率を課すようなバカな国は、先進国の中で日本だけなのだ」と息巻くきっこさんは、「軽減税率」について、根本的な思い違いかとんでもない誤解をしていると思われる。
きっこさんは、“通説”となっている「軽減税率」の説明や「軽減税率」という言葉のイメージに囚われているのかもしれない。
きっこさんは、“軽減”なのだから当然のように消費税の負担が軽減され、消費税は消費者が負担するものだから、「軽減税率」によって消費者が楽になるに違いないと思い込んでいるのではないだろうか。
きっこさんの「軽減税率」に対する誤解は、消費税と小売売上税(最終小売段階でのみ課税)や物品税が同類だと勘違いしていることに由来しているかもしれない。
きっこさんが「軽減税率」の早期導入を煽る気持ちのベースには、次のような考えがあるのだろう。
ブランドの毛皮コートとどこにでもあるジーンズが同じ税率というのはおかしい。ブランド毛皮コートの税率が10%なら、普通のジーンズの税率は0%か2、3%にすべきである。そうすれば、贅沢品でない衣類は安く買えるようになる。
高級レストランでの食事に10%の税がかかるのは理解できるが、「生存必需品」の米や野菜といった食材にまで税が課されるのはおかしい。ゼロか低い税率を適用すれば、生きるために最低限必要な食材は安くなる。
きっこさんは、一般消費税率と「軽減税率」の関係も、そういった考えが通用するようなものと思っているのだろう。
しかし、きっこさんが「軽減税率」の仕組みを自分の力で少しでも考えていれば、「軽減税率」について流布されている“通説”的説明はマヤカシやウソであるとわかり、生活必需品に「軽減税率」が適用されたからといって、金持ちではない消費者(金持ちもだが)が楽になるわけではないこともわかったはずである。
きっこさんは、どんなことよりまず、軽減税率が適用された商品やサービスの価格がほんとうに下がるかどうか検証すべきだった。
結論を先に言えば、統制経済ではなく、販売価格や利幅が“法定”ではない自由経済社会では、税率の引き下げが販売価格の引き下げにつながる保証はまったくない。
それは、物品税や小売売上税についてさえ言えることだが、消費税(付加価値税)ではなおのことである。
小売売上税の場合、昨日までの課税前価格を知っていれば、税率が下がった今日の税込価格が下がらないのはおかしいとクレームをつけることができる。
小売売上税の課税論理は、課税前の価格1万円に10%の税率をかけるのか8%の税率をかけるのかという単純なものだからである。それでも、利益の取り方は自由だから、ほとぼりがさめたころには課税前の価格が上がる可能性もある。
一方消費税は、売上だけではなく仕入などもかかわる税制だから、一般税率のアップと同時に「軽減税率」の導入が行われた場合、消費税アップで仕入価格や経費が上がったので、軽減税率の適用を受けたからといって値下げできるわけではないといった説明が通用する。(この説明自体はウソ)
一般税率のアップがないまま軽減税率を導入した場合は、仕入に係わる税率が上がっていないから、販売価格を引き下げなければおかしいという批判が噴出しやすい。
このようなことから、「軽減税率」の導入は、多くの国民を騙しやすい条件とある消費税税率のアップと同時でという話になる。
実際、ユーロ圏銀行(債務)危機渦中のフランスで付加価値税(消費税)の税率アップが行われ、同時にレストラン(外食)に軽減税率の適用がなされたが、レストランの値段は下がらなかった。外食産業は、この軽減税率の適用を受けるため、軽減税率の適用を受ければ値段が下がり(値段を下げ)雇用も増えると宣伝してきた。しかし、結果はまったく違うものになった。外食への軽減税率の適用は、経営に余裕のあるレストランの設備投資を促しただけだったのである。
(食材のほとんどにゼロ%の軽減税率が適用され、厨房機器などは一般税率であることがそのような動きを招いたのである。そのワケはこの投稿を最後までお読みいただけばわかると思う)
日本でも「軽減税率」が導入されると、次のようなおかしな事態が発生するだろう。
軽減税率が適用されたのに、食材の価格は下がるどことか上がったのでクレームを付けたところ、価格に占める消費税の割合はそれほど多くなく、天候のせいで仕入価格が上がったから価格も上げざるを得なかったと説明されるだろう。生鮮食品は、需要と供給という市場原理がもっとも強く働く商品であり、供給・受給とも気象条件の影響を強く受ける。
新聞購読料についても、新聞協会の話と違って価格が下がらないじゃないかと文句を言うと、一般消費税がアップして新聞をつくるために必要な原材料の価格が上がったので購読料の引き下げはムリなんです。でも、消費税が上がっても購読料を引き上げずに済んでいるのは、軽減税率が適用されたおかげなんですよといったデタラメな説明を受けることになるだろう。
物品税や小売売上税でも、税率や税額の引き下げが販売価格の引き下げにつながる保証はない。税金は、販売価格の一部を構成するコストでしかないからである。言えるのは、事業者間に激しい競争があれば、税率の引き下げが販売価格の下落につながる可能性があるという程度のことである。しかも、それは利益を犠牲にするかたちでも行われるので税金特有の話ではない。
販売価格のみならず利幅(利益)までが法的規制を受けていない限り、税率(税負担)の変動で販売価格が決まってしまうというようなことはないのである。
簡単な例を示す。
100円で売っている商品の価格構成が原価70円・荒利25円・予定税負担5円だとする。
「軽減税率」の適用があり税負担がゼロになるとしても、100円のまま売ってもかまわない。仕入原価が下がって65円になったからといって値下げしなければならないという道理はなく、売れるのなら100円のまま据え置くのが商売の常道である。
原価も予定税負担額もコストであることでは変わらず、税負担分だけを特殊な要素として考えることはできない。
同じコスト条件のもと、税負担が減ったとしても、より高い値段で売れる状況なら販売価格を上げることもあるし、税負担が増えても、売れないのなら販売価格を下げることだってある。
このような実例が、97年に販売価格が総じて上昇するはずの消費税増税が実施されたにも関わらず翌年からデフレに陥ってしまった日本である。
経済社会はこのような論理で動いているのに、消費税についてだけはなぜか、まるで公定販売価格や利幅制限があるかのように、消費税の変動で販売価格が変わると説明されている。
税負担が減った分、販売価格を下げなければならないという法規制はない。逆に、税負担が増えた分、販売価格を上げられるという公的保証もない。だからこそ、政府は、Gメンと呼ばれる公務員を増員してまで、消費税増税分の価格転嫁に関する監視を行うのである。
買う側にとっては、原価か利益か税負担かはまったく無関係であり、支払う総額がコストであり、買うか買わないかを判断する基準である。原価・利益・税負担といった価格構成のブレイクダウンは売り手の内部事情でしかない。
日本では消費税について、財務省(旧大蔵省)や主要メディアそして政府寄りの学者が、消費税は多段階の売上税(間接税という定義)であり、その最終負担者は消費者であるとするデタラメな説明を執拗に繰り返してきたことで、そのようなウソが国民の幅広い層にすっかり定着してしまった観がある。
(政府寄りでも一部の学者は認めているが、消費税の最終負担者が消費者であるなら、法人税の最終負担者も消費者である。「消費税の最終負担者は消費者」という話は、事実だとしても、法人税についても言える論理的なものであり、税制の実際ではない。消費税の最終負担者は、あくまで納税義務を負う事業者である)
欧州諸国は、きっこさんも書いているように、内実を反映した付加価値税(VAT)という名称になっているのでまだ救いがあるが、消費税という奇妙な名称が付けられている日本は、消費税の課税論理がより見えにくくなっている。
消費税は、商品の購入に対して課されるものではなく、事業者(企業や個人)が稼いだ付加価値に課される税である。
付加価値は雑ぱくに言うと「売上−仕入」だから、給与・利益・元本返済・利払いの原資になるものと言うことができる。
このことから、事業者が稼いだ付加価値に課されている消費税は、給与と売上利益に課される税だとわかる。
消費税は、言わば、“給与支払い税”(普通の給与所得税は貰った人が負担)であり、 “法人営業利益税”(法人税と違い最終利益が黒字かどうかを問わない)なのである。
消費税の究極的課税論理は、利益がまったくなくとも、給与を支払っているだけで課すというものである。(経営者が自分の懐から持ち出しで給与を支払っている場合は課税されないが)
付加価値の60%程度は給与に充当されているから、消費税を“給与支払い税”と言っても過言ではないだろう。
しかし、消費税が“給与支払い税”だから「悪魔の税制」と言いたいわけではない。
消費税だけが税ではなく、国家は、所得税や法人税など様々な仕組みを通じて徴税を行う。公平性や簡素性が保たれているのなら、“給与支払い税”でもいいじゃないかという考えも間違いではない。ほとんどの人が給与を貰って生活しているのだから、それに薄く課税し、所得に余裕がある人からは、他の税目でより多く徴税するという仕組みでもいいからである。
(消費税やその増税政策を正当化するために、消費税なら年金生活者も税を負担することになるというまことしやかな説明がなされているが、年金生活者に負担を求めるのなら、そんな迂回的なことをする必要はなく、ストレートに年金支給額を減らすほうがずっと合理的である。基礎年金保険料の半分は税金で賄われているからである)
消費税の“粗利益税”という側面も、事業活動を行っている主体から薄く税を徴収するものと考えればことさら悪いものとは言えない。そのような負担さえできないような事業者は存在意義がないから退出してもらうという考えも成り立たないわけではない。
消費税を「悪魔の税制」と呼ぶワケは、“給与支払い税”や“粗利益税”と言える税制でありながら、その課税から逃れられるだけにとどまらず、他の事業者が納付した消費税の一部をまったく根拠がないまま還付金として受け取るという尋常ならざる優遇を受ける事業者がいることであり、そのような暴虐非道の行為が政府自身によって行われていることである。
消費税の負担(納税)をしている事業者及びその従業員・役員は、給与に対する税を二重に負担し、最終利益が黒字であれば利益に対する税を二重に負担していることになる。
消費税を負担せず消費税の還付を受けているグローバル企業やその従業員・役員は、それらの負担から逃れているだけでなく、給与所得税や法人税に対する事実上の軽減措置を受けていることになる。
未だ「軽減税率」が導入されていない日本でそのような不公平を生み出している仕組みは、「輸出免税」(輸出売上に係わる消費税額としてゼロ%課税:俗に言う「輸出戻し税」)である。
賃貸住宅や福祉用品などに適用されている消費税「非課税」制度は、特定事業者優遇策であることに違いはないが、「輸出免税」とは異なり、他の事業者が納付した消費税の一部をまったく根拠がないのに還付金として受け取るといった破格の優遇はない。非課税制度では、「仕入に係わる消費税額」の控除ができないからである。
導入が具体化しつつあり、きっこさんまでもがその必要性を叫ぶ「軽減税率」は、非課税制度ではなく、「輸出免税」(「輸出戻し税」)と同等の論理を内包した極めて悪しき制度なのである。
■ 「軽減税率」は格別に低い法人税税率を特定事業者に適用すること以上の悪魔的所業
これから説明することをお読みいただければおわかりいただけると確信しているが、消費税制度への「軽減税率」導入は、適用を受ける商品(事業)の価格が安くなるわけではないという問題では済まない、とんでもない問題をはらんでいる。
「軽減税率」は、適用を受ける特定事業者がちょっとしたメリット(税負担の軽減)を受けるというレベルをはるかに超え、特定事業者にマイナス税(濡れ手に粟の還付金)を提供するとんでもない制度である。むろん、マイナス税を負担するのは、消費税をプラス税として納付する数多くのその他事業者である。
「軽減税率」制度は、「輸出免税」制度とともに、恥知らずの政府が大ぴっらに行う詐欺行為と言うこともできる。
● 消費税算出の仕組みに潜む悪魔的仕掛け
付加価値に課されている消費税は、奇妙なことに、ストレートに付加価値に課税するかたちではなく、「売上に係わる消費税額」と「仕入に係わる消費税額」を差し引きするという回りくどいかたちの算定が推奨されている。
回りくどい算定方法であっても、「輸出免税」や「軽減税率」といった制度がなければ、付加価値にストレートに課税する仕組みと算術的にまったく同じということで済むが、それらがあることで、消費税(付加価値税)に悪魔が宿る仕掛けとなっている。
と言うより、付加価値にストレートに課税する仕組みにせず、わざわざ回りくどい仕組みにしたのは、国家機構が「輸出免税」や「軽減税率」を使って特定の事業者に経済的利益を提供するという“詐欺”行為にもっともらしい言い訳を付与するためである。
(汗水たらして稼いだ荒利(付加価値)に課税する現実を悟られなくなかったという背景もある)
小規模の消費税免税事業者や非課税事業は脇に置くが、「輸出免税」という特典を受ける輸出企業を別にすると、現在、事業者が稼いだ付加価値に5%の消費税が課されていると言える。この論理は、消費税税率が8%になっても10%になっても変わらない。
「輸出免税」がなければ、付加価値へのストレートな課税を意味する「(売上−仕入)×税率」でも、回りくどい「売上×税率−仕入×税率」でも算定される消費税額は変わらないからである。
ところが、「軽減税率」や「輸出免税」の制度にとって、「売上×税率−仕入×税率」という仕組みは決定的に重要な意味を持つ。
その仕組みが、消費税負担の軽減にとどまらずマイナス税(徴税ではなく金銭の給付)まで提供する「軽減税率」や「輸出免税」の“正当性”を支えているからである。
簡単な例で、「軽減税率」が適用されるケースと適用されないケースの違いを説明する。
共通データ(税込総額):売上50億円・仕入35億円
1)A事業者は、売上すべてが軽減税率2.4%の適用を受け、仕入すべてが一般税率7.6%の適用を受けるとする。
消費税(付加価値税)の計算は、
50億円×2.4%−35億円×7.6%=▲1.46億円
となる。
よって、この事業者は、消費税(付加価値税)を1円も納付しないで済むどころか、1円も消費税を納めていないにも関わらず、1億4千6百万円もの税“還付”を受けることになる。
2)B事業者は、消費税(付加価値税)の税額計算が売上・仕入とも一般税率で処理される。
50億円×7.6%−35億円×7.6%=1.14億円
よって、この事業者は、消費税(付加価値税)を1億1千4百万円納付しなければならない。
「軽減税率」の適用を受けた事業者は、税負担の軽減どころか、人が納めた税金の一部が自分の懐に入ってくるというとんでもない特典を享受できることになる。
賢明な方ならおわかりだと思うが、付加価値に対するストレートな課税方式なら、「軽減税率」を導入したとしても、“マイナス税”にすることは難しい。
税率そのものをマイナスにするような算定式を表に出す“勇気”は官僚たちにもないだろう。
上記の例で言えば、軽減税率の適用を受けている事業者の消費税税率は、マイナス9.7%ということになる。
B事業者は、付加価値にストレートに課税する計算でも、(50億円−35億円)×7.6%=1.14億円で納税額は変わらない。
ところが、「軽減税率」の処理になると、回りくどい算定式を使うことでマイナスの税額が発生し、消費税の課税論理を基礎にきちんと考えないとそれが当然であるかのように思えてしまうのである。
「軽減税率」の適用を受けるA事業者について、どう考えればいいのだろうか。
一般税率が7.6%なのだから、付加価値に対しストレートに2.4%の課税でも十分すぎるほどの軽減措置である。
むろん、それでも、それが消費者(購入者)のメリット(価格引き下げ)につながるかどうかはわからないことではあるが...。
軽減税率が特定事業者の付加価値に課す特別な優遇税率と考えるのなら、A事業者の消費税額は、(50億円−35億円)×2.4%=0.36億円でも十分だと言えるはずだ。
この改定だけで、回りくどい算定式ではマイナス1.46億円(1億千6百万円の還付)だった消費税額が、3千6百万円のプラス(納税)に変わる。
ついでに、「輸出免税」(「輸出戻し税」)について言えば、輸出売上に対してではなく、輸出売上から得た付加価値に対してゼロ%課税にすべきなのである。それでも、輸出で稼いだ付加価値には消費税を課さないのだから十分すぎる優遇策と言える。
それにより、年間3兆円近い「輸出戻し税」の発生もなくなる。
非課税事業者もそのような条件で頑張っているのだから、そのような条件では輸出ができないといった泣き言や不平はみっともない。
国民経済のためにどうしても「輸出免税」制度が必要だというのなら、社会保障のために必要だといったウソの主張ではなく、消費税がそのような制度であることを認めたうえでその存続を主張すべきである。
「輸出免税」や「軽減税率」に伴う消費税の還付を国家的詐欺だと糾弾すると、日本を統制経済国家とも社会主義国家とも思っていない人までが、A事業者は、売上で少ない消費税しか受け取っておらないのに、仕入では多くの消費税を負担しているのだから“還付”は当然と反論してくることがある。
財務省官僚や政府御用達学者も、今回の例に関して、軽減税率の適用を受ける商品は消費者から2.6%分の消費税しか預かっていないのだから、仕入で負担したはずの7.6%分の消費税を控除してマイナスになったら還付を受けるのは当然といった説明をするだろう。
消費税(付加価値税)の課税ベースが何なのか考えれば、回りくどい「売上に係わる消費税額」と「仕入に係わる消費税額」という数字の操作で消費税額を算出すること自体が異様であると気づくはずである。
消費税の「売上に係わる消費税額」や「仕入に係わる消費税額」といった概念は、「輸出免税」(「輸出戻し税」)や「軽減税率」に伴う“還付”をもっともらしく思わせるための仕掛けでしかない。
● 「軽減税率」導入は特定企業に対し特別に低い法人税税率を適用することと同じ
これまで説明してきた消費税(付加価値税)の課税論理から理解してもらえると思うが、生活必需品に「軽減税率」を導入すれば多くの人々の生活が楽になるとするきっこさんの考えが成り立つとしたら、“生活必需品を供給している事業者の法人税を引き下げれば多くの人々の生活が楽になる”という考えも成り立つことになる。
法人税と消費税は、最終利益か粗利益かという課税ベースの違いだけで、事業者が稼いだ利益に課する税であることに違いはない。法人税の課税ベースである最終利益は、消費税の課税ベースの一部である。
たぶんだが、きっこさんは、特定企業に低い法人税率を適用すべきとは言わない人だろう。
特定商品への「軽減税率」導入は、消費者ではなく、その商品の販売を事業とする特定企業に対する税優遇策でしかない。
他の事業者が納付した消費税の一部が贈呈される仕組みである「軽減税率」は、特定企業に低い法人税税率を適用するよりもずっとえげつない悪魔的政策なのである。
先進国の住居費を除く平均的な家計に占める生活必需品の割合は半分ほどだから、「軽減税率」の導入が人々の暮らしをほんとうに楽にするのなら、あらゆる事業者の法人税を減税すれば、人々の生活はずっと楽になると主張することができる。
そのような主張には眉に唾を付けながらみる人が多いと思われるのに、「軽減税率」の導入については、それ以上にあくどい制度であるにもかかわらず、歓迎ムードにとどまらず待望論まであるという倒錯状況が生まれている。
● 「軽減税率」導入がもたらす一般消費税率の高騰という悲劇
「軽減税率」は、二つの目的のために考えられた制度だと思っている。
一つは、食料品など生活必需品に軽減税率を適用することで、政府は一般国民の生活を大切に思っているというポーズを見せられる。欧州諸国は農業を重視しているので、農家保護政策として軽減税率を活用している面もある。
もう一つは、新聞や書籍に軽減税率を適用することで、口うるさくなるかもしれないメディアを黙らせる。消費税を利用して主要メディア企業に輸出企業と同じような利益を提供することで、国策が遂行しやすくなるというわけだ。一つ目の目的は、この目的をカムフラージュするためのものと言ってもいいだろう。
新聞や雑誌に「軽減税率」が適用されれば、今後予想される消費税増税政策に対する反対の論調が見られにくくなるだろう。それどころか、グローバル企業が集う経団連が消費税増税を声高に叫ぶように、新聞社や出版社までが、あれこれ屁理屈を付けて消費税増税を煽る可能性すらある。
上述した算定式でわかるように、売上に係わる消費税額算定に適用される軽減税率はそのままで仕入に係わる消費税額算定に適用される一般税率がアップすることは、受ける消費税還付の額が増大する可能性が高いことを意味するからである。
ご存知のように欧州諸国の付加価値税の税率は20%前後まで達している。しかし、それほどの税率の高さに見合うほど付加価値税の税収は増加していない。
ここまでの説明でおわかりのように、「輸出免税」と「軽減税率」から生じる付加価値税還付が膨大な金額になっているからである。
EU諸国は、国際水平分業が進み、日本の都道府県間の移入移出に近い感じで輸出と輸入が行われている。そのため、「輸出免税」から生じる還付が膨大であり、国際水平分業の相当部分をグローバル企業が担っているから、輸入段階で課され徴収される付加価値税も、多くが「輸出免税」で還付されている。
EU諸国における付加価値税の主要徴税源は、サービス業のほかは日本や米国などの非EU系企業による輸出である可能性が高い。
税収が上がらないのならそれはそれで仕方がないで済むのならいい。しかし、欧州型福祉国家を維持するためにはそれなりの税収が必要だから、付加価値税の一般税率がぐんぐん引き上げられるようになる。その結果が、20%前後にまでなった付加価値税の税率なのである。
税目は税率ではなく税収そのものが問題になる。
消費税で20兆円の税収を上げたいと思ったら、現行制度の枠内でそうなるように税率を決めることになる。
「軽減税率」や「輸出免税」で税収が減少すれば、一般税率をさらに上昇させることになる。
「軽減税率」の導入は、それ自体が消費税率(一般税率)のアップに拍車をかけるのである。
このツケは誰が負担するのだろうか?
答えは、輸出をしていないかその比率が低く軽減税率の適用も受けていない内需型企業の負担である。内需型企業のなかには、グローバル企業向けに製品や部品を作っているところもある。「輸出免税」は最終輸出段階で適用されるだけ遡及性はないので、輸出製品に使われるものを製造し納入している企業には特典がない。
ひずんだ悪魔的税制である付加価値税のせいで市場から退出させられた企業も、競争力がなかったからだとか、付加価値生産性が低かったからだと言われるだけで終わってしまう。
内需型企業でも特別な技術力があれば別だが、多くの内需型企業は、倒産まで至らぬとも、給与も引き下げや利益の激減に見舞われる苦しい経営を強いられることになる。
そのような苦しみのなかから吸い上げられた消費税が、「軽減税率」や「輸出免税」という異様な制度を盾に、正当な根拠がないまま還付金として特定企業に支払われるのである。
反対する勢力が皆無に近い状況なので空しい遠吠えになってしまうが、ろくでもない制度である「軽減税率」の導入は、なんとしても回避しなければならない。
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【「きっこのブログ」から軽減税率関連部分の引用】
「‥‥そんなワケで、ここでクルリンパと最初に戻るけど、スイスの消費税はどうなってるんだろう?ちなみに「消費税」ってのは日本式の呼び方で、スイスでは他の多くの国々と同じく「付加価値税」と言って、一般的には「Value Added Tax」の頭文字を取って「VAT」って呼ばれてる。で、スイスの場合、日本の消費税にあたる付加価値税がどれくらいなのかって言うと「7.6%」だ。これなら、日本の消費税が5%から8%に引き上げられても、スイスとほとんど変わらない‥‥って思ったのもトコノマ、スイスの付加価値税には「軽減税率」が導入されてる。
たとえば、食品、医薬品、書籍、新聞などは「日用品」であり「生活必需品」なので、税率が3分の1以下の「2.4%」に軽減されてる。また、スイスは観光が大きな収入源の国だから、ホテルの宿泊などは「3.6%」に軽減されてる。さらには、病院、保険、銀行などは「0%」だ。つまり、スイスで生活して行く上で絶対に必要なものに関しては、ちゃんと「軽減税率」が適用されてるってワケだ。
一方、日本の場合は、食品や医薬品からホテルの宿泊まで、さらには病院や保険、挙句の果てに銀行のATMの手数料まで、「日用品」であろうが「生活必需品」であろうが、すべてのものの消費税が4月1日から「8%」に引き上げられる‥‥ってワケで、ここで、世界各国の付加価値税を見てみると、日本以外の先進国は、どこもスイスと同じように「軽減税率」を導入してることが分かる。
たとえば、イギリスの場合、基本的な付加価値税は「17.5%」と高いけど、電気やガスなどの家庭用の燃料費は「5%」に軽減されてるし、食品、水道、医薬品、書籍、新聞、電車やバス、家賃などの「生活必需品」から、病院、保険、銀行、教育、郵便などに至るまで、すべて「0%」だ。フランスやドイツを始めEU各国も、基本的な付加価値税は日本より高いけど、すべての国が「軽減税率」を導入してる。食品や医薬品にまで贅沢品と同じ税率を課すようなバカな国は、先進国の中で日本だけなのだ。
スイスの場合は、世界一物価が高いけど、平均年収も世界一だし、アルバイトの時給も世界一だし、その上、食品や医薬品を始めとした「生活必需品」には「軽減税率」が適用されてるから、実際に生活するとしたら、日本よりは遥かに暮らしやすいと思う。日本の政府や財務省は、ことあるごとに先進各国の付加価値税の税率だけを引き合いに出して「日本の消費税は低すぎる」って言うけど、この理屈には、所得の違いも、物価の違いも、そして「軽減税率」も、すべてが抜け落ちてる。 」
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